表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
299/1114

みんなで集まって大騒ぎって素敵やん

 キーケちゃんはひとまずリュートを取りに行くと、宿泊所へ向かった。

 俺はゲイルで飛びながら島の中を見て回り、宣伝して歩くルートを視察する。

 水牛車が通れる道でなるべく人目に付くルートを考える。

 基本的には集落、農園、港だな。

 ちょいと楽しみになって来た。

 俺は頭の中にルートを描き、中央行政館へ向かう。

 中央行政館は、祭り並みに人が集まってる。


「おうおう!クル坊!早くこっちに来てくれ!みんな集まってるぞ!」


 ニキーモ侯爵が俺に声をかけて来たのだが、どしたの?その服装は?

 侯爵が着てるのは派手な極彩色に染め抜かれた服だ。

 良く見れば似たような柄の服を着ている人がチラホラ見られる。


「どうしたんですかその恰好は?」


「どうしたって、そりゃ、お前が集めろって言ったんだろ?」


「待たせたなトモよ」


「ああ、って!キーケちゃんそのカッコ!!」


 声がして振り返るとキーケちゃんも極彩色に染め抜かれた服を着て立っている。


「きひひひ、どうだ?似合うか?エルスフィアの伝統的な衣装よ」


「エルスフィア民謡をやる時はこいつを着なきゃ始まらねー」


 ニキーモ侯爵は極彩色の貫頭衣に丈の短いズボンを履き、足を踏み鳴らして言う。


「侯爵もやられるのですか?」


「あたりまえよっ!!アウフシーやらせりゃエルスフィアいちってなもんよ!」


 ニキーモ侯爵は足を踏み鳴らし、腕で空を切るように踊ってみせる。

 豪快ながら、流れるようなそのスタイルに俺も見惚れてしまう。


「いいぞ!親方!」

「よっ!」

「アウフッシー!ヤー!アウフッシー!」

「ピューイッ!ピュー!ピュー!」


 周りにいた人たちが声をかけ指笛を鳴らしはやし立てる。

 一緒に踊り出す人もいるよ。


「凄いねこれは!いいじゃんいいじゃん!」


 俺は一気に盛り上がるみんなを見て手を叩く。


「どうですかクルースさん。いいものでしょう?」


 ダイム公が近寄って来て俺に声をかける。


「ええ!これは宣伝も絶対成功しますよ!しかし、アウフシーってどういう意味なんですか?」


「古い言葉でかき回すって意味のようですね。エルスフィア民謡では踊りをアウフシーと言い、みんなでかき回して楽しめ」


「なるほどなるほど!これは楽しいですね!定期的にやったらいいと思いますよ、これ」


「昔は集落単位で良くやっていたようですね。これも、恒例行事として考えてみましょうか」


「シャンシャンシャンシャンシャン!!」

「ドドン!ドン!ドンドドン!」


 お?鳴り物が参戦してきたよ!


「どうですか?クルちゃん?」


「お!ビキちゃん!彼らは?」


「うちの門下生です!」


「いーじゃんいーじゃん!」


「ピーヒョーロッ!ピーピーヒョーロッ!」

「ビョインッ!ビン!ビビン!ビョイン!」


 歯切れのよい笛の根と力強い弦楽器の音が聞こえて来る。

 あの弦楽器がキーケちゃんの言ってた四弦琴か、結構、野太い音がするね。


「はぁ~!よぉさあ!海の青さと人の好さ!エルスフィアの宝よぉ~はっ!アウフッシー、アウフッシー!」

「さぁ!アウフッシー!アウフッシー!」

「荒ぶる海もスコールもぉー、森の魔物も海の魔物もぉーさぁ!美味い飯食い良く寝ればー!何とでもなるどうとでもなる!アウフッシーアウフッシー!」


「どうですクルちゃん?集めて来ましたよー、エルスフィア民謡の名手たちを!」


「おー!最高だよ!ミオちゃん!こりゃいーぞ!最高の宣伝ができるよ!ビキちゃん!ミオちゃん!」


 俺はふたりに言う。

 ビキちゃんとミオちゃんは嬉しそうに手を合わせる。


「さてクルース殿。決行はいつですか?宣伝の翌日に授与式をやろうと考えているのですが」


「いや、これなら水牛車が届き次第できますよ。みんな即戦力ですよ!」


「それでしたら、今すぐにでも大丈夫ですよ」


「ミンガットさん!」


「いやあ、ミオジさんからケイトモ事務所の出張サービスですって言われた時は何事かと思いましたが、これはこれは!楽しそうではないですか!シャービット商会として是非協力させて下さい!」


「本当ですか?ありがたいですよー!そうしたら、今日、これから打ち合わせして早速明日、その勢いで本番をやろうかと思いますんで。今晩、手伝ってくれる皆さんへ、できれば夕食を振舞いたいのですが」


「そんな事くらいお安い御用ですよ!なんだったら、最後の打ち上げもシャービットで持たせてくださいよ!」


「いいんですか?すいません、本当にありがたいです。皆さんの士気もあがるってなもんですよ!お願いします!」


「いやいや!やはり、皆さんへ依頼して良かった!こんなに盛り上がっているエルスフィアを見るのは初めてです!本当に私も嬉しいです!」


 自分の事のように喜ぶミンガットさん。

 この人もまた、エルスフィアに強い愛着を感じている人なんだなあ。

 この土地に愛着を持ってくれている人が、依頼主の現地責任者である事に俺は安心感を覚えた。


「キーケちゃんとミオちゃんは、エルスフィア民謡の方たちとビキちゃんの集めてくれた楽器担当者を集めて、宣伝の打ち合わせをお願いします。特に、演奏しながら歩けない方々は水牛車2台に乗って貰うので、その選出をお願いします。ビキちゃんは、踊り班を作って貰います。踊り班は俺が今日見て来たルートを見て貰って、現実的に踊りながら移動するのに問題があるか検討してもらって下さい。ミンガットさんは、申し訳ないですが、経済的支援をよろしくお願いします、その代わりと言っては何ですが、水牛車にシャービット商会協賛と大きく掲げさせてもらいます。ダイム公、宣伝は明日、授与式は明日夕方という事でお願いします」


 俺は集まってくれたメンバーにザックリと指示を出す。

 俺はダイム公に開催場所を尋ねてから、水牛車に掲げる垂れ幕の制作に入る。

 垂れ幕には協賛シャービット商会の文字と、授与式開催場所と時間、祝第一回エルスフィア拳法大会優勝タオウ流ブッシュビーの文字を入れる。

 ルートの方は地元の方が手を加えて、現実的な物にしてくれているし、楽器と歌の担当も皆、素人ではないので演奏曲さえ決まってしまえば話は早いようだった。

 キーケちゃんは地元の演奏者と楽しそうに音楽談議に花を咲かせている。

 そうしていると、ミンガットさんが差し入れをしてくれるので、俺は集まってくれたみんなに改めて感謝を述べ、スポンサーのシャービット商会を紹介する。

 みんな声を上げ指笛を鳴らしミンガットさんに感謝する。

 ミンガットさんは照れ臭そうに挨拶をした。


「活気が出てきましたね」


 差し入れの食料を食べ、明日の段取りを話し合うみんなを見てアルスちゃんが言った。


「やっぱり、こういった行事っていいよね。一体感が生まれるって言うのかね」


「皆さん領のため、家族のために身を粉にして働いていらっしゃいますけど、それはひとりではないと実感できる集いがあるといいですよね。人族も魔族も、集団の中にいても孤独を感じ活力を失う事があると言いますからね」


 そうなんだよな、むしろ集団の中にいるからこそってのもあるしな。

 アルスちゃんの人族魔族を見る目って、優しいんだよな。


「アルスちゃんは優しいよね」


 俺は思ったままを口にした。


「うふふ」


 アルスちゃんは、ワイワイと賑やかにするみんなを見て笑う。

 さて、ほぼぶっつけ本番みたいなもんだが、なーに、賑やかに楽しくやればその雰囲気は伝わるってもんだ。

 それに、ここに集まった人達を見るに、エルスフィアの人達は結構祭り好きと見た。

 宣伝ってよりも祭りだと思えば成功したも同然だろ!

 俺は気合を入れるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ