笑い合えるって素敵やん
「なんと!そうでしたか!まさか女王がいたとは。今、詰め所へ連絡に行かせましたので衛兵さんもすぐに来られるでしょう。これは、思っていた以上に危うい事態だったようですね。皆さんには感謝します。下手をすれば災害級の出来事になっていましたよ。」
「いえいえ、大事にならずに良かったですよ。それから、アルスちゃんからアウロさんに渡したいものがあるそうです。」
「何でしょうか?。」
アルスちゃんはマイマイ姫の卵を渡して事情を説明した。
「なんと、まあ!私も長くこの仕事をしておりますが、噂に聞いたことはありましたが本物を見る日が来るとは。しかし、こんな貴重なものを良いのですか?。」
「良い良い!アルスもそう言ってるし、気にすることはないぞアウロさん!。」
「コラコラ、だから、シエンちゃんが言う事じゃないだろう。アルスちゃん、どう?。」
「ええ、いいんですよ。わたしが持っているよりも採掘に携わる方がお持ちになられたほうが、その玉もマイマイ姫も喜ぶでしょうから。」
そう言ったアルスちゃんは、少し間を開けてこう続けた。
「もし、よろしかったら、今度、アウロさんのおかみさんから、わたしもお料理を教えて頂きたいのですが、よろしいですか?。」
それを聞いたアウロさんは笑顔で答えた。
「勿論ですよ、アルスさん。いつでも歓迎しますよ。」
それを聞いたアルスちゃんの表情は少し、はにかんでいる様に見えた。
「しかし、マイマイ姫ですか。これは、マキタヤ中が沸き立ちますよ。坑道内の魔物もほぼ一掃出来たようですし、こんなめでたい事はありません。」
「先代!衛兵さんが来られました!。」
「ジャイアントアーミーアントが出たと聞きましたが!被害はありませんでしたか?。」
「ええ、もうこちらの方々が一匹残さず討伐して下さりましたから。」
「それは良かった。まだ繫殖する前でしたか。」
「いや、繁殖はしておったぞ。見に行くか?。」
シエンちゃんが言う。
「ええ!本当ですか!。」
「確かですよ。よかったら皆さんで見に行きましょう。クイーンの死骸もありますから。」
「ええっ!。」
ビックリしている衛兵さんとアウロさんと一緒に、俺とアルスちゃんとシエンちゃんはふたたびジャイアントアーミーアントの巣窟になっていた場所へと向かうのだった。。
「こ、これは?。」
衛兵さんが驚くのも無理はない。見渡す限り兵隊アリの屍の山。死屍累々とはこのことか。
「うひゃー、改めて見ると、壮観だねえ。よくやっつけたもんだ。」
「これを、3人で、ですか?。」
ようやく、といった風情で衛兵さんが聞いてくる。
「いや、ほぼトモちゃんひとりだな。兵隊アリは魔法の練習台になってもらったようなもんだ。」
「いやいや、シエンちゃんもアルスちゃんも見本見せてもらったしー、打ち漏らしたやつはシエンちゃんがやっつけてくれたんだしー、なによりクイーンはアルスちゃんがやっつけたんだしねえ。」
「いや、凄いですなあ。これは素材料金だけでも結構なことになりますよ。分割でもよろしいですかな?。」
さすがは鋼鉄アウロさん。買い取りの心配ときたもんだ。
「ええ、構わないですよ。」
俺は答えた。
「ほら!こっちこっち!見事なクイーンだぞ!アルスの倒し方は面白くなかったけど!。」
「もうっ!やめて下さいよっ!今度はシエンさんも笑うくらい面白い倒し方をしますっ!。」
シエンちゃんとアルスちゃんのやり取りを聞きながら、更に奥へと歩いていくと、ありました、横たわる巨大な首無し女王アリが。
「うわー、やっぱり、気味悪いなー。」
「これを、アルスさんが?。」
アウロさんがアルスちゃんに聞く。
「はい。シエンさんには面白みのない倒し方だと揶揄されましたけど。」
クイーンの死骸を検分しながらアウロさんは答える。
「いや、素晴らしい倒し方ですよ。状態も非常に良いですね。切り落とした切断面も非常にきれいですし、どういうわけだか体液が抜けてないんですよ。まるで、焼き付けたみたいになってます。」
「うふふふ、そう言って頂けると嬉しいです。」
「これは、そうとう高値が付きますな。これだけ体液がキープされた素材は珍しいですよ。魔術師ギルドがよだれを垂らして欲しがりますよ。」
「しかし、これは、ちょっと、事が事ですので上に報告して指示を仰がないと、私の権限では現時点では結論が出せません。申し訳ないのですが、皆さんの身元を確認させて頂いてよろしいでしょうか。」
そう衛兵さんが言うので、俺たちは冒険者カードを衛兵さんに見せ、ノダハの住処を教えた。アウロさんも身元の確かさを請け負ってくれたので、衛兵さんは安心されたようだった。
「すいません、色々とお手間を取らせました。後日改めて、この件の褒賞が出ると思います。その時はこちらからお知らせいたします。ありがとうございました。」
そう言って衛兵さんは走って行った。
「あらあら、慌ただしいですこと。」
「仕方ないですよ。これだけの数のジャイアントアーミーアントですから。その上、この大きさのクイーンですからね。被害が出なかったのは奇跡的なことですよ。いや、奇跡ではなかったでしたな。皆さんのおかげでしたな。」
思わず、ノダハ噴水公園前スノウスパロウ2号店の看板娘ミーサちゃんの客あしらい、なんてコアなものまねをした後、床が開いて落とされるのかと心配してしまった。
「アウロさんの役に立ったか?。」
シエンちゃんが元気よく聞く。
「勿論ですよ。シエンさん、アルスさん、クルースさん、改めて、ありがとうございました。閉山していた期間も短くて済みましたし、それを補って余りある程の素材を手にすることもできました。そして、下手をすれば災害級の被害が出てもおかしくなかったものがこうして無事に解決されました。さらに、マイマイ姫まで現れて、しかも長く逗留して頂けるとの事で卵まで残されました。こんなめでたい事も滅多にありません!明日は街を挙げて、このお祝いをしたいと思います。みなさん、是非とも出席して下さい。送迎の馬車も用意しますから、事務所の皆さんにも是非来て貰って下さい。」
「やったな!トモちゃん!子供たちも喜ぶぞ!。」
「あらあ、また、パーティですの?楽しみですわぁ。」
「ありがとうございます、アウロさん。是非、参加させてください。楽しみにしています。」
「ええ、こちらこそ。楽しみにしていますよ。」
と言うわけで我々は無事に任務を終えノダハに帰ったのだった。
まずは冒険者ギルドに報告だな。という事で、冒険者ギルドへ出向き受付で経緯を話すとまたもや奥の部屋に来て欲しいと言われて行くことに。
部屋に入って応接セットのソファーに座った我々に、ギルド長が口を開く。
「すいません。話しは衛兵隊から聞いておりますが、出来れば詳しくお聞かせ願えれば助かるのですが、よろしいでしょうか?。」
そういう事でしたら、と我々は事の経緯を話して聞かせた。
まあ倒し方の詳細は省いたのだが、そこは冒険者ギルドの長だけあって深堀りしてこないのはさすがだった。
「なるほど。そうでしたか。これは、依頼完了として受け取らせて頂きます。ただ、事が事ですので、これにて終了というわけにも行かないと思います。勿論、悪い意味ではありません。魔物災害を事前に防いだ功労者として、その労にどう報いるかと言う話になりますので、また後日改めて連絡が行くと思います。その際はよろしくお願いします。」
「はい、わかりました。」
「それから、皆さんの冒険者ランクなのですが。」
「はい。」
「これも、今のままというわけにも行きませんので、上げて頂く事になります。ただ、これもやはり、今回の件から考えますと、どのような形を取れば妥当か判断が難しいですので、こちらも後日連絡を、と言う形になってしまいます。申し訳ないです。」
そう言って頭を下げるギルド長。
「あらまあ、そんな、ギルド長さん、頭を上げてくださいな。わたし達は別にランクにこだわってはいませんから。ただ、トモトモと一緒に冒険が出来れば満足なのですから。ねえ、シエンさん?。」
「そうだ、そうだ!今、アルスは良いことを言った!。」
シエンちゃん、君は昭和の大御所俳優か!チョメチョメ!
「ありがとうございます、そう言って頂けると助かります。」
「まあまあ!気にするな!なあ!皆の衆!。」
「また、シエンちゃんは。でも、本当に気にされないでくださいね。」
そんなこんなで我々は冒険者ギルドを後にして事務所へと帰宅するのだった。
「ただーいまっと!。」
シエンちゃんが勢い良くトビラを開けて元気よく言う。何の歴史を確かめに行った帰りだ!と突っ込みたくなる。ばびんちょっ!
「お帰りー!。」
「みんな、帰ってきたよー!。」
室内に入るとシンたち宣伝班もいて各々練習をしている。
「あれ?今日はみんなもう帰ってるの?。」
「はい、マキタヤの鉱山が閉まっているらしくて。その影響で人の動きも少ないから、どこのお店もしばらくは営業縮小するって言ってるんです。」
フィルが教えてくれる。
「それなら、もう大丈夫だぞ!。」
シエンちゃんが言う。
「本当に?!。」
シンが嬉しそうに聞く。
「はい、もう鉱山に居た魔物達は冒険者さん達が倒しましたからね。すぐに、人も集まってきますよ。」
「我らもだろアルス!。」
「わたし達も冒険者さんですから、間違ってはいないですよ、シエンさん。」
「凄いっす!シエン姐さんもアルスちゃんもトモ兄ぃも!みんな、凄いっす!。」
アランが興奮気味に言う。
「あらあら、いえいえ、ねえ。うふふふふふ。」
「くふふふ。まあまあ、大したことではない!くふふふふ。」
ふたりともまんざらでもないご様子。結構結構。
「みんなを集めてもらえないか?。」
「俺が呼んでくる!。」
カイルがサッと立ち上がって呼びに行ってくれる。
そうして、みんなが集まるのを待ってから俺は明日のマキタヤで行われる祝賀会の事をみんなに話した。
「と言うわけで、アウロさんが是非みんなにも参加して欲しいと言って下さったので、明日はみんなで一緒にマキタヤに行きましょう!。」
「わあぁぁぁぁ!。」
「やったあーー!。」
「マキタヤ行くの初めてだよ俺!。」
「そんなのみんな一緒よっ!。」
「祝賀会ですって!。」
「楽しみだね。」
「楽しみですわ。」
「どうやって行くの?歩いて?。」
サラが尋ねる。
「アウロさんが馬車を手配してくれました!明日は馬車に乗ってみんなで一緒に行きましょう!。」
俺は答える。
「うおっ!やったっ!。」
「わぁーーっ!馬車だってっ!。」
「凄いねっ!。」
「馬車なんて乗るの、私、初めてっ!。」
「そんなのみんな一緒だろ!。」
「なによっ!。」
「ひゃー、自分でさっき言ったの真似しただけなのに、めちゃめちゃ怒られた。」
「わはははは!。」
「うふふふふ、楽しいですねえ。」
「きゃはは!楽しいのう!。」
「よーし!僕たちも祝賀会を盛り上げよう!。」
「それは、良い意見ですねフィル。では、私たちもコマを持って行くとしますか。」
「はい!お兄様!。」
「うーーっし!ケートモここにありってところを、マキタヤの皆さんにも見てもらおうっ!。」
俺は意気込むみんなに聞いてみる。
「ケートモってなに?。」
「ケイン&トモ事務所の事ですわ。街の皆さんは親しみを込めてそう呼んでくださってます。」
セイラが答えてくれる。
「そうなのか、そりゃ、良かった。本当に、良かった。」
「なにをしみじみしておるのだ、トモちゃんは!そんな孫を見るおじいちゃんみたいな目でみんなを見おって!。」
「えーー。そんな目をしてた?。」
まあ、前世界の年齢でいえば、このくらいの年の孫がいてもおかしくはないからな。まあ、計算上はという話だが。
「していましたよ。トモトモおじいちゃん。うふふふふ。」
アルスちゃんがそう言って笑った。シエンちゃんは何か言いたそうな顔をしてアルスちゃんを見ていたが、さすがは賢さで知られる龍族、言いたいことを吞み込んだようだった。
ただ、にやつきまでは止められなかったようで、アルスちゃんに突っ込まれてしどろもどろになり、益々周囲を笑顔にしたのだった。




