噂の場所って素敵やん
「僕の名前はマルボ」
「僕の名前はヤルボ」
二人合わせてなんなんだ!君と僕とでなんなんだ!
思わず心の中で突っ込んでしまったが、金髪少年二人組、マルボとヤルボはどうやら我々に対して友好的に接っする気になったようだ。
「俺はクルース。上の学園で教師をしてる」
「学園ですか。上にあった建物は教育のための物だったんですね。そしてクルースさんは先生なんですね」
「あたしはキーケ。同じく教師だ」
「僕はマッケイ!生徒です!マルボ君とヤルボ君はここでふたりで生きてきたの?」
「ううん、違うよ。皆さんには僕たちの所に来て欲しいんだ」
「そして、助けて欲しいんだ」
マルボとヤルボが言う。
「助けて欲しいとな?」
キーケちゃんが聞く。
「うん!助けて欲しいの!」
「ついて来て欲しいの!」
「ついて来て!!」
マルボとヤルボはそう言って先ほどまでいた穴に入って行く。
そして、こちらを見て手招きをするマルボとヤルボ。
「うーむ、どうしたもんかね?」
「きひひ、行ってみたらよかろうて、助けを求めておるのだろ?助けてやれば良いではないか。ここで迷うなんてトモらしくもない」
「いやあ、そうなんだけどね。この子達の素性を考えるとね、下手に手助けしていいのやら」
「では、どうする?見ぬふりして帰るか?」
「え?帰っちゃうんですか?」
マッケイ君が驚いたように言う。
「そんなわけにもいかないよねえ。面倒ごとに巻き込んだらごめんね」
「きひひ、何を言っとる。今更言う事か」
「ま、そうか」
「じゃあ?」
「ああ、ついて行こうかマッケイ君」
「そうこなくっちゃです!」
そんなわけで、我々は謎の少年マルボとヤルボについていく事に決めた。
穴は高さが1.5メートル程か、俺は身をかがめて進むようだった。
このくらいの大きさの穴ならば、先ほどのような魔物の侵入は防げるだろう。
少年たちが何者なのか、これからどこに連れて行こうとしているのか、道中幾ら尋ねても、着いたら話します、で詳細を聞かせてはくれなかった。
しかし、マルボとヤルボは兄弟で上に行く道を作ったのはこのふたりである事、そしてちょくちょく出ては建物内を散策していた事、ある時、食べ物が置いてあったのでつい食べてしまい、そのせめてものお返しにと室内の掃除をした事、それ以来、たまに食べ物が置いてあり、頂く代わりに掃除をしていた事、などを話してくれたのだった。
「そうか、そんな事があったのか。しかし、なんで掃除の道具を出しっぱなしにしてたんだい?」
「最初は人に見つかりそうだったからなんですが、なんだか、そうすることで次に来た時に食べ物を置いといてもらえるんじゃないかと思いまして。合図みたいな感じで、そうしてました」
「いや、まあ、なにも被害はないから構わないんだけどね」
そうして話をしながら穴を進んで行く。
「ここが出口です。そして、これが僕たちの街です」
マルボとヤルボに案内されて着いた先には大きな街があった。
石の山をきれいにくりぬいて作った建物が沢山並び、空は高い天井にいくつも埋め込まれた例の発光体が光っており、それはまるで昼間の外のようであった。
「これは」
「ううむ、噂に聞いた事はあったが、まさか実在したとはな」
「どんな噂ですか?」
マッケイ君が聞く。
「巨大な地下都市がありそこでは古代文明の継承者たちが生活している、とな」
「では、ここが」
マッケイ君が驚いて言う。
「皆さん、これから長老に会って頂きます」
「そこで長老の話を聞いて下さい、お願いします」
マルボとヤルボが我々に改めて言う。
「ここまで来たからにゃあ、そうさせてもらうさ」
「きひひ、そりゃそうだ」
「さあ、連れて言って下さい!」
俺たちは彼らに言う。
「ありがとうございます。では、こちらに乗って下さい」
「ここの赤い所です」
マルボとヤルボが言う石畳の一部が赤くなっている所に、俺たちは乗った。
「では行きますよ。長老の家まで」
「急いでお願い」
マルボとヤルボがそう言うと、我々が乗った赤い石畳は音もなく宙に浮き進みだした。
おおう!こりゃ凄い!まるで魔法のじゅうたんだ!
「凄いです!宙を飛んでいます!」
「っほ!こりゃ楽でいいな」
マッケイ君が興奮し、キーケちゃんも喜んでいる。
我々を載せた石畳は地面から建物の二階程度まで浮き、そのまま宙を滑るように飛ぶ。
スピードは馬で軽く流す程度だろうか、それでも風の抵抗などは感じないので何らかの障壁が張られているのかもしれない。
空飛ぶ石畳は、大きな石山を削ったような高層階の建物に向かう。
「これを見て下さい!透明な何かで保護されてますよ!」
マッケイ君がそう言って周囲を手で押さえている。
なるほど、移動式石畳の周囲は何かでガードされており、乗客が地面に落ちないように安全策が施されているんだな。
高層階の建物に近づくと、空飛ぶ石畳は建物に沿って垂直に上がり始めた。
おお!移動式地面はエレベーターにもなるわけか、こりゃ楽でいいね。
そのまま、最上階まで上がると石畳はストップする。
「マルボです」
「ヤルボです」
石をそのまま削ったような外壁に向かって二人が声を上げると、ただの石壁だった所が扉のように横に開く。
「では、行きましょう」
「ついて来て下さい」
そう言って進むマルボとヤルボに俺たちは続く。
俺たちが入ると先ほどまで開いていた石壁は自動で閉まる。
内部の壁はクリーム色をしており、表面は非常に滑らかだ。
まっすぐに伸びた通路の左右にはトビラがついており、まるで会社かなにかのようだ。
マルボとヤルボは通路の一番奥にあるトビラまで行き、先ほどのように自分たちの名前を告げた。
「入りたまえ」
中から声がしてマルボとヤルボはトビラを開けて中に入った。
「失礼します」
「失礼します」
ふたりが挨拶をする。
部屋の奥で外を向いて座っていた恰幅の良い白髪の男性が、ふたりの声にこちらを向いて席を立った。
「ありがとうマルボとヤルボ。皆さん、失礼ですがここに来る道中での会話を聞かせて貰いました。私はヌッシャガード、この街の長です」
俺たちに向かって挨拶をするヌッシャガードさん。
背の丈はキーケちゃんより少し高い程だが、がっちりした体格をしており白髪や顔に刻まれたしわからは、老齢を感じさせるが、体格や話し方からは精力的な印象を受けた。
「マルボとヤルボが色々と面倒おかけしました。まずはお座りください、少々長い話になりますので」
ヌッシャガードさんはそう言って、部屋にあるソファーを進めてくれる。
俺たちは勧められるままにソファーに座る。
ヌッシャガードさんがローテーブルを挟んで正面に腰を掛けると、マルボとヤルボが人数分のお茶を前に置いてくれた。
「どうぞ、遠慮せずに飲んでください。美味しいですよ」
ヌッシャガードさんはそう言うとカップをつかみお茶を飲んで見せた。
「では、頂きます」
俺も続いてカップを手に取る。
薄くキレイな陶磁器で出来たカップに入っているのは、紅茶のような色の液体だ。
香りをかぐと、少しフルーティーな紅茶のような香りがする。
一口飲んでみる。
「美味しいですねえ」
リンゴのような香りがする紅茶には、少し砂糖が入っているのか甘みがしてとても美味しかった。
「気に言って頂けたようで良かった。それでは、本題に入ると致しましょう」
そうして俺たちは、ヌッシャガードさんから話を聞かせて貰う事になったのだった。




