敵か味方かって素敵やん
ピーステートを出て次の街ビッグサムまでの道のりも特に襲撃などもなく、ギャング団は地元密着型なんだなと改めて俺は思うのだった。
この調子じゃ意外とちょろいんじゃないか、なんて思っていたのだが。
「もう逃がさないぜおふたりさん」
「さあ、ついて来てもらおうか」
馬車を降りたとたん俺たちは集団に囲まれてしまった。
今までの連中は大抵チームを示すような揃いの服装や揃いの何かを身に着けていたのだが、こいつらは一般の道行く人々と同じ様な服装をしていて見分けがつかなかった。
「お前ら、本当に地元のギャング団か?それにしちゃ服装が普通なんですけど?」
俺は思わず奴らに質問していた。
「俺らの名はビッグサムパンピーズ。一般ピープルの服装であるこれが俺たちのユニフォームよ。へへへ!どうだ!驚いたか!逆に個性的だろうが!」
「こいつらアホだろ」
「ええ、そのようですね」
俺とキャリアンはメチャメチャ小さい声で会話をする。
「アホなら、いけるか」
「いけるんじゃないですかね」
俺は後ろにいるサラセンさんに向けて手の平を広げてから握りチョキを出す。
もしもの時のために決めておいたサインだ。
「あっ!!これはっ!!」
サインを見たサラセンさんが大きな声を出す。
「お金だよっ!!お金!!」
リジーさんが叫びながら金属質なものをばらまく。
「おい!どこだ!」
「金?金金!欲しい金!」
周囲にいた一般の方々が我々の間に入って来る。
「ここだよっ!!」
大きな声を上げてリジーさんが、力いっぱい手に持っていたものをパンピーズの連中にぶつける。
「わあっ!!金!金!もったいない!!」
ぶつけられたパンピーズの連中も地面に這いつくばり出した。
俺たちはそのゴタゴタにまぎれて一目散に路地へと逃げる。
リジーさんがぶちまけたのは、俺の手持ちのハトメだ。
役に立つぜ、ハトメ。
ありがとうハトメ。
てなわけで俺たちはパンピーズの手を逃れたはいいのだが。
「いやがったぞ!」
「こっちだこっちだ!」
息つく暇もなく今度は別の連中に見つかった。
「うひゃあ!走るのは苦手なんですよ!」
「だったら飛んで鱗粉隠れ使え!鱗粉隠れ!」
「あっ、そうでした。では失礼して、痛っ!痛たたた!」
「なんだなんだ!」
キャリアンが飛ぼうとすると上から石つぶてが飛んできた。
「やっちまえ!」
「くらえ!」
「ばかやろう!こっちにもぶつかってんだよ!」
「止めろ止めろ!」
「ちょうどいいから、ウーリーズの奴らごとやっちまえ!」
「おう!」
「ふざけんな!バカ野郎!ドッグビーツの奴らからぶっちめちまえ!!」
「やったろーじゃねーか!」
「前から気に入らなかったんだよっ!!」
どうも、建物屋上から石を投げてる連中と俺たちを見つけて追っかけてる連中は仲が悪いようだ。
俺たちを追っかけてた連中が屋上に向かって石を投げ返し始めた。
「なんで奴ら屋上に登らねーんだ?」
俺は疑問を口にする。
「縄張りの関係です。この世界はこの世界なりの決まりがあるんですよ」
サラセンさんが言う。
「なるほどね。そんじゃ、その決まりを守って頂いてる隙にずらかりましょう」
俺たちは走って路地を抜ける。
「こっちだ!いやがったぞ!」
屋上から男の声がする。
「参ったねこりゃ。体制立て直す暇がないぞ」
「どうしますか?派手に蹴散らすわけにもいきませんし」
走りながらキャリアンと話すが、正直、良い案が浮かばない。
「ピューーーーーーーィィィ」
良く通る指笛の音が聞こえる。
俺たちが走る前方右側建屋のドアが開き、揃いのタンクトップを着た連中が棍棒などの武器を手にゾロゾロと出て来る。
「まずいぞ」
「やっちゃいますか?」
キャリアンが言う。
「兄ちゃん達、こっちだ。早く」
声がする方を向くと、立ち止まる俺らの足元、下水道の入り口らしい金網が持ち上がり、中から子供が手招きしている。
「どうします?」
サラセンさんが俺を見て言う。
「行くしかないでしょう」
俺は答える。
「兄ちゃん達、早くしな」
クールに言う子供。
「行きましょう!」
リジーさんはそう言って金網の中に入って行く。
次にサラセンさんも入り、キャリアンがその後に続くが体が大きくてなかなか入れずにいる。
「おい!キャリアン!早く入れよ!」
揃いタンクトップ集団がこちらを見て武器を構える。
「早くしろ!」
俺はキャリアンの身体をグイグイ押す。
「ぐぐぐ、ぐるじい。押さないでぇー」
「いいから急げ!もう来ちまう!!」
「まてコラッ!」
「逃げんじゃねーぞ!!」
「おらっ!!」
「うひゃ!みんな怒ってらっしゃるぞ!!早くっ早くっ!」
「お、押さないでぇぇ。オウフッ!!あぁぁぁれぇぇぇぇー-!」
キャリアンの身体が下水道の中へ落ちて行く。
タンクトップ集団が迫る。
「やっべ!」
俺はキャリアンに続いて中に入り、内側からかんぬきをかける。
「この野郎!!」
「開けやがれ!!」
「誰が開けるか!」
俺はおっかない顔してがなり立てる男たちに吐き捨てて、地下に降りて行く。
はたして、さっきの子供は敵かな?味方かな?




