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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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自由のための逃避行って素敵やん

 「さて言うは易く行うは難し、か。とりあえず御者さん、一緒にいると狙われちゃうからこれにて解散となります。ご苦労様でした」


「いや、しかし、チルデイマまで前金で頂いちゃってるからなあ。幾らかお返ししましょうか?」


「いやいや、こっちの都合だからその辺は気にしないで下さいよ。それより帰りは大丈夫ですか?」


「気遣って貰ってすいませんねお客さん。帰りは帰りでまたお客人を拾いますんで、そこは大丈夫ですよ。それよりも、皆さんくれぐれもお気を付けて、しからば、これにて失礼」


 御者さんは軽い感じでそう言うと、馬車に乗って去って行った。


「さてと、具体的なこれからの行動だが、リジーさんは足を痛めてるようだし、ひとまずは馬でも買うか?」


 俺は皆に聞いてみる。


「すいません。実は偽装でして。本当はなんでもないんです。相手を油断させるためと、そうしていると馬車などに乗せてもらいやすいかと思いまして」


 サラセンさんがすまなさそうに言う。


「ああ、そうなんですか。なら良かったですよ。いざって時に走って逃げられない上に、撃退するのも力を貸し過ぎてはいけないじゃ、厳しい状況だなと思ってたんで。後はここからマーハイヨまでのルートですね」


「現在地はここ、ゴゼファード領アップフォールですよね。地図で見ると山道はもう抜けてますので後は平野ですね。見晴らしが良いので待ち伏せには都合が悪いでしょうね。移動は大きめの乗合馬車にして、最悪道中に襲われることがあれば降りて逃げる事にしましょう。大きめの乗り合い馬車なら御者さんひとりではなく武装している場合がほとんどなので、我々が逃げた後にそちらにちょっかいをかける事もないかと思います。問題は大きな乗り合い馬車は街と街を往復するのみなので、街中は自力で抜けなければならないということです。街中こそが地元ギャング団のまさに庭なので、それが一番の問題点になると思います」


 サラセンさんが言う。


「なるほどね、それなら何とかなりそうだ。じゃ、ここからだと次の目的地はピーステートか、結構大きい街だな」


「地図で見ると、ピーステートの次はビッグサム、そしてマーハイヨとなります」


「ビッグサムもそこそこの街だな。ひとまず大型乗合馬車乗り場に行くか」


 そうして俺たち4人はアップフォールの乗合馬車乗り場へと急いだ。

 大型乗合馬車は、街道を移動するときに結構すれ違っているので見た事はあるのだが、実際乗るのは初めてだ。

 馬車乗り場に行くと、馬2頭立ての後ろに前世界のバス位の大きさの客室を付けた大型乗合馬車がちょうど停まっている所だった。


「おお!ちょうどいましたよクルースさん!乗りましょう乗りましょう!」


「ちょっと待って下さい。念のため、逃走しやすい屋上席にしましょう」


 勢い込むキャリアンにサラセンさんが冷静に言う。


「屋上席ですか?」


 キャリアンが不思議そうに聞く。


「ええ、大型乗合馬車は屋根の上にも席があるんですよ」


「それはいい!眺め最高!それにしましょう!是非しましょう!」


 サラセンさんの説明を聞いて喜ぶキャリアン。


「お前、喜びすぎ。観光じゃあないんだぞ」


「またまたクルースさーん!堅苦しい事は言いっこなし!さあ!乗りましょう!」


「しょうがねーなー」


 俺たちは急かすキャリアンに続いて停留所に行き、一番早く出発する大型乗合馬車の屋上席の券を4枚購入した。

 大きな客室の一番後ろには屋上に上がるためのちょっとしたらせん階段がついており、そこから屋上席に行くようにチケットを売ってくれた乗務員さんに言われる。


「一番乗りでーす!」


「あ!お前!飛ぶのは無しだろ!」


 階段を使わず飛んで屋上席に行くキャリアンに俺は注意する。


「まったく子供みたいなやっちゃな」


「天真爛漫な方ですね」


 サラセンさんが言う。


「まあ、飾り気のない素直な奴なんですけどね。一歩間違えると無神経って言うかガサツと言うか」


「うふふふ、でも嫌な感じはしないわ」


 俺の言葉にリジーさんが答える。

 彼女の声を初めて聞いたかも知れない。


「ああ、そうだね。クルースさん、彼女の人を見る目は確かですよ」


「ほほう。ではサラセンさんはその確かな目で見染められたって訳ですね」


「いや、そう言われると照れますが」


 サラセンさんが笑って言いリジーさんも笑顔で頷いた。

 リジーさんも心なしか表情にゆとりができたような気がするよ。


「早く!早く!いい眺めですよ!」


 羽をパタパタさせて言うキャリアン。


「お前は良く飛んでるから珍しくないだろ?」


「いやいや、自分で飛ぶのとはまた違った良さがありますよ」


「ホント、キャリアンさんの言うように、気持ちいいですよ。リジーも見てごらん、もうこの街のギャング団は撃退してるし顔を出しても大丈夫だよ」


「本当ね。街の人たちが自由に歩いているわ。私たちも早く自由になりたい」


 リジーさんはサラセンさんの肩にもたれかかり言った。


「大丈夫ですよ!ね?私とクルースさんがいれば、大丈夫!どんなに困難だと感じてもくじけてはいけませんよ!」


 キャリアンがふたりに言う。

 キャリアンよ、必ず最後は何が勝つんだ?教えてくれよ?

 そんな俺の疑問をよそに、屋上席にも幾らか人が乗り込んで来て、乗務員さんの発車しますの声と共に馬車はアップフォール村を後にするのだった。


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