仕事して稼ぐお金って素敵やん
昨日の夜は、やれ、アルスちゃんとベッドをくっつけるだのシエンちゃんの隣が良いだの、大変だったようだ。
シエンちゃんは我こそ人気者也と言うし、アルスちゃんはみんなが一緒に寝たいと言うので困りましたと嬉しそうに言う。まあ、仲良くてよいけどな。
今日は、3人での初依頼を受ける事にした。
「まあ、沢山依頼がありますのねえ。どれにしましょうか?迷いますねえ。」
「EとFが受けられるからそこから選ぶといいよ。」
「面白いのが良いのお。」
「おや、クルースさーん。昨日の依頼はいかがでしたか?楽しんで頂けましたか?。」
おっと、ギルド長のおでましだ。
「ええ、なかなか面白い依頼でした。ところで、ギルド長。新しい仲間が増えまして、これから3人で依頼を受けることが多くなると思いますけど、なにか注意点とかありますか?。」
「ほほう、そちらのお嬢さんですか。ほうほう、クルースさんと行動を共にすると言う事は、かなりの実力者と言う事ですね。これは、期待のパーティーの誕生ですな!はっはっはっはっは!頼もしい限りですよ。3人ですとパーティー扱いになりますのでパーティーリーダーのランクで依頼を受ける事ができますよ。クルースさんがDランクですから、Dまで受けられますよ。それともクルースさん、Cにランク上げしますか?」
「いやいや、すいません!大丈夫です。それは、我々がそれに見合う依頼をこなしたら、またお願いいたします。」
「そうですかー。残念です。では、3人パーティーでDランクの依頼でよろしいですかな?。」
「みんな、どうする?。」
「我はかまわん。面白ければな。」
「わたしも初めてですし、おまかせします。」
「でしたら、丁度良い依頼がありますよ。これなんですけどね。」
そういってニーソンギルド長が見せてくれた依頼書には、パーティー限定と書かれていた。
「これは、以前ネズミが大量発生し、山頂の湖に飛び込んだことによる水質汚染でネイコウハ山に住む魔獣が普段出没しない場所に出没する事件がありましたが、それの余波なんですよ。昨日行って頂いたギリヤド山とも繋がるザタワン山脈に鉱石採掘のための坑道があるのですが、そこにネイコウハ山から出た魔獣の一部が住み着いてしまいましてね。その討伐依頼になります。複数のパーティーが既に依頼を受けて坑道に入っています。しかし、いかんせん、長い間をかけて掘られてきた坑道です、その長さはかなりなものになりますので、依頼を受けてくれる冒険者は多いに越したことはないわけです。いかがですか?ご希望に添えますでしょうか?。」
「面白そうではないか!どうだ?トモちゃん!。」
「そうだね、坑道に魔獣がいるんじゃマキタヤの鍛冶師の皆さんも仕事に差し障るだろうしねえ。アウロさんの為にもなりそうだし、俺はいいと思う。アルスちゃんはどう?。」
「わたしは、初めてなので皆さんにお任せします。」
「クルースさんの言われる通り、今回の依頼はマキタヤの鍛冶ギルドからになります。魔獣の素材買い取りも別途してくれるそうです。報酬は討伐した魔獣ごとに出ますので、お得な依頼だと思いますよ。」
「やろうやろう!いっぱい稼いで子供たちに美味いものを沢山食わせてやろうじゃないか!。」
「おおっ!シエンちゃん!いいこと言うねえ!よしっ!それじゃあ、これに決定!ニーソンギルド長、お願いします。」
「おおっ!それは良かった。鍛冶ギルド長からも精鋭を送ってくれるよう頼まれていたのですよ。では、依頼受諾のサインを皆さんお願いします。」
と言うわけで、我々一同は一路、ザタワン山脈の坑道へと向かうのだった。
キットに俺が乗り、ナーハンにはシエンちゃんとアルスちゃんの2人乗りでまずはマキタヤへ向かう。
マキタヤを過ぎると大きなアリの死骸を積んで走る荷車とすれ違う。
「これは、依頼のやつだよね。」
「まあ、そうだろうな。中型のキラーアントだな。」
それからもそうした荷車とは何度もすれ違う。その度にシエンちゃんとアルスちゃんが積んでる魔獣の説明をしてくれるのだった。
「あれは、レイクワームですわ。」
「いや、中型のジャイアントワームだろ。」
「翼の欠片がありましたからレイクワームで間違いありません。」
「なんだと!じゃあ、今の馬車を停めて確かめようじゃないか!。」
「いいですよ。わたしが合っていたらトモちゃん呼びをさせてもらいますよ。」
「上等だ!。」
「おいおい、よせよせ。運んでる人の迷惑になるでしょ。」
「トモトモの言う通りです。」
「アルスも乗ったろうがっ!。」
こんなやり取りが幾度もなされたのだった。もう、仲良くしなさいよ。
山間の道を通り、隣のタスドラック領に入る手前で更に山間に入る道があるのでそちらへと進む。
「このまま進めば坑道入り口に着くって話しだったけど。」
「ええ、大丈夫ですよ。道は間違ってませんよ。」
アルスちゃんが言う。
「行ったことあるの?。」
「ええ、ありますよ。」
「さすが、ご長寿!。」
また、シエンちゃんが煽る。
「あら、それは心外です。シエンさんとそんなに変わらないですけど。」
「いーや!変わるね!アルスのが確か200年位年上だったはずだ!250年だったかな?兎に角年上だ!おばあちゃんだな!アルスばあちゃん!きゃははははは!。」
「おだまりっ!。」
「よせよー。ふたり共!。」
振り返ってふたりを見ると、シエンちゃんの頭が大きな氷の塊になっていた。
「おいっ!!。」
さすがにびっくりして声をかけた瞬間、その氷塊はひび割れ四散した。
「悪かった悪かった!そんなに怒るな!冗談だ!ほんの冗談!。」
「勘弁してくれよー。ビックリしただろう。なにしたのよ?アルスちゃんは?。」
「頭を冷やして差し上げたのですよ。」
「きゃははははは!上手いこと言いおって!。」
「笑い事ではないです。」
「まだ怒っとるのか?すまない!謝る!。」
「でしたら、いいですけど。」
「ふぅー、アルスに年の話しはするもんじゃないな!トモちゃんも気を付けろよ!。」
「もう、シエンちゃんは。頼むよ。今のは何だったのよ?。」
「今のはアルスが我の頭に水魔法をかけたのだ。」
「正確には水魔法と風魔法ですけど。」
「細かいなあアルスは、ほぼ水魔法だろうが。」
「あら?魔法について少し腰を据えて話しをしますか?。」
「せん、せん!まったく、面倒くさい。」
「アルスちゃんは魔法が得意なの?。」
「ええ、まあ、嗜む程度ですが。」
「なにが嗜む程度だ!一瞬でも我の頭を凍らすなど嗜む程度の奴が出来ることではないわ!。」
「へー、今度、俺にも教えてよ。」
「トモトモにでしたら、よろしいですよ。教えがいがありそうです。」
「まあ、知っておいて損はないが、選択肢が増えると実戦では不利になることもあるぞ。」
「そうなの?。」
「どの魔法を使おうか、その一瞬の迷いが命取りになることもある。アルスには関係ない話しだがな、取るべき命がそもそもないのだからな。」
「あらあら、おほほほほ。」
「なるほどねえ。俺なんて実戦慣れしてないからなあ、むやみに覚えないほうがいいかもだな。」
「そうだな、少しずつが良かろう。」
「あらあら、お母さんみたいですねえ。ねえ?トモトモもそう思いません?。」
「誰がお母さんだ!。」
「まあまあ、ふたりとも。」
なんてやり取りをしていると賑やかな所に出た。
どうやら鉱山の入口らしいのだが、出店はあるしちょっとした祭りみたいになっている。
「おっ!トモちゃん!なんだかいい匂いがするな!。」
「ふたりとも、昨日買った巾着にお金を入れてあるから買うならそれを使いなさいね。それからふたりとも、お金を使う時は計画的にね!。」
「あらあら、今度はトモトモがお母さんみたい。おほほほほほ。」
「わかっておる!ちょっと行ってくる!。」
そう言って出店のほうへ駆けていくシエンちゃん。
「ありゃ、わかってないな。」
「わかってませんねえ。うふふふ。」
「アルスちゃんは行かなくていいの?。」
「はい。わたしはトモトモとご一緒させて下さい。」
「構わんよ。」
俺とアルスちゃんで出店を見て回る。
「これ食べようかな。」
「わたしは、こっちの甘いやつにします。」
俺はたれに付けたイカ焼きをチョイス、アルスちゃんは生クリームとバナナのクレープをチョイス。
ふたりでパクつきながら歩く。
「うふふふ。恋人同士みたいですねえ。」
「いやあ、どうだろう。親子に見られてんじゃないかなあ。」
「ちょっと待てーーーーい!。」
シエンちゃんが両手に食べ物を持って走ってきた。
「まったく!もぐもぐ。ズルスは!もぐもぐ!すぐズルをする!もぐもぐ。トモちゃん!これ!美味しいぞっ!食べるか?もぐもぐ。」
そう言って串に刺さった肉を俺の方によこすシエンちゃん。
「ちょっと、食べるか喋るかどっちかにしなよ。ひとつ貰うよ。」
俺は串肉をひとつ貰う。
「もぐもぐ。おー!美味しい!ほれ、イカ焼き一口あげるよ。」
「おうおう!一口貰おう!もぐもぐ。うむ!いける!。」
「アルスちゃんもどう?一口。」
「あらあら、では、頂きますね。もぐもぐ。あらあ、美味しいー。」
うんうん、美味しいものを食べると幸せになるなあ。
「おや?クルースさんじゃないですか。」
「おーっ!アウロさん!。」
「クルースさんも協力して下さるんですか?それはありがたい!。」
「ええ、依頼を受けてきました。」
「久しぶりだな、アウロさん!こっちはお友達のアルスだ!。」
「こんにちは。アルスです。お話しは聞いております。よろしくお願いします。」
そういってお辞儀をするアルスちゃん。子供たちに見せたあのバレリーナみたいなお辞儀ではなく、普通のお辞儀だった。相手で挨拶のスタイルを変えるとは、なかなかやるな!
「これはこれは、ご丁寧に。アウロと言います。こちらこそよろしくお願いいたします。事務所のお子さんではないのですね。冒険者を一緒にされているということは。」
「ええ、かなりの腕利きですよ。シエンちゃんもそうですけど、きっと私よりも強いですよ。」
「いやですよ、もう。そんなことはありませんたら、おほほほほほ。」
口元に手を当てて上品に笑うアルスちゃん。
「ところでアウロさんはこちらへは?。」
「ええ、冒険者の方が退治して下さった魔獣の素材査定で来ております。」
「そうでしたか。」
「よし!食い物も食った!行こうトモちゃん!早く退治してアウロさんを安心させてあげよう!。」
「ありがとう、シエンさん。でも、くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。」
「うん!大丈夫だぞ!アウロさん!な?トモちゃん!アルス!大丈夫だよな!。」
「無理しないで怪我しないように行こうな。」
「うふふふふ。そうですね。安全第一で行きましょう。」
「ふたりとも!さあ!急げ!行くぞ!じゃあ、アウロさん!行ってきまーす!。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
なんだか、ピクニック気分だな。
俺たちは坑道へと進む。
坑道の中はあちこちにランタンがつけられており明るさは確保されている。
入ってすぐに道が分岐している。
「こっちだな。」
「わかるのか?シエンちゃん?。」
「うむ。」
「アルスちゃんもわかるの?。」
「ええ、反対の道は魔獣の気配が薄いですねえ。」
「そうそう!さあ!皆の者!ついて参れ!。」
「おーっ!。」
そうしてシエンちゃんについて行く。
「この先、角を曲がった先にいるぞ。」
「あらあら、ではわたしが行きましょうか。」
「気を付けてよ、アルスちゃん!。」
「はーい。」
「では、見物させてもらおうか。」
角を曲がると大きな銀色のサソリがいた。
サソリがこちらに気づいて向かってこようとした瞬間、サソリの頭部に大きな氷柱が刺さり、それは地面にまで達した。
地面に縫い付けられた巨大サソリはしばらくジタバタと動いていたが、すぐに動かなくなった。
「はい、お粗末様でした。」
「おう。キレイに退治したな。よし、アウロさんのところに持って行こう。」
「おう!。」
「はーい。」
アルスちゃんは、倒した巨大サソリを軽々と持ち上げる。
「さあ、早く持って行って、次はもっと奥深くに入りましょう。」
巨大サソリを持ち上げたアルスちゃんは、さっさかさっさかと坑道の出口に走って行く。
俺たちもそれについて行く。
外に出てアウロさんのもとに行く。
「はい。こちら、お持ちしました。」
「おおっ!これは大きなメタルスコーピオンですなあ。しかも、部位破損も殆どないし、これは高値で買い取らせていただきますよ。」
「いやあ、アウロさん。適正価格でお願いします。多分、沢山持ってこれると思いますんで。」
「ええ、ええ、大丈夫ですよ。これは人気のある素材ですからね。では、こちらどうぞ。」
そう言ってお金を渡してくれるアウロさん。
「ほら、アルスちゃん、しまっときな。」
「わたしがですか?。」
「そりゃそうだろ。アルスがとったんだから。」
「いいんですか?。」
「うん、いいから、しまっときな。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、それは、アルスちゃんが自分の力で稼いだお金だからね。好きなように使いなさいな。」
俺はアルスちゃんに言った。
「よし!次だ、次!我はもっと凄い奴をとってくるぞ!。」
と言うわけで再度坑道へ。
またシエンちゃんに従って奥へと進んで行く。
「おっ!この先!そこそこ強い気配だぞ!よーし!我が行くぞ!。」
「おー!やっちゃれやっちゃれ!。」
「うふふふふ。楽しいですねえ。」
シエンちゃんを先頭に進んで行くと、そこには頭の横に翼がついたでかい蛇がいた。
「よし、ヤクルスだ!まあまあだな!。」
シエンちゃんはズンズン近づいて行くと、こちらに気づいたヤクルスが身体に力を入れて凄い速度で飛んでくるのを平手ではたき落とした。
バチコーーーン!
でかい音がしてヤクルスは力なく地面に横たわる。
「どうだ!見たか!。」
ヤクルスの頭を踏みつけポーズをとるシエンちゃん。
「よっ!お見事っ!。」
俺は声をかけて拍手をする。
「では、またアウロさんのところに行きましょうか。」
そうしてまた坑道を出てアウロさんの所で買い取ってもらう。
「いやあ、早かったですねえ、しかし、大きなヤクルスですなあ。」
「フフフフンッ!。」
胸を張っているシエンちゃん。
「では、こちらを。」
「頂くぞ!。」
嬉しそうに受け取るシエンちゃん。
「さあ、また入りましょう。」
アルスちゃんの言葉に従い再度坑道に入る。
「いやあ、仕事をするってのは気持ちがいいなっ!な!。」
「本当ですねえ。頑張りましょうねえ。」
「ははは、ふたりにとってはお仕事だよな。冒険とかそういうんじゃないかー。」
「まだまだ、わからんぞ。奥に行けばもっと強い奴がいるかも知れないぞ。楽しみだな!なっ!トモちゃん!。」
そしてさらに深く入り、俺が大きな蜘蛛、ジャイアントスパイダーを力調整したフォーカスで倒して持ち帰り換金、アルスちゃんが巨大なムカデ、ジャイアントセンチピードを地面から発生させた槍状の岩石でやっつけて持ち帰り換金しての再突入。
「よーーし!今度は我の番だな!腕が鳴るぞ!。」
そう言ってブルンブルン腕を回すシエンちゃんに続いて奥へ奥へと進んで行く我々一行は、そこで信じられない光景を見ることになる!続きはCMの後で!
冗談はさておき、そこで見たのは青く光る地底湖だった。
「うわー!キレイだなあ!。」
「きれいですよねえ。これは、小さなクラゲの大群なんですよ、トモトモ。近くに行って見ると良くわかりますよ。」
「へーー!見たい見たいっ!。」
俺は光る地底湖に近づいてみる。
「うわーっ!スゲー!。」
覗き込んだ地底湖の中にはペットボトルのフタくらいのサイズで厚みのあるコンタクトレンズみたいな形をしたクラゲの大群が、青く光って浮遊していた。
「なによー、これー。めっちゃ幻想的やーーん。」
「きゃはははは!トモちゃん!お前は乙女かっ!。」
中身は四十路も半ば過ぎたオジサンだからな、もうそのくらいの年になると半分オバサン化してくるからな。
「しかしトモちゃん、あんまり油断しないほうが良いぞ。そいつらが光るのは刺激を受けた時や警戒してる時だからな。」
「ええー?なにがー?。」
あまりにも幻想的な光景にボヤボヤした返事を返していると、はぐれグリフォンに遭遇した時のような、あの身がすくむ感じがして咄嗟にゲイルを使って後方へ飛んだ。
「ほらな。」
「あらやだ、ジャイアントイールですよ。」
湖面からまるでプレシオサウルスみたいな首が出ており、俺が元居た地面が煙を上げているのが見えた。
「あれは、雷を使うのだ。面白い奴がいたぞ!我の獲物だ!。」
「うわっ!シエンちゃん、悪そうな顔してるよ。しかし、あの魔物もネイコウハ山から来たのかねえ?。」
「はい、そうだと思いますよ。地底湖じゃ餌がないですからねえ。」
「どうやってここまで来たんだろう?。」
「地面が濡れてれば平気で陸に上がって移動しますよ。雨の日にでも入って来たんじゃないですかねえ。それか、もしかしたら地下で繋がっているのかも知れませんけど。どうでしょうねえ?。」
「見ておれ!我の力を!とうっ!。」
掛け声をかけて飛び上がったシエンちゃんは、そのまま鎌首をもたげているジャイアントイールに向かって飛び蹴りをした。
「チェストーーーーーーッ!!。」
「なんだよ、声出すの真似してんじゃん!。」
俺は思わず言ってしまう。
「ぬわーーーーっ!。」
シエンちゃんはジャイアントイールに飛び蹴りをかましたが、ヌルリと滑ってその勢いのまま飛んで行ってしまった。
「あらあら、うふふふふ。おっちょこちょいさんねえ。うふふふふ。」
上品に笑うアルスちゃん。
「やりおったな!味な真似を!!。」
ゲイルで空中にクッションを作って勢いを緩和し、それを足掛かりに飛んで颯爽と岸に降り立つシエンちゃん。
「いや、相手はなにもやってないような。」
「わからんか!高度な駆け引きがあったのだ!。」
「あらあら、うふふふ。ひとりで駆け引きしてらしたのね。頑張り屋さんねえ。うふふふふふ。」
「なにを言うか!しかし、足の裏がぬちゃぬちゃするなあ。気持ち悪いぞ!。」
そういって足の裏を地面に擦り付けるシエンちゃん。
ジャイアントイールの身体が青白く光りだし帯電している様子だ。
「あれって、もしかして?。」
「はい、雷を使おうとしていますね。あれは、風魔法の応用なんですよ。それと水魔法のミストを一緒に使って威力を上げるのが上手なやり方なんですけど、イールさんはそこまでは出来ないようですねえ。」
「そうなの?じゃあ、威力は大したことないの?。」
「それでも、ここに来てから出会った魔物ぐらいなら一撃ですよ。」
「ありゃあ、シエンちゃん!油断するなよ!雷来るよっ!。」
「しかし、こう足の裏がぬちゃぬちゃしていては、気分が悪い。もう少しで取れるから待っておれ!。」
「待っておれって。相手は聞いてくれないと思うけど。」
「うふふふ。来ますよー!。」
アルスちゃんが言ったのとほぼ同時にジャイアントイールが激しい光を発し、シエンちゃんが大きな雷に打たれた。
洞窟内の空気が帯電したようにピリピリする。
腕の産毛が立っている。
「うわっ、バチッとした!バチッと!見たか?トモちゃん!面白かったろう!。」
まるで静電気にあったように言うシエンちゃん。
「大丈夫かよシエンちゃん、しかしその髪は、ちょっと、ぷぷぷぷ、面白いぞ、ぷぷぷぷ。」
「なんだなんだ!。」
「シエンさんたら、髪の毛が逆立ってますよ。」
髪を触って確かめるシエンちゃん。
「あははは!これはいいな!カッコイイじゃないか!。だけど、もうこの辺にするか。飽きてきたぞ。」
こっちを向いたままのシエンちゃんにジャイアントイールが噛みつこうと襲い掛かってくるが、突然、ジャイアントイールが頭から血を出してそのまま倒れこんでしまう。
「ありゃ、なんだ?。」
「風魔法ですね。圧縮した風を高速で打ち込みましたね。お見事です。」
優雅に拍手をするアルスちゃん。
倒れたジャイアントイールはしばらくバタンバタンとのたうっていたが、それもやがてなくなり静かになった。
「さて、アウルさんとこに持って行こう。」
「俺が持つよ。」
ぬちゃぬちゃすると気持ち悪がっていたので俺が持ってあげることにした。
「いいのか?すまんな、トモちゃん。」
俺はジャイアントイールのでかい頭を下から持ち上げて運んだ。
胴体部分は引きずってしまうがヌルヌルが効いてるのか、あまり摩擦を感じない。
「アウロさん、これもお願いしまーす。」
「おおっ!ジャイアントイールではないですか!こんなものまでおりましたか!。」
「ええ、地底湖にいましたよ。」
「おお、もうそこまで行かれましたか。しかし、大物ですなあ。」
周りの冒険者たちもこれを見てざわついている。
「へへーーん。どうだ!アウロさん!我がやっつけたのだ!。」
「おお!シエンさんが!さすがですなあ!これは、いい値段がつきますよ。」
「そうなんですか?。」
俺はアウロさんに尋ねる。
「ええ、皮は柔軟性と強固さを兼ね備え、雷属性に強い素材としてとても人気です。肉はすこぶる美味でしてな。私も大の好物なのですよ。骨と血とヌメリは魔法薬の材料として珍重されています。」
「ほー、このぬちゃぬちゃも有用なのか。そうかそうか!それは苦労して倒した甲斐があった!。」
「おほほほほ、苦労とは自分の飛び蹴りの勢いで遠くに行ってしまったひとり駆け引きの事ですか?それとも、ジャイアントイールの雷魔法を受けて髪の毛が逆立った事ですか?。」
周りの冒険者たちの表情がドンドン微妙なものになっていく。
前世界でオッサン上司と飯食いに行った時、店のテレビでなにかの特許を取って億万長者になった小学生のニュースをやっていたのだが、それを観たオッサン上司達の顔がそんなだったなあ。
「後は、蹴った足の裏がぬちゃぬちゃした事な!。」
エヘン!と自慢するように胸をそらすシエンちゃん。
いや、そこ自慢するとこちゃうよ、ホントに自慢できるのは後ろ向いたまま、襲い掛かってくるジャイアントイールを秒殺したことな!でもそんなこと、ここで言ったら周囲の冒険者さん達に申し訳ないので言わないが。
「それでは、こちらは少し値が張りますのであちらのテントで換金をお願いします。ご苦労様でしたね。」
「うん!。」
キラキラした目でいうシエンちゃん。まるで祖父に褒められて喜ぶ孫みたいだ。
「うふふふ。なんだか、温かい気持ちになりますね。」
「アルスちゃんもそう思う?俺もそう思った。」
「あらあら、気が合いますねえトモトモとは。」
「そうだねえ。」
「こらこら!ふたりで何を楽しそうにしている!仲間に入れろ!。」
「おほほほほ。なんか、わたしたち、凄くいい感じだと思いません?シエンさん。」
「なんだ、我とトモちゃんとアルスが、か?うーん。そうだな、確かにトモちゃんとふたりの時も楽しかったが、アルスが来てからもっと楽しくなったな!そうだ!いい感じだ!。」
「おほほほほほ、では換金したお金で何か驕ってくださいな。」
「おおっ!ちょっと待っておれ!換金してくるから。」
シエンちゃんはテントに行きお金を受け取って帰ってきた。
「見ろ!巾着がパンパンだぞ!。」
「あらあー、凄い!。」
「いやー、お金持ちになったなー!。」
「よし!今日はこの辺で一旦帰って明日また来よう!今日は事務所でパーーーッとやろうではないか!我の驕りだぞ!!。」
「ちょっとちょっと、シエンちゃん!ご利用は計画的にって言ったっしょ!俺も出すから、とっときなさいよ!。」
「なぜだ!また稼げばよかろう!こんな銭はパーーッと使うに限る!。」
「うふふふ、シエンさんらしいですねえ。わたしも今日はお金がありますから、みんなで出してお家でパーティーしましょうよ。うふふふふ。楽しみです。」
「おう!そうだな!みんながいいな!そうしよう!楽しみだなあ!肉をいっぱい買って行こう!子供たちは肉が好きなんだ!あと、甘いものものも忘れないようにな!よし!行こう!。」
という事で今日は一旦引き上げる事となったのでした。




