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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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人に好かれるって素敵やん

 アウロ氏の家は暖かみのある家だった。家にも人柄って出るのかも知れないな。

 アウロ氏のおかみさんはふっくらしていて包容力を感じさせる人だった。


「いらっしゃい。うちの人がいつもお世話になって。」


 ニコニコして出迎えてくれる。


「いえいえ、私の方こそいつもお世話になっております。」


 俺は頭を下げた。


「まあまあ、気楽にされて下さいね。」


 俺とシエンちゃんは席を進められ夕食となった。

 俺は今回の依頼で使用した特殊警棒の感想などを伝えたりもした。革ケースも非常に丈夫で使いやすかった事を伝えると、笑顔で革製品の販売部門もこさえますかね、などとアウロ氏は言う。

 俺は前世界の高級ブランドを思い浮かべ、それはきっと成功しますよと笑顔で答えたのだった。

 アウロ氏はシエンちゃんに弟さんの事を尋ねたりもしていた。シエンちゃんが言うには、ポリ助はじっとしてられない奴だから今もどこかを飛び回っているだろう、だが自分には良くなついており定期的に会いに来るからそうしたら会えるだろう、との事だった。

 どうもシエンちゃんの口ぶりだとノダハに長逗留するつもりらしい。長くノダハに居れば弟もいずれそこに訪ねて来るから、その時はアウロ氏の所にも顔を出すよう声をかけてくれる、と言うのだ。

 まあ、いいけど。しかし、弟さんはここにいることがわかるのかね?とシエンちゃんに聞くと、いずれわかる。龍族の血の繋がりとはそういうものだ、と言う。どうも、一定の範囲内に居るかどうかはわかるようだ。

 シエンちゃんがあの魔獣島に居る時も、弟は姉の滞在を感じられれば立ち寄っていったとの事。

 ふーむ。能力者同士はひかれあう的なやつかね。カッコイイじゃないの。

 しかし、アウロ氏の家の暖かみは、おかみさんの人柄に起因する所も大きいようだ。

 おかみさんの存在が実に暖かな安心感を醸し出している。

 アウロ氏の隣でニコニコしながら時折アウロ氏をたしなめたり、一緒に笑ったり、非常に好感の持てる方であった。さすがはアウロ氏の伴侶、と言ったところか。

 こうして俺たちは楽しい時間を過ごし、アウロ氏の家に一泊させて貰ったのだった。

 翌朝、用意された部屋で目覚め、昨晩夕食をごちそうになった部屋へ行くと朝食を用意しているいい匂いがしてくる。

 その部屋の奥が台所になっているようで、そこで朝食が作られているようだった。

 俺は台所に足を踏み入れる。


「おはようございます。ゆっくり休ませて頂きました。」


「はいはい。それは良かったですよ。今、朝ごはんができますからね。」


「遅かったな。ねぼすけトモちゃん!くふふふ。」


「朝ごはんを作るのに、シエンさんにお手伝いしてもらったんですよ。」


「いやいや、なかなかどうして。上手なものだ。」


 おかみさんの後にアウロ氏が言う。


「くふふふ。おかみさんが教え上手なのだ。しかし、面白いものだな料理と言うのは。まるで古代魔法の実験のようであった。まさか、ここに芋を入れることでこうした味になるとは!実に興味深いものであった。おかみさん!ありがとう!。」


 元気よく言うシエンちゃん。

 それをニコニコして見ているアウロ夫妻は、なんだか孫でも見ているような、そんな目をしていた。

 みんなで朝食となったのだが、賑やかであったかい朝食だった。


「このスープ美味しいですねー!。」


「そうであろう!我も手伝ったものだ!我ながら美味しいのだ!。」


「あらあら。ほほほほ。」


「うむ、本当にいい味ですよ、シエンさん。」


「そうであろう、そうであろう!料理上手のおかみさんでアウロさんも良かったな!。」


「ですって、あなた。」


「ごふっごふ。の、のどに、ごっふ。」


 そう言って水を飲むアウロ氏。

 みんなが笑顔になっている。

 しかし、驚いたのはあのシエンちゃんが、おかみさん、アウロさん、と呼んでいる事だった。

 どうも、俺がそう呼んでいるのに習ったようだが、あの、我は龍族の王にして空を統べる赤龍の長エンの娘シエン也!でお馴染みのシエンちゃんがねえ。やはり高等生物は伊達ではない。感受性も豊かだし、人生観というのか龍生観と言うのかわからんが、世界の捉え方にも非常に好感が持てるしな。もっと、人間社会に降りた時に騒動起こすような感じかと思っていたのだが、実に理知的だ。これなら安心できるな。

 そうして、楽しい朝食も終わりそろそろお暇することとなる。


「それでは、大変お世話になりました。」


「お世話になった!。」


 俺とシエンちゃんは挨拶をする。


「また、いらして下さい。」


「賑やかで楽しかったですよ。また寄ってくださいねえ。」


 アウロさんとおかみさんがそう言ってくれる。


「ええ、それでは、また!。」


「また来るぞー!。」


 俺たちはふたりに手を振り馬を進めた。


「楽しかったな!な!。」


「シエンちゃんはずいぶん馴染んでいたなあ。もっと、我は龍なり!ひれ伏せ人の子よ!とかそんなかと思ったよ。」


「トモちゃんは、我を何だと思っているのだ。何度も人里に降りていると言ったろう。人との関わりは浅くないのだ。まあ、それでも、最初はトモちゃんの親友夫妻だからと思っておったぞ。だが、すぐに彼らの人柄が見えてきてな、さすがはトモちゃんの親友よな。弟の目も確かだったという事だな。今度会ったら褒めてやろう。」


 俺たちはマキタヤからノダハへと馬を走らせる。

 俺とキットの相性は良いようで、息もあってきた。


「トモちゃんはみるみる上達するのう。見ていて面白い。キットも喜んでおる。」


「そう?嬉しいねー!。」


「ナーハンもトモちゃんの事を見直しているようだ。」


「へー、そりゃ、どーも。」


 俺はナーハンに言う。

 喋っていると時間が過ぎるのが早いものだ。

 俺たちはノダハに到着した。

 まずは事務所に戻る。


「ただいまーー!。」


 扉を開けて中に入る。


「お帰りー!。」


 いつも元気いっぱいなマギーが出迎えてくれる。


「誰?こっちのきれいなお姉さんは?。」


 ベスが俺に言う。


「こちらはシエンさん。旅先で知り合って世話になったんだ。」


「何を急にくすぐったい!我の名はシエン!トモちゃんから皆の話は聞いておる!会えて嬉しいぞ!それから、きれいだと褒めてくれてありがとうな。」


 そう言ってベスの頭を優しく撫でるシエンちゃん。


「あと、トモちゃん!いつも通りシエンちゃんと呼べばよかろう!。」


「そうだな。なんか、かしこまってしまった。いつも通りでいくか。」


 頭を撫でられたベスはポーっとなっている。


「ベス?どうしたの?。」


 マギーが聞く。


「えっ?ああ、マギー。どうしたの?。」


「どうしたのじゃないでしょ、ポーっとしちゃって。」


「うん、なんだかお姉さんがきれいだから。ポーっとしちゃった。」


「くふふふふ。聞いたかトモちゃん!。」


「ああ、聞いてたよ。」


「トモちゃんの言っていた通り、素直でかわいい子供たちじゃないか!気に入ったぞ!。」


「あら、トモさんおかえりなさい。」


「お帰りトモ兄!。」


 奥からケインとシシリーが出てくる。


「ただいま!他のみんなは?。」


「宣伝班は午前中は噴水広場で客寄せの仕事をしてるから、もうすぐ帰ってくるよ!。」


 ケインが言う。


「あとのみんなは、今、寝室を作っていますわ。」


 シシリーが言う。


「寝室?。」


 なんてやり取りをしていると、賑やかな声がして宣伝班が帰ってきた。


「最近フィル、セイラちゃんの方ばかり見てないか?。」

「そんなことはない!何を言っているんだアランは。」

「ねえ、シン、今度の休み暇?。」


「みんなただいま!。」


 帰って来たみんなに声をかける。


「トモ兄ちゃん!。」


 シンが駆け寄ってくる。


「お帰りなさいませ。」

「御無事で何よりですわ。」

「お帰りなさーーい!。」


 みんなが迎えてくれる。


「こちらの気品あるお姉さまはどちら様ですか?。」


 セイラが尋ねる。君も十分気品があるよ。


「よし!みんなに紹介したいから、隣にいる連中も呼んできてくれないか。」


 という事で、みんなに集合してもらい先ほどのようにシエンちゃんを紹介した。


「みんな、トモちゃんからよくよく話は聞いておる。よろしくな!。」


 元気よく手を前に挙げて言うシエンちゃん。気品はどこ行った。


「よろしくお願いします!。」

「シエンお姉さま!。」

「わーーい!。」

「賑やかになりそうですわ。」

「きれいなお姉ちゃんだなーー!。」


 みんな口々に歓迎の意を表してくれる。

 それをニコニコしながら聞いているシエンちゃん。


「そういえば、寝室って、」


「すいませーーん!荷物お届けに参りましたーー!。」


 俺の質問は突然の来訪者の声にさえぎられる。


「なにかしら?。」


 シシリーが入り口のドアに向かう。


「あっ、毎度!えーと、クルースさんからのお届け物です。こちらにサインをお願いいたします。」


「ああ、そーだ。お土産!お土産があったんだ!。」


 俺は入口へ行きサインをする。


「よーし!いっぱいあるから!みんな、中に入れるの手伝ってくれ!。」


「やったーー!。」

「なにかな?なにかな?。」

「わー!お土産だって!。」


 みんなが沢山の荷物を持って入る。


「みんな、あけていいぞ!みんなで仲良くわけるんだぞ!。」


「ありがとうございまーーす!。」


 みんなは袋を開けて、服や靴や帽子、横笛やケーナとか尺八みたいな唇を添えて吹くタイプの縦笛、卵サイズの木の実で造られたマラカス的な打楽器、竜騎兵人形、貝殻を加工して造られた首飾りやブローチ、木で作った大聖堂のミニチュア、レインザー城などが書かれたポストカード的な物、などなど、俺が買ってきたお土産を並べて誰がどれを貰うかワイワイとやり始めた。


「くふふふ、親の目をしておるな、トモちゃんは。くふふ。」


「そう?そうかもな。」


「あの、シエンお姉さまに。」


 そう言ってベスが持ってきたのは貝殻を加工したカメオブローチで細長いスティックを持った妖精の女王が刻まれていた。


「これを我に?。」


「うん。お姉さまに似ていたから。」


「いいのか?。」


「うん。」


「ありがとうな。」


 満面の笑みで優しくベスを撫でるシエンちゃん。


「シエン姉さまはしばらく泊まっていって下さるんですか。」


 顔を赤くしてシエンちゃんに聞くベス。


「うん、厄介になろうと思っている。」


「きゃーーー!嬉しいです!やったーー!今、寝室作ってるんです!一緒に寝てくれますかーー?。」


「あ、そうだ!それ!寝室!それ聞きたかった!なに?何作ってんの?。」


 盛り上がってるベスに俺は聞いた。


「今、みんなで作ってるんです!男子の部屋と女子の部屋を分けようって言って!。」


「へー!すごいじゃん!見せて貰っていい?。」


「うん!お姉さまも!来てください!。」


「よしよし、わかったわかった。」


 ベスに手を引っ張られるシエンちゃんは嬉しそうに返事している。

 俺とシエンちゃんは隣の部屋へ案内される。


「おおっ!スゲーじゃん!これ、みんなで作ったの?。」


「すごい?。」


 サラが小首をかしげて言う。


「おう!。」


 ニッコリ笑顔になるサラ。

 以前は学校の教室ほどの広さのひとつの部屋だったものがトビラを開けて入るとパーティションで区切られて中央が廊下のようになっている。


「これさあ、シエンちゃん!前はただのひとつの部屋だったんだよ!この子たちだけでここまでやったんだってさあ!。」


「わかったわかった。泣くなトモちゃん!。」


「いや、泣いちゃいないけど。でも、すごいよな、な?。」


「ああ、たいした子供たちだ。」


「こっち、女の子の部屋。見る?。」


 サラがシエンちゃんに言う。


「いいのか?。」


 シエンちゃんが聞く。

 コクリとうなづくサラ。


「お姉さま、こちらです!どうぞどうぞ!。」


 手をつないで引っ張るベス。


「こっち?。」


 それを見てか反対側の手を取るサラ。


「モテモテだなシエンちゃん。」


「であろう?。よしよし、一緒にいこうな!くふふふ。」


 嬉しそうなシエンちゃん。良かったよ本当に。


「トモ兄ぃはこっちを見てよ!。」


 カイルが俺に言う。


「おう、ありがとう!では、見せて頂きますか!おじゃましまーす。」


 俺は男の子達と一緒に部屋に入る。


「おおーー!いいじゃん!いいじゃん!部屋っぽくなってるじゃないの!。」


 部屋の中はベッドが7つ。各ベッド脇には小ぶりな物入れが置かれている。そして部屋の端にハンモックが2つ。ハンモックのそばにも小ぶりな物入れが置かれている。


「あのハンモックは?。」


「あれは、シンとジョンだよ。ふたり共そっちのが良いってさ。」


 答えるカイル。


「いいじゃんよーー!こっちのがいいよ!みんなもハンモックにしたらいいのに!。」


「いや、ベッドで寝れるならベッドの方がいいだろう。」


 相変わらず真面目なスチュー。


「なんだよ、楽しいのに!な?シン。」


「そうだよね!楽しいよね!。」


 楽しいなら結構。


「切れないようにちょくちょく面倒見てやりなよ。寝てる最中に落っこちたら大変だからね。」


 俺はそれだけをふたりにアドバイスした。

 廊下に出ると女子部屋からは楽しそうな声が聞こえてくる。


「・・・の事が・・なんですよーー!。」

「きゃーーー!やめてよーー!・・!。」

「きゃはは!そうかそうか!で・・・。」

「・・・本当にシエンさんはキレイですねうらやましいわーー・・・・。」

「キャッキャ・・・だって!・・。」


 まーー、かしましいこと。楽しそうで良いけど男の立ち入れる場所ではなさそうだなこりゃ。

 と言うわけで我々男衆は作業場に戻って色々と話しをするのだった。

 俺は今回の依頼をかいつまんで聞かせた。


「すっげーーー!カッコいーーっ!。」

「ハティちゃん遊びに来るの?。」

「悪者はどうなったの?。」


「はいはい、順番にな。ハティちゃんは落ち着いたら遊びにおいでって言ってあるからね。きっと遊びに来てくれると思うよ。悪者たちはこれからそれ相応の罰を受けることになると思うよ。かなり証拠が上がってるみたいだしね。」


「へーーっ!さすがトモ兄ちゃんだ!。」


「今回は助けもあったしな。」


「スウォン記者でしたか。オゴワナリヤ・タイムズ誌の記者とは、凄いですね。」


「おっ!知っているのかキャスル!。」


「はい、王国1番の新聞社ですから。オゴタイの会長は国王とも懇意だと聞きます。」


「へーー。そんなになんだ?まあ、スーちゃんは確かに凄かったな。」


「そんなにですか!。」


「ああ、気は優しくて勇気がある。そんな男だったよ。」


「是非、会いたいものです。」


「スーちゃんも敏腕記者だってんであっちこっち飛んで歩いてるからね。近くに来た時は寄ってくれって言ってあるし、きっと会えるよ。」


 そんな話しをしていると隣の部屋からワイワイ、キャイキャイと女の子達の声が聞こえてくる。

 隣の部屋から入ってきたシエンちゃんは、両手に花どころか身体中に花、本人も花、花だらけでやって来た。


「うっわ!大人気やん!。」


 俺は驚いた。


「くふふふ!可愛い子らではないか!よく頑張っておるし!みんな気に入ったぞ!寝床まで作ってくれたぞ!。」


「そーなの?。」


「はい、シエンさん用にベッドを用意しました。」


 そう答えるのはエミーだった。


「使っていないベッドがふたつありましたからね。」


 セイラが答える。


「ははーん。シンとジョンのだな、さては。」


「大正解!。」


 マギーが答える。


「今日は女子会なんだからねーーーお姉さま!。」


「ねーーー!。」


 ふひゃはは、ベスに言われて同じように返すシエンちゃん。

 なんだなんだ、もうすっかり仲良しさんか。

 これは、益々女の子たちが強くなりそうだぞ。


「頑張ろうな!。」


 俺は男の子たちに言うがみんなキョトンとしていたのだった。


「で、シエンちゃんはこれからどうする?。」


「我も冒険者登録がしたいぞ!。」


「そうか、じゃあ一緒に行くか。」


 という事で俺とシエンちゃんは冒険者ギルドに行くことにしたのだった。

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