贈り物って素敵やん
アウロさん宅へ向かう前、お店の中で俺は気になるものを発見した。
「アウロさんこれは。」
「ああ、これはミスリルで作ったカチューシャですな。」
見る角度、光の当たり方によって色が変化する、まるで前世界の分光性塗料のような外観の金属でできたカチューシャ。
ああ、これは良い、シエンちゃんに良く似合うだろう。
「これはいか程ですか?。」
「これは、希少金属のミスリルで作ったものです。私があつらえました。わが工房の技術力を示すためのもので売り物ではないのですが。」
「そこを押して値段をつけるとしたら?。」
「ウーム、難しいですな。」
「手付でこれだけ、後で同じだけ持ってきます、いがでしょうか。」
俺はそう言って持っているだけの現金、50万レインを手渡した。
「はい、他ならぬクルースさんですから。これでお譲りしますよ。」
「いいんですか?。」
「ええ、結構です。」
「ありがとうございます。」
俺は頭を下げた。
「では、こちらはどうされますか?贈答用に包みますか?。」
「いや、そのままで良いので今、受け取っても良いですか?。」
「ええ、どうぞ。」
アウロさんから受け取ったミスリル製のカチューシャを手に俺はシエンちゃんを呼ぶ。
「おおい、シエンちゃん。」
「なんだ?。」
「ちょっと来てくれな。」
「なんだ?。」
近づいてくれたシエンちゃんの頭にそのカチューシャをつける。
「ほい、贈り物。」
「これを我にか?。」
お店の大きな鏡で俺が髪につけたミスリルカチューシャを眺めるシエンちゃん。
「うん。約束の贈り物。どう?気に入ってくれた?。」
「うん。」
泣きそうな顔で小さくうなづくシエンちゃん。
「おいおい!どうした!なにをそんな顔してんだ!。」
「こんな素敵な贈り物は初めてだ。心が震えた。」
うつむいて赤くなるシエンちゃん。
「気に入ってくれたなら、俺も嬉しいよ。」
「うん。」
シエンちゃんが小さくうなづく。
「ふふふ、さあ、我が家へ行きましょう。おもてなしさせて頂きますよ。」
アウロ氏が明るい口調で言ってくれる。
「行こう。」
「うん。」
そう答えるシエンちゃんの笑顔は眩しすぎて、直視するのが難しかった。




