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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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久しぶりって素敵やん

 「なんですかーまた、いったい?そんな真剣な表情されてー?。」


 俺はそれまでの軽妙な調子のケリクさんが急に真剣モードになったもんで、思わずおちゃらけた感じになってしまった。


「いや、これは失敬。そんな重大事ではないのです。実はクルースさんがチルデイマ学園で教員をされているという事で、折り入って相談したい事があるんですよ。」


「はあ、聞くだけなら聞いてみましょうよ。なんでしょうか?。」


「すいませんな。私の知り合いがモリコロ村で小さな学校の教員をしてるんですけどね。と言っても、村の子供たちを相手に読み書き計算を教える小さな学校で教員もそいつだけなんですけどね。子供たちも本当にすれてない素直な子達なんですが、最近になってどうも子供たちが変化してきたと。そいつは子供たちの事がわからなくなったと、そう言うんですね。」


「はあ。」


 うーん、それは思春期ってやつでは?もしくは、先生が壁に当たったって事か。

 どちらにしても、俺が出る幕じゃないんじゃ。


「ああ、クルースさん、その顔は、なんで自分にって思いました?。」


「ええ、正直そう思っています。自分は教員と言っても特定の分野のみ扱う特別講師ってやつでしてね。」


「聞いてますよ。しかしフライリフ君達を見れば、先生としてどういう方なのかはわかりますよ。実際、彼らは馬術クラブで顧問はクルースさんだという事で伺ってますしね。彼らがクルースさんの事を語る時、何とも言えないものを感じるんですよ。慕っているような頼りにしているような、面白がっているような尊敬しているような、一口じゃ言い表せないものを感じましたよ。これは、是非ともお力をお借りしたいなと、そう思ったんですよ。」


「いや、お気持ちはありがたいんですが、買いかぶりすぎですよ。俺とあいつらの関係も、教師と生徒ってよりも年の離れた友人が近いんじゃないかなと思いますよ。実際、その件はもっと教師としての経験豊富な方に任せた方が良いのではないでしょうか?。」


「いいではないか、引き受けてみて自分の手に余るようならしかるべき助けを呼べばよかろう。」


 話を聞いていたキーケちゃんがそう言う。


「これはトモトモにはちょうど良い依頼かも知れませんね。トモトモは自分の力を信じていないところがあります。謙虚なのは良い事ですが、過ぎるとあなたを信じる人たちを貶める事にもなるのです。このお話がどんな問題をはらんでいるのか現時点ではわかりませんが、わたしはトモトモの力を信じてますよ。」


「ふむ、アルスの言いたいことは分かる。確かにトモちゃんは自分の力を見くびっている所があるな。ある局面ではそれも良いが、時と場合によっては自分も他人も見殺す事になりかねない。相手が強大になればなるほどその確率は上がる。最近はどうも相手に大きな組織が見え隠れし始めてきている。現状、そいつらと真っ正面から敵対する事にはなってないが、将来、そうなる可能性もある。そうした場合、トモちゃんが守らなくてはならない人が沢山いるのを忘れちゃいけないぞ。トモちゃんに限らずひとりでやれる事なんてのは、限られている。自分が戦っている間、離れた場所に居る大切な人は別の誰かに守ってもらう事になる。自分の力を信じられないなら、その誰かの事も信じられなくなるぞ。トモちゃんは、その依頼を受けるべきだ。」


 なんとまあ、キーケちゃんだけじゃない、アルスちゃんも、そしてシエンちゃんまでもが俺にこの依頼を引き受けるべきだと言う。

 そして、三人とも俺の事を本当に考えて、そう言ってくれるのがわかる。

 確かに、敵がシビアになればなるほど俺ひとりの力では対処できなくなってくる、そうなれば必然的に多くの人に力を借りる事になろう。

 そんな時に俺が力を貸すに値しない人間では、守りたい人も守れなくなる。

 だいいち、そこまで仲間が言ってくれているのに引き受けないんじゃ男が廃るってもんだ。


「みんな、ありがとう。ケリクさん、この依頼、引き受けさせて頂きます。」


「ありがとう、クルースさん、みなさん。」


「きひひ、トモよ頑張って来いよ。」


「え?キーケちゃん一緒に来ないの?。」


「あたしは武術クラブとケリフバイの警備商会と次の演劇のための打ち合わせをしなきゃならん。」


「てことはアルスちゃんも?。」


「はい。勿論わたしもです。」


「シエンちゃんは?。」


 俺は焦ってシエンちゃんに聞いた。


「料理クラブは裁縫クラブと一緒に手伝いをするからな、我もその打ち合わせをせねばならん。」


「てことは。」


「うん、トモちゃん頑張って来い!。」


「そういう事になりますね。」


「きひひ、もとよりトモに来た依頼であろうよ。」


「よろしくお願いしますね、クルースさん。」


 ムムム。

 なんか、そんな流れだったから、薄々覚悟はしてたけど。

 それにしても、久しぶりのひとり依頼だ。

 いっちょ、覚悟決めて受けますか。


「はい、できる限りの事はさせて頂きます。」


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