旅の終盤って素敵やん
馬車の上でオウンジ氏が俺に言う。
「あの者たち、ひとりくらい連れてきたほうが良かったでしょうか?」
「いやあ、あいつらプロでしょ。連れてって下手に死なれても気分悪いでしょ」
「確かにそうですね」
「クルース殿の言う通りなのである」
「おっ!スーちゃん!さっきはカッコよかったぜー!」
「その件はあまり触れないで頂けるとありがたいのである。それよりも奴らを下手に捕まえると面倒なことになるのである」
「やっぱり?」
「そうなのである。まず捕らえられた者は必ず自死を選ぶのだがその際に周りを巻き込もうとするのである。体内に爆発物を仕込む者もいるのである。本人の意識を失わせて連れて行っても他のアサシンがその命を狙いその執拗さは依頼された仕事以上と言われているのである」
「ひゃー、おっかねーなー」
「だからこそのプロなのである。それが知られているからこそ信頼され恐れられているのである」
「それじゃあ、発見者とアサシンの繋がりを暴こうってのも容易じゃないね」
「まあ、無理であろう」
「スーちゃん大スクープだって喜んでなかったっけ?」
「喜んでいたのである」
「なんでよ?」
「暴くことはできぬが体験記として書くことはできるのである。吾輩の名前で記事を出せば、団体名を伏せていてもこれまで書いた記事と合わせて考えれば賢明な読者諸氏には言わずもがな、なのである。寧ろ伏せたほうが興味をあおるのである」
「スーちゃんもなかなかやりますなぁ」
「そんな、人を策略家のように言わないで欲しいのである!」
そんなやり取りをしているうちに我々はネムツマに到着したのだった。
街に入るとすぐに衛兵さんに身元を確認されて、詰め所まで案内される。
詰め所内の談話スペース的なソファーに座るよう促され、我々はその通りにした。
対応してくれたのは衛兵隊の隊長さんで、やはり腰の低い方であった。
我々は、橋で襲撃を受けた経緯を説明するとすぐ部下に確認させるとの事。
その間に事件の進捗状況を伺う。
オカシスの街で大量の吹き矢が発見された事。
吹き矢には痺れ薬が塗ってあり拾った子供が被害にあっている事。
また、恰幅の良い男性が大量の小袋を持ち歩いている姿が目撃されている事。
身なりの良い小男が小袋を配っている姿も目撃されているとの事。
どちらもその辺りでは見かけぬ顔であり人相書きを作成中である事、などが説明された。
そうしてる間に先ほど偵察に行った衛兵さんが戻って来て橋が破壊されている旨を報告していく。
破壊に用いられたのは、一般では入手が難しい高威力の火薬だそうでその入手ルートを洗い出すという事だった。
現在の進捗はこの辺りだが、明日の朝にはまた進展があるかも知れないので出立前に今一度お寄りくださいと言う事で我々は詰め所を出て教会へ向かうことにした。
ネムツマ教会に行くと、部屋と食事を用意したのでゆっくり休まれてくださいと言われた。
用意された食事は質素ではあったが温かみがあり、味付け濃いめで俺は非常に気に入った。
我々は御馳走になった感謝を述べてから用意された部屋へ行く。
「今晩はゆっくり休めそうですね」
「衛兵さん達も今晩は教会周辺を重点的に巡回すると言っていたのである」
「今日は本当に疲れました。休みましょう」
オウンジ氏は実際にアサシン共と戦いの渦中に居たからな、まあそうでなくとも昨日の夜襲や連日の襲撃で気も休まらないし疲労もたまるだろう。
俺もスーちゃんも昨日は良く寝れてないし、と言うわけで本日は就寝となった。
そうして翌日、目を覚ます。スッキリした目覚めに疲労もすっかり抜けている。若いっていいねえ。
「もう起きたであるか」
スーちゃんも目が覚めたようだ。
「ああ、今、起きたとこ」
「いやあ、久しぶりに安心して寝た気がするのである」
「どんだけ危険に囲まれて生きてんだよ」
俺は突っ込んだ。
「いやいや、クルース殿も同じであろう」
「俺は普通に生きてきたからこんな事は初めてですって!」
「またまた、御冗談を。それを聞いたらアサシン共が血相変えてクルース殿を狙いに来るであろうなあ、ふっふっふっふ、いやあ、聞かせてやりたいのである!」
「勘弁してよーー。もう、やだよあいつらと絡むの。て言うか基本的に人と戦いたくないんだからこっちは」
なんてやり取りをしているとノックの音が聞こえる。
「失礼します、衛兵の方が来られております」
「わかりました、今行きます」
俺は返事をしてオウンジ氏に声を掛ける。
オウンジ氏もハティちゃんも目を覚ましていたようで、皆で一緒に荷物を持って部屋を出ることにした。
用意された部屋を出て礼拝堂に行くと衛兵さんが待ってられて、食事は信頼のおける店にて監視の元作ってもらった物が用意してあるのでそちらでどうぞ、と案内してくれる事になった。
衛兵隊詰め所の食堂に案内され、用意された朝食を我々は頂いた。
食後に会議室的な部屋に案内されて、進捗状況と今後の話しとなった。
今までの襲撃で残された証拠品、目撃談、スーちゃんの提出した資金の流れが書かれた手帳、高威力火薬の入手ルートなどから襲撃者包囲網が着々と構築されていっているとの事を聞かされて我々は強くうなづきあった。更には王国領との境まで護衛してくれると言う。
それと言うのも、領主都オカシスでの蛮行に事態を重く見たタスドラック領領主ハウマヤ・ダスドラック伯は王国領境までの護衛に海上部隊ズィール、ワイバーン部隊サンダーエース、陸戦部隊サンダーキャットの投入を決断したのだとか。こりゃ凄いね。大統領のパレードだよこれじゃ。
というわけで安心はできるものの物々しい出発となったのだった。
道中、俺はスーちゃんから風魔法サウンドコレクションを詳しく教わることにした。
「すぐに吾輩より上手になるから教えると心が折れるのである」
「まあ、そう言わないでよ。スーちゃんの可能性を広げると思ってさ!お願い!」
「教えないとは言っておらぬのである。では上空のワイバーンにサウンドコレクションを向けて見るのである」
俺はスーちゃんのやっていることを真似てみる。
「こんな感じ?」
「それでは広げすぎなのである。吾輩は風を糸の様に細くしてそこに音を伝わらせる感じでやっているのである」
「なるほどなぁ、やっぱスーちゃん教え方上手だわ」
「おだてても何も出ないのである」
「スーちゃんおだてりゃ空を飛ぶってね」
「もう、教えないのである」
「冗談だって!ゴメンゴメン!」
「吾輩も冗談なのである」
「スーちゃーん。冗談は下手ね」
「吾輩もそう思うのである」
そんな感じで道中スーちゃん先生によるサウンドコレクション講習を受けた俺は、上空を飛ぶワイバーン部隊の衛兵さんの雑談を羽ばたき音に邪魔されず 聞くことができるくらいには上達したのだった。
スーちゃん先生のおかげだよと言ったら、習得時間の短さは置いておくとして常識の範囲内の上達で良かったと安心されたのだった。
更に道中、オウンジ氏からモミトスの発見者についての内情を聞くこともできた。
教団の指導者である御統治様は10人おり、10人委員会とも呼ばれていてそれぞれが○○委員会長と名乗っている事、エルダーとしてやり手だったオウンジ氏は彼らと直接会ったことが何度かある事、また教義について、教義を熟知したうえで棄教するものを目を背ける者、背目者と呼びそれは教団内部では最大の侮蔑的呼称であることなどを聞いた。
「まあ、私などはまさに背目者ですね」
「それは誉め言葉ですよ。目を背ける者ではなく背後にも目が行き届くもので背目者ですよ」
「上手い事を言われますなあ。感心しましたよ。背後にも目が行き届くから背目者ですか。ふふふ、まだまだ私は発見者の教えが抜けきってないようですなぁ」
「それはそうですよ、オウンジさんが半生を捧げたのですから。しかし、その経験は全くの無駄ではないはずです。この事件が上手く運べば教団は取り締まられて大きな打撃を受けるでしょう。そうなれば多くの信者が離れるはずです。離れることができてもその教義から中々抜け出せなかったり、信じることのできる物が見つからず自暴自棄になったり、心を壊す人も少なからずいるはずです。オウンジさんの経験はそうした人の助けになるはずですよ」
「そうでしょうか」
「そうですよ」
「そうですか」
そう言ったオウンジ氏の横顔は少しだけ肩の荷が下りたような、いい感じに力の抜けた表情に見えた。
さて、流石にこれだけの護衛が付いた状態で襲撃などできるわけもなく、何事もなく我々は王国領へ入ることができた。
ここまで護衛してくれた皆さんに感謝をし手を振って見送る。ハティちゃんが両手を振って見送る姿は屈強な衛兵隊の皆さんにも微笑ましく映ったようで、手を振り返してくれたものだった。
なんて気持ちのいい連中だろう、なんてあんまり感傷にふけっていると、ハティちゃんに昔からあの方たちを知っていた気がしますなんて言われたら話が終わりかねないから正気に戻ろう。
王国領内では王国近衛兵団より騎兵小隊と火器武装が許された竜騎兵隊が護衛についてくれることとなった。
竜騎兵って!まあ、ドラグーンだよな!かっこいいよ!別にドラゴンに乗ってはいないけどね。
聞くところによると肩から吊るしている長い筒は小竜筒と呼ばれており、まあ鉄砲みたいなもののようだ。
詳しくは教えてもらえなかったが、使用する者の魔力で火薬の爆発をブーストさせて鉄の玉を撃ち出すのだとか。連射もできるそうでこれは敵が持っていたら大変だと思ったが、火薬同様に製造も販売も国の認可が必要で厳重に管理されており、民間人の所持は認められていないとの事だった。それはひと安心だよ。
そうして王国領ショートウハの街を過ぎ、そこから王都手前の街ザオキヤを抜けてレインザー王国王都オゴワナリヤへ到着となる。
ここまでの道中も王国近衛兵団相手に狼藉を働くものなどいようがなく、我々はあっけないほど順調に王都西大聖堂に到着。後はランツェスター首座司教を待つのみとなった。
礼拝堂で待っていると奥の扉から白い祭服を着た初老の男性が入って来る。
「ランツェスター首座司教のおなりである」
お付きの者が言うと、ここまで護衛してくれた近衛兵さんも含めて皆が両膝を地に着き頭を下げ両の手を合わせたので俺もそれに倣った。
「皆さん、ご苦労様でした。どうぞお直り下さい」
そう首座司教が言い皆は立ち上がる。
「大変な旅路だったと聞いています。これから彼らと内密な話しをしなければなりません。他の方は席をお外しください」
首座司教は近衛兵やお付きのものに人払いをするように指示した。
近衛兵さんが一瞬俺を見た。俺はサウンドコレクションを使う。
そうして礼拝堂内には我々4人と首座司教のみとなった。
「よくぞここまで無事に来てくれました。もう安心してほしい。さあ、もっと近くに来てください」
近づこうとする皆を手で止め俺はサウンドコレクションを維持したまま単身近づく。
「いやあ、しかし、モミトスの発見者という団体はあれこそ神を愚弄する偽りの団体ですね、御統治様こそが真の背目者ですよ」
その瞬間首座司教だったものの額に目が現れたが直後に俺はそれを指で突いてやった。
「ぎぁぁぁぁぁぐぅぅぅぅぅ」
首座司教だったものは転げまわりみるみるうちに姿が変わり、肥え太り脂ぎった初老の男になった。
「御統治様だ!」
オウンジ氏が言う。
「本当ですか?」
「間違いありません。言葉発見委員会長のゲス・ドブレです。何度か会っていますから間違いありません」
「また、大将が直々にお出ましとは」
ドブレの叫びに近衛兵や付き人が駆けつける。
事態を説明するスーちゃん。
捕縛されるドブレ。
室内があわただしくなる。
「大変です!こっちに来てください!」
奥の部屋から声がして近衛兵さん達が駆けつける。
「無事です!拘束されていたようです!」
奥の部屋から本物の首座司教が発見されたようで近衛兵さんが初老の男性に手を貸している姿が見えた。
「しかし、王都の大聖堂で首座司教を拘束し化けるとは、よほど切羽詰まっていたようですね」
「恐らくドブレは御統治様たち10人委員会から責任を被せられたのでしょう。彼らの責任逃れと責任の押しつけは一流ですからね。ある意味ドブレも被害者なのかも知れません」
そうオウンジ氏が答えてくれる。
「しかし、クルース殿はなぜわかったのであるか?」
そうスーちゃんが問う。
「そりゃスーちゃん先生直伝のサウンドコレクションですよ」
「それで本物と偽物を見分けることができるのであるか?」
「ああ、できたねぇ。心音を聞いてたからね」
「心音であるか?」
「そう。御統治様こそ真の背目者だと聞いた時の奴の心音ったらなかったよ。怒り心頭って感じでさ。短気すぎるんだよ、修行が足りないんだよな、大体あんな脂ぎって太っちゃってさ、贅沢な暮らししてるからだろ信者から巻き上げた金で」
「ふふ、ふふふふっ」
「しかしあれ何だったんだろ額の目」
「なんだ、クルース殿は知らずに攻撃したのであるか?」
「うん」
「まったく、クルース殿は・・。まあ良い、あれは邪法であるな」
「邪法?」
「そうである。苦痛を与えられた人間から発生する良くない物を、魔法を使う時のように体内に取り入れて練りこみ溜めるのである。それを続ける事で邪な開眼が起きるのである」
「邪な開眼ねえ」
「そうである。道の探究者がたどり着くとされる境地、それの真逆なものである。いずれもそこに至るのは容易ではないのである」
「まあ、あの教義ならば底辺信者は苦悩と苦痛にまみれているだろうから、多くの信者を集めてその前で説教かなんかしながら取り入れることを続ければ割と簡単に集まりそうだな。頻繁に大勢の信者を1か所に集めたりしてたんじゃない?」
「してますね」
オウンジ氏が続ける。
「普段顔を合わせることのない遠い地域に住む信者が知り合い、集まった信者達の数を見て益々信仰を強めるためと称して定期的に1か所に集まるようにしてましたね。遠方から来る信者はその路銀が生活を圧迫するため益々苦しんでいるのが実状でしたけどね」
「更には、そのための施設建設と称して寄付金を集め、実際の建設は信者に無料でやらせて余剰寄付金を御統治様たちの私財にしている、そうして建てられた建築物も昨今の教団の懐事情から売却されその売却金の流れも同様だとの情報すらあるのだ!」
いつになく強い口調のスーちゃん。しっかし、こういう連中のやることってどこに行っても変わらねーなー。うんざりするわ。
「まあ、話しはそれたが邪法であるな。吾輩も実際見るのは初めてなのだが、その力の源は額の目であり弱点も同じであると、そこから発せられる光を見たものは魂を奪われると聞いているのである」
「魂を奪われるってなによ」
「相手の言う通りになるらしいのである」
「フーム。それぐらいは別に邪法じゃなくてもできるんじゃないの幻術とか」
「確かに相手の意思をある程度操ることは魔法でも可能なのである。しかし、それは環境を整え術者も揃えてやっといくらかの効果を得られるもので、クルース殿が使われるようなものはちょっと例外なのである。まあ、それにしても持続性は低いし効果範囲も限界があり、例えば死ねとか殺せなんて命令はどれだけ術が深くかかっていても聞くものではないのである」
「へー、そうなんだ」
「まあ、それでもやりようはあると言えばあるのだがそれは別の話しなのである」
「なんとなく察しはつくけど続きをお願い」
「ムム、少し気になる言い方であるな。よければ察した事を聞かせては貰えぬか」
「えー、別に構わないけど、例えば崖っぷちにいる奴にその先も道が続いているように思わせて進ませるとか、どうよ?」
「ムムムム、まったくもってクルース殿は意地が悪い。知っていたのであるな」
「まあ、似たような話をね」
「ふー、気を取り直して邪法であるな。これはそうしたことわりを越えると言われているのである」
「つまり言葉で人を殺せると」
「そう言う事である」
「しかしあの場で俺たちを全滅させてどうやって逃げるつもりだったんだ?片っ端からその邪法で殺しまくって逃げるつもりだったのかね」
「それは無理であろう。そんなことが可能なら小国の王くらいにはなれるのである。あの力はことわりを越えるために、溜めた悪いものを膨大に使うのである。恐らくは協力者により逃走経路が確保されていたか、もしくは首座司教も含めて我々のうちの誰かの犯行に見せるような殺害方法を考えていたのか、そんなところであろう」
「おおっ!探偵としてもやっていけるんじゃない?」
「ふふふ、まあ、これでもオゴタイの誇る敏腕記者であるからな。それくらいの推測はできるのである」
バタつく礼拝堂内で腰掛けてそんな話しをしている我々に近衛兵さんが話しかけてくる。
「失礼しました。スウォン記者御一行様ですな。当事者様方を放っておいてしまって誠に申し訳ない。ひとまず今日は来賓館でご宿泊願う段取りが付きましたのでご案内いたします」
そうして案内されたのは近衛兵に守られた前世界でいう迎賓館だろう。
周囲を鉄のフェンスで囲まれた門を通ると大きな噴水がありその向こうに見えてきたのはまるで宮殿。というかまんま宮殿。敷地内も近衛兵たちが巡回している。
宮殿の馬鹿でかい玄関前に馬車を誘導される。なんだか場違い感が半端ない。
馬車と馬はこれも来賓用の厩があるのでそちらで預からせていただきます、とこちらもプロの執事感が半端ない初老の男性に丁寧に説明される。
「いやぁーすんませんです。へへへ」
「よろしくお願いします」
「リッキーの事、よろしく頼むのである」
慣れない上質な接客につい卑屈な対応をしてしまう俺。
フラットな対応のオウンジ氏といつも通り堂々としているスーちゃん。
ドアが開けられ中に案内される我々一同。
「わぁーーー!!!お城だお城だ!」
ハティちゃんがテンション上げるのも無理はない、カーペットの敷かれた玄関ホール、正面から両側へ広がるでかい階段、高い天井とゴージャスなシャンデリア、マーブル模様のでかい柱はマジもんの大理石なのか?天井と壁に施された意匠も美しくそうしたものに詳しくない俺でも思わずため息が出るほど、その豪華さに圧倒され少し後ろに下がってしまうほどだった。
「はぁーー、こりゃスゲーや」
「こうした所は初めてであるか?」
「そりゃそうだよ。普通そうそう来れないでしょ」
「吾輩は取材で何度か訪れたことがあるのである」
「はひゃー、左様ですかい。オウンジさんは?」
「私もこちらへは初めてですが、発見者のビエイナ本部も似た造りでして、そちらへは昔何度か」
「ほへー、ハティちゃんは?」
「ハティは初めて!ハティお姫様になったみたい!」
「ハティもビエイナ本部施設に軟禁されておりましたから、初めて見る訳ではないでしょうがきっと辛い記憶だったからでしょう」
小声で俺とスーちゃんに言うオウンジ氏。
「同じ風景でも一緒に見る人でその景色は変わるのである!」
「おっ!詩人だねー、大好きな爺ちゃんと助けてくれた英雄スーちゃんと一緒だもんなあ」
「おもしろトモちゃんも一緒なのである!」
「みんな一緒!みんな一緒!きゃっきゃっきゃ!」
嬉しそうに跳ねるハティちゃん。
その日我々は先日とは打って変わって豪華な食堂でこれまた豪華な食事をし、ライオンが口から湯を出す豪華なお風呂につかり、天蓋の付いた豪華なベッドで寝たのだった。豪華すぎて俺は気が休まらないのであった。




