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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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新兵訓練って素敵やん

 クレープ屋で難癖付けていた二人組を確保し、武術クラブの出し物会場に連れて行くと案の定キーケちゃんは大喜びだった。


 「これはこれは、よく連れて来てくれた。猫の手も借りたかった所よ。しかし、こんな早くからご苦労だったな、トモにエイヘッズよ。うちは、何人連れてきてもらっても構わないからな。この調子で頼むぞ。」


 「いや、キーケ先生、頼むって言われてもねー。こればっかりは、向こうさん次第ですもんで。」


 「校舎二階、7クラスにて問題発生。警備担当お願いいたします。」


 おっと、風魔法による校内放送だ。

 忙しいったらありゃしないな。

 

 「先生!仕事っす!。」


 「了解!。」


 「きひひ、頼んだぞ。」


 「行ってくるねキーケちゃん!。」


 「お土産待っとるぞ。」


 「また、ゴツイお土産ですけどね。」


 エイヘッズが走りながら呟いた。

 まあ、そうな。

 なんせ、因縁付けてるチンピラがお土産ですからね。

 俺とエイヘッズとで校舎に入るとすぐにネージュが合流した。


 「何があった?。」


 「知らないわよ!ビンちゃんも知らないの?。」


 「ああ。」


 二階7クラスと言えば生徒会長のウィンスナイド君のクラスだ。

 確か出し物は甘味処だったはずだ。

 チンピラは甘いものがお好きなのか?

 階段を上り7クラスへ急ぐ。

 

 「どーしてくれんだっ!!。」

 「おうっ!おうっ!おうっ!。」


 なんだ?アシカでもいるのか?オウオウ言ってるけど。


 「アシカでもいるんすかねー?。」


 「ぷっ、マジウケるんですけど。」


 やっぱりエイヘッズもそう思ったか。

 

 「俺もそう思ったよ。」


 「やっぱり?。」


 7クラスに入ると、飲食スペースのイスとテーブルが倒れておりこれまたテンプレートのように二人組がイキリ散らかしていた。

 その前で女生徒がしゃがんで泣いている。

 エイヘッズの顔つきが変わった。


 「大丈夫かい?こっちおいで。後は任せて。」


 エイヘッズが泣き崩れている女生徒に優しく声を掛けて、クラスの外へと連れて行った。

 

 「何があったかわかりませんが、女生徒を泣かせるまで恫喝するとは穏やかではないですね。説明してもらえますか?。」


 俺は少し強い口調でイキリ散らかしている若者に尋ねた。


 「ああん?これ見てくれよ、これを。ズボンが汚れちまったじゃねーか?どうしてくれんだよ?。」


 「ちょっと、説明の意味がわかってないようですね。誰か状況説明できる人いますかー?。」


 俺は周囲にいる人たちに声を掛ける。


 「んのヤロー!どういう意味だ!。」


 ズボンを汚した若者が俺につかみかかってきたので、軽く悪意を乗せた気を当てる。


 「ひょっ。」


 ズボン汚し君は力の抜けた声を出して、へたり込んだ。


 「ひゅー、トモちゃん先生!やるー!。」


 ネージュがちゃかしたら周囲の雰囲気が一気に和らいだ。

 

 「先生!僕、見てました。」


 近くに客として来ていた男子生徒が俺に説明してくれた。

 話を聞けば事情は単純明快。

要は飲み物を運んできた女子生徒のおしりを触って驚かせたと、それで女生徒は持ってきた飲み物をそいつのズボンにこぼしてしまった。

 男は激高して大きな声を出したもので、女子生徒はおしりを触られるやら怒鳴られるやらでパニックを起こして泣き崩れてしまった、という訳だった。


 「ありがとう、事情は分かりました。これは有罪ですね。」


 「完璧に有罪っしょ!。」


 ネージュが力強く言う。

 さすがは女子力高いネージュ。


 「何言ってやがる!こっちは客だぞ!。」


 「客なら客らしくしなさい!それにね!女の子に触ったんならそれなりのものを払ってもらうからね!。」


 「それなりってな、なんじゃい!。」


 「そーね、とりあえず慰謝料で一万レイン、示談にするかどうかは残りの示談金次第ってとこね。」


 「ふざけんな!女だと思って甘くしてりゃつけあがりやがって!。」


 ズボン汚し男がネージュにつかみかかっていき、俺の方にはもう一人の男がイスをもって向かって来る。

 まあ、ネージュなら心配ないだろうけど一応念のためイス持ち男は空気弾で眠らせ、ズボン男に向かっていく。

 俺が男の肩をつかむのと同時にネージュのハイキックが男の顎を捕らえ、膝から崩れ落ちるように地面に倒れこむズボン男。


 「はい、いっちょあがり!。」


 胸を張ってさっきのエイヘッズと同じセリフを言うネージュ。

 ふふふ、なんだかんだ言って、そういう所でも息がぴったりなんだよな。


 「いやー、やっと落ち着いてねさっきの子。衛兵さん呼ぶか聞いたんだけど、学園祭を台無しにしたくないから、それは大丈夫ってさ。」


 「そっ。じゃあ、キーケ先生んところで修行してもらいましょ。ほら!ビンちゃん!サクサクと運ぶ!。」


 「ヘイヘイヘイっと。」


 ネージュのハイキックで倒れこんだ男を担ぐエイヘッズ。

 どうやらネージュは、エイヘッズがさっきの女生徒に優しくしてるのをまじかで見て少々ご立腹らしい。

 まったく、素直になれない二人だよ。

 それも、また、良し!

 それからは、さっきの要領で中庭に行きキーケちゃんに狼藉者を引き渡し、その前に連行した二人組が板を持たされて試し割りの助手をさせられてるのを見物し、笑顔のキーケちゃんから、なるべく活きが良いのを頼む、と魚市場に来た寿司屋の大将みたいな事を言われ、巡回に戻ったのだった。

 エイヘッズなんか、キーケちゃんに、うちは活きの良いやつしか置いてないっすよ!へい!、なんて軽口たたいてたからなあ。

 再び巡回に戻り、今度はフライリフ達の番になったが、狼藉者の出没を知らされ、さっきと同じようなやり取りをし、キーケちゃんに引き渡すという事が定期的に行われた。

 フライリフが見たところ半分以上はブラッドニードルズの連中だという事だった。

 逆に言えば、そうじゃないチンピラも少なからずいるってことか。

 どこの世界でも、エネルギーを持て余し、盗んだバイクで走りだしたり校舎のガラス割って回ったりする若者はいるって事だ。

 まあ、この世界の大人ってまだまだ、ただ生きていくってことに必死で、その価値をきつく理解している人が多いから、そんなにヤワじゃないんだけどね。

 という訳で力持て余す若者諸君、そんなヤワじゃない大人代表、キーケ先生によるキーケズブートキャンプをとくと味わいなさい!

 しかし、予想していた以上にいるね、営業妨害のチンピラ諸君が。

 俺だけでもキーケズブートキャンプに連行したのは3組いる。

 ざっと見て15人位いるんじゃないかね。

 理事長が中庭に来て、何人かの連行されてきたチンピラ君、通称、新兵に話をしている。

 どうやら、普段は何をしているのか?仕事は?家族は?と親身になって聞いているようだ。

 そして、以前から話に上がっていた日中仕事をしている若者で勉強がしたい熱意を持つ者のための夜間クラス、そこに来ないか?と勧誘してらっしゃる。

 さすが、教育熱心でらっしゃる。

 キーケちゃんも、心身の鍛錬のために武術クラブにだけでも参加してみよ、いつでも待っておるぞ、と若者たちに声を掛けている。

 歯を食いしばって涙をこらえている若者もいる。

いいじゃないのー!

 そういうの、俺は好きよー!  

 昭和のオジサン心にビンビン響くんよね!

 先生よー!俺もラグビーやっとけばよかったかなー。

 今からでも遅くないぞ!

 愛は奇跡を信じる力だってんだよ!

 なんて、一人で盛り上がっている暇はない。

 午後からは益々来場者が増えるし、ケイトモ&劇団アルスのミュージカルもある。

 更には、ブラッドニードルズも仲間が行ったきり戻ってこないんじゃね、一応組織なんだから長がいるだろう、その長が事態の把握に乗り出すだろう。

 なにげに、それが楽しみだったりするんだけどね。

 早く来ないかね、ボス。

 どんな人なのかね、ボス。

その後、お昼ご飯を食べて、午後からの巡回に入る。

 エイヘッズは狼藉者が結構多い事から、午後に開催されるミュージカルの脚本に若干の変更を加えるといって、屋内運動場に行ってしまったので、俺とスニー、フライリフとネージュの2組での巡回となる。

 なぜだかネージュがフライリフと組むと言って聞かないんで、そういう組み合わせになったんだけど、ネージュのやつ、フライリフに余計な事言わなきゃいいんだけどね。

 あいつ、自分事では微妙な関係を楽しんでいるフシがあるのに、他人事では首突っ込んでハッキリさせようとしたりするんだよなー。

 フライリフとふたりにさせるのは、そういう意味で心配なのだがフライリフもしっかりした男だ、変な感じに振り回されるような事はあるまい。

 てなわけでフライリフ、ネージュ組は校庭を、俺とスニーは校舎内を巡回する。

 

 「トモちゃん先生さー、大丈夫だと思う?午後の歌劇。無事にいくかな?。」


 「そのための我々だからな。気を引き締めて警備するさ。それに、エイヘッズのやつに何か考えがあるみたいだぞ。チンピラの妨害を考えてなんだか劇の脚本に手を加えるって言ってたからな。」


 「うん、そうだね。ヘッズ君なら大丈夫よね。なんせ悪知恵が働くからねー。」


 「まったくだ。あいつのそういう所は先生も高く評価してるよ。ありゃ、大物になるぞー。」


 「うふふ、既にエイヘッズ家現当主だもんね。しかも、腕利きの遺跡発掘屋さんだもんね。」


 「そうなんだよな、あいつ、立派に一人で生きてきたんだよな。まあ、そういう意味じゃネージュもフライリフもスニーも早いうちから自分の力で生きてきたんだよな。大したもんだよ、実際。」


 「そんな事はないよ。私たちは教会があったしね。先生も行ったことあるでしょ?。」


 「ああ、あるよ。いい教会だったよ。シスターラスウェイブもいい人だったし、子供たちも元気いっぱいだったな。」


 「ふふ、やんちゃな子達だからね。」


 「そう言えば、スニーとフライリフとでヤンチャーズだってラスウェイブさん言ってたな。」


 「もう!やだー、ラスウェイブ先生ったら。昔の話です!昔の!。」


 「そっか、最強のミソッカスだったけ?今は。」


 「それも昔の話!!もーっ!。」


 膨れ顔のスニー。ははは、かわいいね。

 まだまだ子供だよ。

  

 「トモちゃん先生!スニー!大変大変!早く来て!。」


 おっと、今度は何事だ?風紀委員の子が走ってきたよ。


 「裁縫クラブで大声出してる人がいるの!早く早く!。」


 「まったくなんだって甘味だのお裁縫だのカワイイ所にばかり出没するのかね?。」


 「そりゃ、かわいくないところには、いかつい男の子たちが店員でいるからじゃない?。」


 「なるほどね。」


 うーん、それはやはりキーケ先生による訓練で根性叩き直した方が良いかな。

 キーケちゃんはそういうの嫌うからね。

 模擬店でのそうしたトラブルも午後になり多少鳴りを潜めてきた。

 こりゃ、ブラッドニードルズとやらのメンバー、ほとんどブートキャンプ行きになってしまったかな?

 フライリフが言うには、まだリーダー格がいるはずだとの事で午後一番のイベント、屋内運動場での歌劇を無事に開催することが我々警備班一同の目標となった。

 みんなが楽しみにしてくれているイベントだ、どうあっても無事に済ませるぞ!


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