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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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やっぱり話し合うって素敵やん

 仲間たちと今後の方針を話し、本日の授業へと向かう。

 俺は、授業に入る前に昨日のリーゴ君が出した問題提起は有益なものであったと、生徒のみんなに説明した。

 みんなで話し合う事の有用性を、そして正しい議論のやり方は、これからレインザー王国民として国の発展のために大きな力を発揮できる人材となるのに必要な能力である事を続いて説明する。

 そして、正しい議論のやり方について、10のルールを守るように、俺は黒板にルールを書いて言い聞かせた。

 生徒たちはざわつき、留学生たちはマウレスト君の方を見たが彼は何の表情も浮かべていなかった。


「さて、では以上の事を踏まえて今日は幾つかのグループに別れて共通の議題について話し合ってほしい。グループ内では、全体の流れをスムーズにする司会、内容を書き留める書記の役割をまず決めてもらいたい。」


 俺はそう言って、クラスのみんなを5つのグループに分けた。

 勿論、それは留学生たち5人をそれぞれ核としたグループだ。

 彼らは、どうしてもお互いの、もっと言えばリーダー格のマウレスト君の顔色を見て行動してしまう。

 だから、彼らを分散させて彼らの本音にクラスメイト達が触れることができれば、と言うのも俺の狙いの一つだった。


「それでは、今日、みんなに話し合ってもらいたいのは、国を発展させるために必要な事、です。さあ、どうぞ。」


 俺がスタートの合図を出すと、待ってましたとばかりに発言をする者、ひとまずは黙って周りの意見を聞く者、ルールの確認をする者、司会をやりたいと立候補するもの、様々な反応を生徒たちは見せてくれる。

 さて、留学生君達はどうかな、と見ているとおや?あの子は留学生組の女生徒のひとり、サンモウランさんが司会進行をしている。

 積極性があるね。

 こういう時の思い切りの良さ、切り替えの早さってやはり女子に軍配が上がるよな。

 司会進行も様になっており、周りの生徒たちも違和感なく従っている。

 元々、リーダーシップがあるんだろうね。

 もう一人の留学生組女子、ラビクインさんは書記をしているしね、真剣に他者の話を聞いているその態度はこの授業の趣旨をよく理解しているようだ。

 本当は真面目で協調性のある子みたいだね。

 さて、男衆はどうかな?

 まずは、昨日の発言者リーゴ君。

 彼は身振り手振りも加えてなにやら熱心に話している。

 周りの者も、頷きながらきちんと話を聞いており、リーゴ君の話し終わったのを確認してから意見している。

 良し良し、昨日、ああした発言の仕方で少し顰蹙を買ってしまっただろうが、その後の話し合いで他の生徒たちも遺恨をあまり残さずにやってくれたようだ。

 いい傾向だ。

 もう一人の男子生徒、デサインド君は大柄な体格に気の強そうな面構えから、話し合いなどには関心を示さないかとも思ったが、なかなかどうして、相手の目を見て話しをきちんと聞き、感情的にならずに自分の意見を述べている。

 周りの生徒も、最初は彼の風貌に押され思っていることを言えない雰囲気もあったが、彼の理路整然とした話し方に、外見に反してと言っては失礼か、話し合いに臨む姿勢を持った人物であると理解できて来たようで、段々と活発な意見交換がなされていく。

 むしろ話し合いに関心を示していないのは、リーダー格のマウレスト君のようだった。

 腕を組んで目を閉じ、意見を求められても、今、考えをまとめているところです、まだ考えがまとまらないです、と一向に話し合いに加わる気配がなかった。

 これには司会進行役の生徒も困ってしまい、俺の目を見て助けを求めてきたのだった。


「おや?どうしたのかな?マウレスト君は自分の意見がまとまらないということだが、完全にまとまらずとも、現時点で言葉にできるような意見も持たないのかな?。」


「・・・・、ええ、はい、そうです。」


 マウレスト君は俺の質問に対して、一瞬、何かを言おうとしたが、それを飲み込み肯定の返事をした。

 俺は、マウレスト君の目を見た。

 マウレスト君は、俺と目を合わすとすぐにそらし目を閉じた。

 目が合った一瞬、ほんの一瞬だが泣きそうに見えたのはなぜだろうか?

 泣く寸前のような、悲しい揺らぎが見えたのは何だったんだろう。

 なにか、彼にも事情があるのだろうか?

 少々、マウレスト君の事が気になり始めていた。


 俺はその日の昼休み、キーケちゃんに聞いてみた。


「マウレスト家か。まあ、古くから続く名家だな。だが、先々代が人の好い男でな。そやつの代で随分と領地を手放すことになったと聞いている。今代になってその家名の格式にすり寄って経済的援助をし、実質、マウレスト家の主人格のようになっているのが、新興侯爵のアロウバレイという訳なのだが。貴族社会ではよくある事よ。」


「という事はだよ、アロウバレイ侯爵の言うことには逆らえない状況に、マウレスト君が陥っている可能性もあるわけだね。」


「まあ、考えられるな。だが、今代のマウレストはそれなりに気概のある男と聞く。そんな男が自分の息子に、卑屈な真似をさせるだろうか?。」


「うーん、こりゃ、ちょいと家庭訪問が必要かもね。」


「マウレスト家に行くのか?。」


「うん、行ってみようかなと思う。」


「きひひ、面白そうではないか。あたしもついて行ってやろう。貴族社会の事はトモも疎かろう。」


「それは、助かるよ。ありがとう。」


 ということで、次の休みにキーケちゃんと一緒に、マウレスト侯爵家に家庭訪問することになりました。

 あ、お茶やお菓子などは結構ですので、皆さんの所で出されたものすべて頂くわけにはいきませんので、一律、お出し頂かない方向でお願いしております、はい。


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