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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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天気の良い日は屋上でって素敵やん

 病院裏の職員休憩所で俺達はライさんの話しを聞いていた。

 彼女が教えてくれた情報、それは中立の情報屋についてだった。

 中立というのは、つまりその人物は病院内にある勢力を知りながらライさん達組織の人間でも邪神崇拝者側の人間でもないと、そう言う事だ。

 その人物は相手を見て報酬を決め情報を提供すると言う。

 その基準は不明だが、現在病院内での邪神崇拝者とレジスタンスのパワーバランスが著しく崩れていないのは、彼女の情報提供の仕方のせいではないかとも言われているようだ。

 彼女、というようにその情報屋は女性である。

 彼女はこの病院の職員であり、暇な時間はいつも屋上にいるのだと言う。

 現在の所、どちら陣営にも属していない俺達であれば、ライさん達にも提供されない情報をつかむこともできるかも知れないという事で、俺達は詐欺集団の情報をライさんに提供した後、屋上へと向かう事になった。


 「面白いね、この病院」


 ストームは楽しそうにそう言った。


 「お前、余裕かましてるけど、今の状況わかってるよな?」


 笑顔で階段を昇るストームに俺は言ってやる。


 「わかってるわかってる。もう、わかりすぎるぐらいわかってるもんね。ほら、前、波乗り合宿の時、ハルハ君達と一緒にやっつけてたでしょ?あの時って妙な虫が使われてたんだよね?ヘンズアイだっけ?」


 「ヘイズアイな。ややこしい間違い方するなあ、ちゅーかあんときの奴らはちょっと違ったと思うけど」


 俺は階段の周囲に人がいないか確認する。近くには誰もいないようだ。


 「知ってるよ、あの時は魔神で今回は邪神。どちらも人に災いをもたらす神って事に変わりはないからね」


 「ざっくりした括りだなあ」


 ストームにかかっちまうと前世の神話や宗教の神も同じカテゴリーに括られちまいそうだな。


 「それよりね、ちょっと気になる事があるんだよね」


 「なんだよ?」


 俺はストームに尋ねる。プロの噂屋の懸念ってなんだ?それこそ気になるっちゅーの。


 「波乗り合宿の時ってあれから色々あったでしょ?ボナコンだか言う質の悪い薬物が蔓延したり、レクリュー硬貨が市場に出回ったり、ケイトさんが破壊神扱いされて捕らわれてたのもこの頃でしたよね?とにかく、怪しげな奴らが動き始める時って世の中が乱れる時期と重なるでしょ?今回もそうなんじゃないかって思ってさ」


 ストームの奴、おっかねー事を言いやがるが確かにそれは言えるっちゃあ言えるんだよなあ。

 でもなあ、それって卵が先か鶏が先かみたいな話でもあって、国が乱れるからそうした団体が元気になるって事もあったりするんだよなあ。帝国に関してはそれほど悪い国とは思えないけど、それも俺の目が届いている範囲での判断に過ぎないからなんとも言えんよ。


 「難しいとこだが、いずれにしても良い傾向とは言えないわなあ。この病院については古くからの関りがあっての事だけど、ライさんの話しやテリー・ザイルス君の動向を考えると最近になって特に活動が活発になって来たようにも見えるよな」


 階段を昇りながら俺はストームに言う。まったく、屋上に行くための階段ってのがこれが結構長いんだよ。 

参っちゃうよ。

 

 「だよね。レジスタンスと力関係が均衡してるのは情報屋さんの力もあるって言ってたけど、活動が活発になってるってのを考えるとどうなのかねえ~?大した事ないんじゃないのかねえ~?」


 ストームは階段の上を見ながらそんな事を言う。同じような稼業の人間として対抗心が働いているのかね?


 「おいおい、そんな大きな声で言うなよ。聞こえたらどうすんだよ?」


 「そのつもりで言ってるけどね」


 ストームは挑戦的な表情をして言う。


「なんだ?結構、強く対抗心燃やしてたりするのか?」


「いや、そんな事は無いよ。向こうさんはここに特化した情報屋さんでしょ?僕はほら、別に学園に特化してるって訳じゃないからさ。ケイトモさんは街のお店を脅威に感じたりはしないでしょ?それと一緒よ」


「うちのポリシー知ってるだろ?良き隣人、良き友人になれると思って付き合いましょうって俺は従業員にはそう言ってんのよ。つーか、それしか言ってねーみたいなもんだ。だから、うちはどこのどんな相手も軽んじたりはしないのさ。おわかり?」


俺は先を歩くストームに言ってやる。


 「そう言えばスミス公国の王女様がケイトモ製品の愛好家でそんな事を言ってたなあ。あれってプレゼントする時に刻める言葉じゃなかったんだ」


 「違う違う、ケイトモの信念よ。勿論、お客さんの好きな言葉を刻むサービスもやってますよ。ご用命の際は遠慮なくどうぞ」


 「そんな相手ができたら頼むよ。ところでここだけの話し、スミス王女と何があったのよ?お付き合いしてるのかい?特定の異性と深く付き合わないのはそのせい?」


 ストームが足を止めて俺の方を振り向いて聞く。


 「バカ言うなっ、んなわけねーだろ!相手は王女様だぞ?あの時だって変な噂が飛び交って大変だったんだから。お前も妙な噂をまき散らすなよ?頼むぜ」


 「そうか~、んじゃあやっぱり君が異性と付き合わないのはクランケル君と付き合ってるからなのかい?」


 「おいおい、そんな噂があんのかよ?」


 「いや、ないけど僕が勝手に思ってるだけ」


 「クランケルに迷惑かけるような事はしなさんなよ?あいつ、怒るとおっかねーぞ?」


 「そう?彼、優しいよ?」


 「優しい奴ほど怒ると怖いのさ」


 「確かにそうかもね」


 ストームはそう言って再び階段を昇り始める。折り返しを曲がると屋上に出るトビラが目に入る。


 「だからお前も屋上の情報屋さんを軽く見るような事はすんなよ?」


 「してないよ。だからこそこうしてるのさ」


 ストームはそう言って屋上に出るトビラに手をかけ一気に開いた。

 外の光が飛び込んで来て軽く目が眩む。

 

 「ようこそいらっしゃい、学生さん」


 快適そうなデッキチェアに寝転んだ女性が俺達に声をかけてくる。

 コロコロした子犬のような体系の小柄な女性はサングラスをしたまま本から目を離さず俺達にそう声をかけていた。

 こりゃ、ちょっと気を抜けぬ相手の様だぞストーム。

 俺は前を歩き情報屋さんに近付くストームの背中を見る。その背中には怯えも迷いも感じられない。

 ここはいっちょ、奴を信じてついて行くとするか。


 「おくつろぎのところお邪魔します。僕はファルブリングカレッジの学生でストーム、彼は同じく学生のクルース君です。我々がどういった要件であなたを尋ねたのかもうご存知ですよね?」


 ストームは寝転がっている女性に向かって挑戦的な口調でそう言った。

 おいおい、軽く見るなとは言ったが大丈夫か?


 「ご丁寧なあいさつ痛み入るわ」


 女性はそう言って本を傍らのテーブルに置いた。


 「おふたりの噂は耳にしてますよルーマーディーラーさんとケイトモの創設者さん。今度の標的はこの病院の秘密なのかな?それはちょっとオススメしないよ」


 女性は上体を起こしサングラスを外して胸元にかけると俺達を見てそう言った。

 ほら、やっぱり油断できないよこの人は。

 俺は心配になってストームをチラ見する。

 ストームはそんな俺の気持ちを知ってか知らぬか、ゆっくりと首を動かし彼女の周囲に目を凝らしている。


 「面白い場所で日光浴しておられますねえ。周囲に空いているのは屋上の水を排水するための雨樋の穴ですね?ここに来る時の僕たちの会話はここから漏れ聞こえていた訳ですね?他にもここに居れば院内の情報が勝手に入って来ると」


 おおー!ストームの奴、そんなもんを見とったのか!さっき階段で聞えるように言ってるんだなんてのたまってたが単なる強がりじゃなかって事か!


 「さすが噂屋を名乗るだけの事はあるじゃない、目ざといわね。ああ、そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はメイム・ヴァンヴァウダー、リハビリテーション科の診療科長で医療監査部の副部長もしているわ。ああ、医療監査部なんて言っても素人さんにはわからないかな。病院長直轄の組織でね、医療事故の発生防止、患者さん、そしてその家族と病院側と円滑なコミュニケーションをとれるように…」


 「会話を遮って失礼しますが、我々がどういう要件でここに来たのかご存知のはずですよね?」


 寝転がった体勢からデッキチェアに座った体勢になり話し続けるメイムさんに対し、ストームは毅然とした態度でそう言った。


 「あなた、私の事をしょせんここに特化した情報屋だと言ったでしょ」


 「その意趣返しですか?」


 「そう、意趣返し」


 メイムさんはそう言ってストームの目を見た。


 「謝罪します、僕の認識が浅かった。病院と言うのは多くの人が集まる場所です。それも貴族、商人問わず色んなタイプの人が集まる珍しい場所です。ある意味、情報のるつぼという事もできる。そうした場所で情報を扱っている方が並の情報屋であるわけがない」


 ストームはしゃなりとそう言った。まったく負けた感じがないどころかしなやかに気取った様子でもある。どういうこっちゃ?


 「ふふふっ、あなた、最初からそのつもりで言ったわね?わざと私の事を煽ったのね?」


 「ええ、その方が親密になれるかなと思いましてね」


 メイムさんとストームはそう言ってお互い不敵な笑みを浮かべて見つめ合った。もう、俺、置いてけぼりなんですけど?目と目で通じ合ってます?もー!そういう仲になりたいわん!


 「噂にたがわぬやり手のようね。あなた方が知りたいのは循環魔力科のザイルスさんの弟君についてよね?」


 「まあ、そうなんですが事と次第によっては…」


 メイムさんの言葉にストームは言葉を濁す。メイムさんは弟君の事さえ片付けばそれ以上は何もしないのか?と言ってるのだろうが、ストームは場合によっちゃ邪神崇拝者達と事を構えるかもしれんとそう答えたのだ。

 まあ、俺としてもその邪神崇拝者とやらが以前出くわした魔神崇拝集団のような暴力的な集団で、別の怪しい組織の手先だったりした日にゃあ放っておくわけにもいかないもんな。少なくとも、それなりの場所へ報告する事にはなるだろうな。


 「ふ~ん。そうねえ、こればかりは口で言っても仕方ないかな。変に隠さず自分達の目で確かめて貰った方がいいわね」


 メイムさんは何かを考えるように上を向き、そして何かに合点したように俺達を向き言う。


 「だったらまずは地下室についてね。地下室には彼らだけに見える秘密の部屋があるのよ…」


 メイムさんは話を続ける。

 地下室にはやはり秘密の部屋があるらしい。それは隠されていて普通にしていては発見する事は出来ないのだと言う。その部屋のトビラを発見するためには特殊な色眼鏡が必要なのだそうだ。


 「…この眼鏡は違うけど、見た感じはよく似ているわ。それをかけると普段見えない物が見えてくるのよ、私も以前、かけさせて貰った事があるけどその時は病院の壁に色々な文字が見えたわ」


 「その色眼鏡はどこにあるんです?」


 ストームが尋ねる。


 「噂によれば四階の古い資料室に金庫があってその中にしまってあるそうだけど、それを開けるのが問題でね」


 メイムさんは顎に手を当てて難しい顔をする。


 「どう問題なんです?」


 俺は尋ねる。


 「それがねえ…」


 メイムさんは途端に口調が重くなる。そんなに言いにくい事なのか?どれだけ大変な事なんだ?嫌な予感しかしないんですけど?


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