接触って素敵やん
「こんにちは~、ご精が出ますねえ~」
ゴミカーゴを押し裏口から外にでたオジサンにストームは笑顔で声をかけた。
「なっ、なんだい。忙しいんだ、後にしてくれないか」
オジサンは焦った様子で俺達に言う。
なんだ?なんでそんなに焦ってるんだ?こりゃ、ストームの言った通り、俺達の会話を聞いて急いでここに来たってのか?
「ごみ捨てなら僕達も手伝いますよ。どこに捨てれば良いんですかねえ?」
ストームはニコニコしながらゴミの入った袋を持ち周囲を見回す。
「あれ?ここってゴミ捨て場じゃあないみたいですねえ?」
ストームはわざとらしい声を出してオジサンを見る。
「なんなんだ君達っ、患者さんじゃないよね?ダメだよ、こんなとこに来ちゃ」
俺達の風体を見て患者でない事がわかりそこに付け入るスキを見たか、精一杯有利なポジション取りをしようと試みている中年男性。まあ、確かに関係者以外立ち入り禁止っぽい場所ではあるが、最初の反応からして引け目があるのは向こうさんだ。
「その事はまた今度話し合うとして、今は別の事を話し合うべきですよねえ?我々の会話を聞いて血相を変えて逃げ出したのはなぜです?その理由を聞かせて貰わないと次には進めないですよ、我々としては」
ストームは余裕の表情で中年男性に歩み寄る。
「な、何を言ってるのか良くわからない…」
中年男性の言葉は途中で消え入るように小さくなる。この人、根が真面目なのか小心者なのか、もう少し自分の立場をかさに着て強気に出てもいいものをあっちゅー間にストームのペースに巻き込まれてるんだからなあ。
悪い人じゃないんだろうな。
俺はストームの後ろで中年男性を見てそう思った。
「えーと、どれどれ」
ストームはゆっくりと中年男性に近付き胸元のネームプレートを手に取る。
「ゲイリー・ダンストさんですか。親しみを込めてゲイリーさんとお呼びしても?」
「なっ、なんで?」
中年男性ゲイリーさんは意表を突かれたのかキョトンとしてそう聞いた。
「ゲイリーさんこそ、なんでここに来たんですか?ここに来れば誰かお仲間に会えるとか?だったら会わせて頂けませんか?我々は話し合いができるタイプの人間ですよ?」
ストームが言い俺は後ろで笑顔を浮かべて頷く。なんだか怪しげな団体の勧誘員みたいで自分でも嫌になる。
「ゲイリーさん、もういいですよ」
俺達が出て来たトビラからひとりの女性が出てきてゲイリーさんに声をかけた。年の頃は三十前後だろうか、意志の強そうな目、伸びた背筋、仕事のできそうな佇まいの女性だった。
「私はキルスティン・ライ、ここで小児科を担当してます」
ライさんはそう言って静かにトビラを閉めた。
「僕はストーム、彼はクルース。ファルブリングカレッジの学生です」
ストームはそう言って華麗に一礼するので俺も慌てて直角に礼をする。なんか俺だけ外回りのセールスマンみたいになっちまった。
「その学生さんたちがなぜうちの七不思議に関心を?」
ライさんは腕を組んで優しい口調で俺達に尋ねた。まるで姉が弟を軽く叱るような調子だ。
「勿論その理由はお話ししますが、その前にひとつだけ聞かせて頂いても?」
ストームは丁寧にそう言う。
「構わないけど、こちらの質問の答えもきちんと聞かせて貰うわよ?」
「勿論です。ではお聞きしますが、なぜ私達が七不思議に関心を持っているとわかったのですか?私達がその話をしていた時にライさんのお姿はお見かけしませんでしたが」
「見逃したのではなくて?」
ライさんは即座にそう答えた。
「あなたのような美しい方を見逃すわけはありませんよ」
ストームも即座に答える。
「ふぅ、随分と口が上手なお坊ちゃんだこと。仕方がないから少しだけ教えてあげるけど、私達の間でだけわかる合図があるのよ」
ライさんが肩をすくめて言う。
「なるほど、わかりました。ありがとうございます。それでは我々の番ですね…」
ストームは丁寧にそう言うと脅迫状の件を除いて正直にこの病院にやって来た理由を話した。
文化祭を楽しめない参加できない生徒を探し、楽しく参加できるようにしている事。該当する生徒テリー・ザイルスが授業をさぼってアルグスト病院に来ている事をつかんだ我々は、彼の姉が入院している事を知り姉とコンタクトをとった。姉と同室者の情報により彼がある時期を境に姉の見舞いに来てもろくに口をきかずにすぐ帰り、地下室に出入りをしている事がわかった。
地下室に行ってみるが何もつかめず、院内で情報を集める事にした我らは七不思議と言う名の八不思議を知った。
そこに人為的な物を感じたストームは関係者を炙り出すべく、院内をゆっくり歩きながら自分の考察を語った。
「…するとそこのゲイリーさんが反応を示してくれたと、こういう訳です。ライさん、あなたは私達と言いましたね?新たに三階男子トイレの噂を流したのはあなた達なのですか?」
ストームはライさんとゲイリーさんを見て尋ねた。
「いいえ、それは違うわ」
ライさんは首を振る。
「では誰がそれを?そしてあなた達の目的は何なのです?」
ストームは聞く。
「それを聞くと、もう戻れなくなるわよ?その覚悟があなた達にあって?」
ライさんは挑戦的な眼差しで俺達を見る。
「どう思う?」
ストームが俺を見るが、答えは決まっているって目をしてやがる。
「どうもなにも、ここでお疲れさんってわけにゃあいくまいよ」
俺は答える。
「こちらとしてはこのままするべき仕事をさせて頂く方向でお願いします」
ストームはにっこりと笑ってそう言った。
「そう、どうやら何を言っても無駄のようね」
ライさんは肩をすくめて首を振る。
「じゃあ、話すけどね。君達の身の安全は保障できないわよ?それでもいい?」
「こう見えて我々もそれなりの場所をくぐってますからご心配なく」
ストームは笑顔で答えた。
「…私達はね、いや私達が相手をしているのは誰なのか話した方が早いわね。私達が相対しているのはアンチモミバトス、邪神崇拝者の連中なのよ」
ライさんは真剣な表情でそう言った。
アンチモミバトス?邪神崇拝者?
また物騒な感じの名前が出てきましたよ?




