まだまだ青いって素敵やん
「んで次はどこに行くつもりなんだ?」
「う~んと、この辺りにいつもいるはずなんだけどな~」
校舎裏にやって来たストームはキョロキョロとあたりを見渡した。
「あ!いたいた!おーい!君、ズノーク君かーい?」
校舎の影でしゃがみ込んでタバコを吸っている生徒を見つけストームは走り寄って行く。
おいおい、次の生徒ってこいつか?
うんこ座りで校舎裏でタバコ吸ってって、昔の不良じゃないんだから。つーかこの国、喫煙についての規則がそこまで厳しくないから、こんな所に隠れて吸わなくても大丈夫なんだけどな。
「あ~ん!ンダッテメー!なんか文句でもあんのかよー!」
男子生徒は地面に唾を吐いてストームに凄む。
「君がズノーク君であってるのかな?」
「だったらなんだっつーんだよ!なんか文句でもあんのかよー!」
ズノーク君はかくかくと鶏のように首を動かしてストームに凄む。
「文句があるのは君の方じゃないのかい?ズノーク君?」
「ああ?なにがだよー??」
ストームの返事を予想していなかったのか、ズノーク君の勢いが落ちた。よく見れば幼い顔つきをしているな。
「何か不満があるからこんな所でひとりきりでいるのではないのですか?良かったら話を聞きますよ?」
「うっせーなー、かんけーないだろー」
ズノーク君は口をとがらせて言うがもう拗ねている様にしか見えない。
「それが関係あるんですな。我々は精霊お助け隊の者でしてね、生徒会からの依頼で文化祭に不満がある人の聞き込みをしているんですよ。どんな人物がどんな不満を募らせているのか知りそれを改善する事でみんなが楽しめる文化祭にしようというのが生徒会の目的なんですよ」
「へぇ、生徒会にしちゃ少しはましな事するじゃねーかよ。だったら文化祭なんか下らねえからすぐにやめにしちゃえって言っといてくれよな」
ズノーク君は鼻の穴を広げてそう言った。なんてーのかね、この子は、本当にまだまだお子様なんだなあ。精一杯強がっちゃいるが、話を聞いて欲しい、構って欲しいってオーラがビンビン出てるもんなあ。わざわざ、こんなとこで拗ねてるのもそう言う事だろうな、本当にひとりになりたかったら学園の外か自分の部屋で静かにしていればいい話しだ。
ストームのそんな事は良く心得ているようで神妙な顔つきをして彼の話を聞いている。
「うんうん、なるほど。そういう意見をお持ちでしたか、非常にありがたいご意見です。参考までにお伺いしたいのですが、文化祭のどこが下らないのかお聞かせいただいても?」
「そんなもん、決まってらー。俺がつまんねーもんは下らねーって言ってんの!」
ズノーク君は唾を飛ばして言う。
「なぜつまらないんですか?」
「そんなもん、あれだ、とにかくつまんねーもんはつまんねーって言ってんの!」
こりゃ、駄々っ子と変わんなくなってきたぞ?どーすんだストーム?
俺はストームを見る。
「ズノーク君、あなたはきちんと意見を持った人間であるとお見受けしました。そんなあなたが、きちんとした意見を言わないのには何か理由がありますね?誰かをかばっているとか。我々は誰かを罰するために動いている訳ではないんですよ。むしろ逆の事を目的にしているんです」
「逆ってなにさ」
「喜んでもらうためですよ」
「なんだよそれ。わけわかんねーよ」
ズノーク君はそう言ってポケットから出した携帯灰皿の中にタバコを入れた。
「誰かの事をかばっているのは非常に漢気がある行為ですが、それであなた自身が文化祭を楽しめないのは間違っています。我々が力になるためにはどうすれば良いのか教えて頂けませんか?」
ストームはズノーク君の正面にしゃがみ込んで目線を合わせてそう言った。
「あいつらが嘘をつくからさ」
「どんな嘘をついたのですか?」
「一緒に文化祭を邪魔しようってさ…」
ズノーク君はそこまで言うとダムが決壊したように一気に話し出した。要は彼らグループは不良に憧れた子供達で、シニカルな事を言ったりやったりするのがカッコイイと思ってしまっていたのだ。それで、皆、学園祭を楽しみにしているにもかかわらず、友達の前では見栄を張って感心ないように振舞っていたのだ。ある日、仲間のひとりがだったら準備を邪魔をしてやろうと提案し、みんなで夜中に集まって外に置いてある荷物を壊してやろうという計画を練った。ズノーク君は計画通りに集合場所に行ったが誰もおらず、明るくなるまで待ったが結局誰も来なかったのだ。文句のひとつも言ってやろうと仲間の所に行くと、仲間はみんな楽しそうに文化祭の準備を手伝っており、自分とは目を合わそうともしなかったそうだ。
「…あいつらみんな卑怯者だよ!インチキ野郎だよ!楽しそうに参加しやがって!俺だって、俺だって…」
「ズノーク君だって本当は文化祭を楽しみにしてたんですよね?」
「そうだよ!文句あっかよ!」
「だったら話は簡単ですよ。今からでも準備に参加しましょうよ」
「それができたら苦労しねーよ!今更、あいつらと一緒になんてやってらんねーってーの!」
「ズノーク君のクラスは二日目は向こうの学園祭参加でしたよね?」
「だったら何さ」
「となるとクルース君のクラスとは逆になりますね。ね?クルース君?」
確かにうちのクラスは三日目の合同祭の準備をしてたな。ちゅー事は二日目はファルブリングでやるっちゅーことか。
「ああ、そうだな」
「確かフェロウズ君は人手が足りないって愚痴ってましたね。ズノーク君にはそちらを手伝って貰ったら如何でしょう?フルポアに行く機会は無くなってしまいますが、その代わりにボルグスクの円形闘技場には行けますよ?どうです?」
「いいのかよ?そんな事、できんのかよ?」
ズノーク君が口をとがらせて尋ねる。拗ねているような表情だが、目は期待に輝いているように見える。
まったく、こまったお子様だがこの年代の子供にはありがちな事でもあるし、ここで変に拗らせちまってもかわいそうだよな。実際、フェロウズは猫の手も借りたそうだったし、いいんじゃないか。
「多分平気だろ。一緒にフェロウズんとこ行くか?俺から話を通してみるけど」
「行く!行くよ」
ズノーク君は前のめりになって言った。ストームが俺を見てニヤリと笑う。はいはい、お前の計画通りってですかい?それでよござんすよ。
俺はストームとズノーク君と一緒にフェロウズの元に行く。
俺の顔を見るなり暇なら手伝えと言うフェロウズに俺はザックリと事情を伝える。
フェロウズはそう言う事ならマジ助かるぜ、と二つ返事で引き受けてくれズノーク君はまんざらでもない顔をして鼻の下を手で拭いた。
「んじゃ、カルデイナちゃんには俺から言っとくからよ。ふたりも仕事が済んだらうち手伝ってくれよな」
「おう、んじゃよろしくな」
俺はフェロウズに手を上げ教室を出た。しっかし、カルデイナちゃんって、あの先生、生徒からちゃんづけで呼ばれるようなタイプじゃないと思うけどなあ。本人に聞かれたらどやされるんじゃないかね?
「順調に進んでるねえ」
ストームが笑顔で俺に言う。
「今ん所はな。ちゅーかお前、全校生徒の所在地をつかんでんのかよ?」
文化祭の準備をしてるってんならまだ居場所は特定されるけど、ズノーク君なんてサボってた訳だしな。
「事前に耳に入ってればね」
「お前、やっぱ怖いやっちゃで」
「君には負けるよ。さ、次行こ次」
「次はどこの誰なんだよ」
「場所は生徒会室で相手はオライリーさんだよ」
ストームはそう言ってスタスタと歩いて行く。
「へえ、ってちょっと待てよ、まさか会計のオライリーさんを疑ってるんじゃないだろうな?」
「別に今までの生徒の事も疑ってる訳じゃないよ。ただ文化祭に不満を持つ生徒の心の内を聞いているだけだよ」
ストームは変わらぬ調子でそんな事を言う。
「いやお前、そりゃ詭弁ってやつだろ。オライリーさんと言えば曲者揃いの生徒会の中でも良心と言えるような落ち着いた人だぞ?そのオライリーさんがまさか」
「まあまあ、ひとまず我々の目的は生徒が学園祭に抱く不満や不安を取り除く事ですからね。最初から脅迫状の送り主と決めつけて望むのは良くないですよ」
ストームは余裕しゃくしゃくの態度でそんな事を言った。なんだか自分がさもしい人間になったような気分だ。
俺って、猜疑心が強いのかなあ?人を信用できてないのかなあ?
ちょっと、自分自身を見つめ直してしまうよ。




