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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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ワクワク地下ランドって素敵やん

 なんとかマチンアダーを眠らせて先に進むことができた俺とロジちゃんだったが、奴が出て来た通路を進むと子牛サイズの毒々しいカエルに遭遇する。


 「マチントードね。動くものならなんでも食いつくから気を付ける事。あと、強い毒を持ってるから毒が弾け飛ぶような攻撃は控えてね」


 「へいへい、わかりましたよ」


 俺はマチントードに水魔法で出した氷のミストを浴びせマチンアダーの時のように冬眠させる。


 「それ便利ねえ。私も術式覚えようかしら」


 「ヘビやカエルには有効だけど、強制冬眠は失敗すると死んじゃうからね。あんまり多用しないほうがいいかもよ」


 「あら、そうなの?貴重な個体を生きたまま捕獲する時にイイと思ったんだけど」


 「捕獲目的なら眠らせる系統の術式の方が確実じゃないかね?カース系のやつ」


 俺はロジちゃんに言う。


 「確かにそうね。君、確か幻術使えたわよね?だったらその手のカースも使えたりする?」

 

 「いや、カースは使えないな、幻術だって戦闘中に使えるようなもんじゃないし」


 「そうなの?なんか君って万能タイプに見えるけどね」


 「器用貧乏タイプなのよ」


 俺はマチントードに氷ミストを浴びせながらロジちゃんに言う。

 マチンアダーが出て来た通路は分岐がないのにくねくねと折曲がっていた。


 「なんだってこんなに無駄に入り組んでるんだろ、ここ」


 「昔の城下町は防衛のため道を屈曲して作ったけど、これはねえ」


 「敵が攻めてくるような所じゃないもんねえ」


 俺とロジちゃんは顔を見合わせる。

 くねくねと曲がる通路をしばらく歩くと急に空気がひんやりとし、徐々に水が流れる音が聞えてくる。


「うわっ、こりゃ地下水路か?デカイなあ」


「いや、これは人工的な水路というよりも自然の水脈のようね。これだけの量の地下水を利用してなかった訳はないわ。きっとどこかに生活利用のための採掘抗があるはずよ」


ロジちゃんが俺を見る。

確かに地下にこれだけの水脈があれば生活用のみならず農業用にだって使えるだろう。なんせ水脈のの幅は十メートル以上はありそうだ。

 でもなあ。


 「これまたデカヒルがいるんじゃないの?」


 俺はおっかなびっくりロジちゃんに尋ねる。あいつだけは苦手なんだよ。


 「ベースメントリーチはマチントードの毒に弱いからここにはいないでしょう。それより、マチンアダーのメスがいる可能性が高いから注意してよ」

 

 ロジちゃんは声を潜めて俺に言う。


 「うそ、あんなのがまだいるっての?」

 

 「さっきの奴のカラー見たでしょ?あれ婚姻色よ」


 「マジか」


 婚姻色ってのは繁殖期のオスに現れる派手なカラーリングで、メスへのアピールのため出ると言われている。

 

 「あれだけいたマチントードが姿を潜めてるでしょ?近くにいる可能性が高いから気を抜かないで」


 ロジちゃんに言われて俺は呼吸を整え周囲に意識を巡らせる。

 水の流れは穏やかでとてもそんな凶悪な生物が隠れているようには見えない。

 見えないが水面に向かって何か大きな物が接近している気配を感じる。


 「下がって!」


 俺は手でかばうようにしてロジちゃんを下がらせる。

 水面が揺れたかと思うと一瞬にして盛り上がり巨大な頭が現れた。

 

 「キシャァァァァァァァ!」


 首長竜のように水中からもたげた頭はさっき相手をしたマチンアダーより二回りは大きそうだった。


 「これ、怒ってるんじゃない?俺達が相方を冬眠させちゃったから」


 「バカね、そんな事こいつにわかるわけないじゃない」


 ロジちゃんが俺の後ろで言う。


 「じゃあ、旦那の帰りが遅いから怒ってるのかも」


 「それは、あるかも。あなた、不殺がポリシーなんでしょ?だったら説得して見なさいよ」


 くぅ、ロジちゃんのやつ無茶言いやがるぜ。でも、そこまで言われたら俺にだって意地があるってなもんだ。やったろうじゃんか。


 「いやぁ、ねえ?旦那が外に出て働いて帰ってこない方が自分の時間が使えて良いでしょ?ほら、亭主達者で留守が良いなんて言うし」


 「キシャァァァァァァァァァ」


 マチンアダーはコブラのように身体を広げ俺を威嚇する。


 「ホントにやってどうすんのよ!バカじゃないの!」


 ロジちゃんが俺の事をポカポカと叩く。


 「そんなに怒らないでよ、言われた通りにしただけなのに」


 「どうするのよ!この状況!」


 「氷ミストぶっかけようにも半分以上水に浸かっちゃってるし」


 「なんでもいいからやらないと食べられちゃうわよ!」


 ロジちゃんが俺の服をつかんで激しく揺らす。


 「えーーい!ままよ!」


 俺は半ばやけっぱちの気分で氷ミストをマチンアダーに浴びせる。

 マチンアダーは身体を広げたままお辞儀をするように水面を叩いた。


 「バッシャァァァァァァァァ!!」


 猛烈な勢いで水面が叩かれ周囲に水が大量に飛び散る。

 

 「やっぱ、だめっぽいんですけど」


 「死にたくないなら諦めないで続けなさいっ!!」


 飛び散った水が雨のように降り注ぐ。

 そう言われても氷ミストで冷却しようとしても川の水で吹き消されちまうし、俺の水魔法じゃ川の水ごと奴を凍らせるなんて無理だ。

 崩落覚悟でフォーカス使うか?

 そんな事を考えていたその時、鎌首をもたげようとするマチンアダーの隣りにさらに大きな水の盛り上がりが発生した。


 「ダバァァァァァァァン!」


 破裂音のような音を立てて水面が弾け姿を現したのは巨大なワニのような頭だった。

 

 「うわっ!なんだ!」


 「なんでこんなところに海ワニが?」


 ロジちゃんが驚きの声を上げる。


 「なにそれ?あれワニなの?」


 「いいから、ここはひとまず退散するわよ」


 猛烈な水しぶきを上げ水中で暴れまわるマチンアダーと海ワニを見てロジちゃんは大声で俺に言う。

 俺は一も二もなくその声に従い走り出すロジちゃんの後に続いた。

 なんなんだよこの地下は?ナニシックワールドだよ?巨大生物が生息できる環境じゃねーって?このままじゃオール怪獣揃い踏みで怪獣プロレス始めるぞ?巨大生物と意思の疎通ができる美少女とか出てきちゃうのか?

 勘弁してくれよ。


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