委員決めって素敵やん
俺が割り当てられたのは、ナンバー4クラス。
創立したばかりのこの学園、年の差は多少あれど学ぶスタート地点は一緒という事で、何年何組ではなく数字のみになっており、1クラス20人程で現在12クラスある。
今後、興味の対象などで専門クラスを作り移行するか、同クラス内で選択授業制にするか探り探り検討するとの事だ。
さてと、俺のクラスは、と。
「やめなさい!席に着きなさい!。」
「なめてんじゃねーぞ!。」
「貧乏人がっ!。」
はー、早速ですかー。
まあ、元気があって良かろうよ。
「おいっすーー!!。」
俺は怒号飛び交う教室にデカい声で威勢良く入って行った。
「いい加減にしなさい!あなた達!。」
ありゃりゃ、いい身なりをした生徒ではなく学園支給の制服を着た生徒の方を向いて注意しているのは、今朝の職員挨拶で貴族商会サイドの席に座っていた先生だ。
二十代後半くらいかね、小柄でカワイイと言っていい顔だちの先生だが、いかんせん、注意する相手が露骨に制服組一方向だ。
「あ、どうも、クルースです。どうしました?。」
俺はひと先ず女性教師に話しかけてみた。
「どうしたじゃないですよ!最初から無理なんですよ!だから、クラスを別にした方が良いと私たちは理事長に言ったのですよ!どうするんですか!こんなんじゃ授業になりません!。」
自己紹介もせずにヒステリックに喚きたてる女性教師、うわー、嫌だなー、もう。
「私が責任を取りますから、ここはお任せ下さい。」
「私は知りませんから、お願いしますよ!。」
「はいはい。さてと、じゃあ、話を聞こうじゃないの。どした?。」
俺はいがみ合ってる男の子たちの間に割って入った。
年の頃なら十代前半、まだまだ子供だが両サイドで後ろに座ってじっとしてる子は雰囲気が違う。
そのふたりがボス格と見た。
「はい、ちょっと、君と君。こっちに来てもらってもいいかな?。」
制服組後ろで、腕を組んで座っていた大きな力強い目をした少年と、貴族商会組の後ろでグラマラスな女の子に組みつかれ嫌そうな顔をしているミドルショートカットの少年、そのふたりに俺は声をかけた。
鼻の高いミドルショートの少年は、自分を指さし、え?俺?と聞いてきたので頷く。
目力のある少年は無言でこちらにやって来る。
教室内に緊張が走るのがわかる、やはりこのふたりがキーマンか。
最初にやってきた制服組のボスだろう少年を見て俺は尋ねる。
「君、名前は?。」
「フライリフ。」
じっとこちらの目を見て言うフライリフ君。
「俺になんの用ですか?。」
グラマラスな女の子と一緒にやって来た少年にも名前を聞く。
「エイヘッズです。こいつはネージュ。性悪なんで先生、気を付けて下さいね。」
「誰が性悪よ、誰が!せんせーい、信じちゃだめですよー、こいつは大ウソつきの墓荒らしなんですからねー!。」
「誰が墓荒らしだ!ちゃんと認定された遺跡発掘だ!この!お前こそ泥棒猫だろうが。」
「まあまあ、その辺にしてくれな。時にふたりに聞きたいんだが、どうしてこんな騒ぎに?。」
「ちょっとまってくれないか?なんで俺っちに聞く?。」
フライリフが俺に質問する。
「俺もそれ聞きたいね。何で俺とこいつ?。」
こいつと言われたフライリフがエイヘッズをゆっくり睨んだ。
「お前らふたりが一番落ち着いていたからな。両方の代表として聞きたかったんだ。」
「大丈夫?フラちゃん?。」
フライリフの後ろにそっと近づいてきたスレンダーな女の子が声をかける。
「大丈夫だ、下がってろスニー。」
スッと腕を出して前に来ようとするスニーと言う名の女の子を制するフライリフ。
渋い、渋すぎる、幾つですか?と問いたい。
「改めてだけど、俺はこのクラスの副担任をやらせてもらうクルースだ。よろしくな。それで、もう一度聞くが何があった?。」
「はーい!先生!多分そいつ、フライリフか、フライリフからは言いにくいだろうから俺が説明するよ。あっ!始めに言っとくけど別に俺はこいつらの代表でもリーダーでもないので悪しからず。」
どうにもお茶らけていると言うのか、軽いノリだが時折見せる目の色に孤独を感じるよ。何だろな。
そんな感じのエイヘッズが言う事にゃ、まあ、本当にありがちな話だが貴族組の坊ちゃんが制服組の制服を笑ったと、それで謝れ謝らないでこの有様だと。
偉いのがエイヘッズなんだけど、貴族サイドから仕掛けた喧嘩だからフライリフにしてみれば、相手に責任転嫁させるみたいで言いづらいだろ、と言うのだ。
「おーい、エイヘッズ君。」
「なんですか?。」
「お前はなかなか気遣いのできるやっちゃなー。大したもんだ。フライリフも本当なら声高に糾弾しても良い所を、男らしいじゃないの。よーし、お前らふたりで学級委員長と副委員長をやれ!。」
「はい?。」
「え?。」
「いや、だから、お前らふたりでこのクラスを仕切ってくれって言ってんのよ。どう?どっちが委員長か勝負で決めたりしちゃう?。」
「いやいや、先生、俺、言ったよね?貴族や商会の連中の代表じゃないって。仕方ねーから説明するけど俺はビーン・エイヘッズ、エイヘッズ家34代目当主だ。現当主ね。なんせ親がいないもんでさ。こう言っちゃなんだが財産はあるんよ。さっきこの泥棒猫が言ったように遺跡発掘にかけちゃちょっと知られた一族でね。俺もそっちの腕はまあ、自分で言うのもなんだけど、一流って言うの?まあ、そんな感じでね。ああ、話がそれたな先生。そんなわけでさあ、俺んとこは他所の貴族にしてみりゃ没落貴族の面汚し、貴族の風上にも置けないとそんな感じでね。ここにいる連中だって俺を代表だなんて認めやしねーと思うけどなあ。」
いやー、口が達者な奴だな。なんか気に入っちゃったよ。
「そうかねえ。そんな事ないと思うけどなあ。フライリフはどうだ?。」
「俺っちは別に構わねー。だがひとつ条件がある。」
「なんだ?言ってみな。」
「エイヘッズって言ったな。そいつと立ち会わせて貰いたい。勝った方が副委員長ってことで、よ。」
「なんで勝ったら副なのよ?。」
「頭が決まりゃあ、命がけで守る。実際戦うのは副が多いもんだ。だから、よ。」
いちいち言う事がアウトロー過ぎるぞ。どういう経歴ですか?
「立ち合うのは構わないし、勝った方が副ってのも面白いじゃないのさー。でもよー、肝心のこいつらが認めないんじゃ意味ないでしょ?。」
「エイヘッズの言う通りだな。よし!じゃあ、みんなにも挑戦権を与えるとしようか。どうだ、お前ら!さあ!4クラスの王様は誰だ!。」
誰も何も言わない。
「なんだなんだ、お前ら!さっきまでの威勢はどうした!我こそはと言う奴!出て来いやっ!!。」
出てきません。誰も出てこないよ。
トホホのホ。
まあ、良し。
「なんだよ、挑戦者なしですか?まあいいけど。あとで文句は言うなよ。じゃあ、行くぞ。」
「行くってどこにですか、先生?。」
フライリフが俺に尋ねる。今からここでやってもいいけどってか?
「そりゃ、校庭よ。こんなイベントは校庭。決まってんの。さあ、みんなついて来なさい。」
楽しい学園生活の始まりとしちゃ上々じゃないのさ。
俺は笑顔でみんなを誘導する。
ぞろぞろ歩いていると、いつの間にかシエンちゃんがついて来てる。
「おいおい!トモちゃん!また面白そうな事して!何すんの?ねえ?なに?。」
「またー、シエンちゃんはいいの?教室抜け出して?。」
「ああ、大丈夫だ。担任が邪魔だからどっか行けって言うからさ。」
「またまた、ぶっとばしちゃあいないでしょうね?。」
「あったりまえだ!あんなへなちょこ、すぐ死んじゃうぞ。それより何すんの?。」
「へへへー、これから学級委員長と副委員長を決める、男と男の勝負をするの。邪魔しちゃ嫌よ。」
「うひゃー、さっすがトモちゃん!面白い事考えるぅーー!あの頭の固い担任に見習わせたい!。」
「ちょっと先生、そちらどなた?彼女?。」
ネージュって言ったか、エイヘッズに絡んでた子供のくせにやけに色っぽいグラマラスな少女が俺にしなだれかかってくる。
「いや、相棒、信頼できる仲間。それから、先生にそんなことはしないの。」
ベタベタとくっついてくるネージュを手で遠ざけながら俺は言う。
「あら、やだ、もしかして女性はお嫌い?そっちが好き?ビンちゃーん、気を付けたほうがいいかも!。」
「うるさい!お前は。金持ちの子供でも誘惑してろ強欲猫!。」
「誰が強欲猫よっ!。」
エイヘッズとネージュのお約束のようなやりとりに、反応する生徒がいる。
「ちょっとあんた、うるさいのよ。黙ってられないの!。」
こっちはスニーだな、フライリフに下がってろと言われた子。
「はあ?なによ?あんた、なんか文句あるわけ?。」
「さっきからうるさいのよ。ちょっとは空気読みなさいよ!。」
「なによっ、やろうっての?いいわよー。言っとくけど私、強いよ。」
「あら、奇遇ね私もちょっと強いわよ。」
「君たちねえ、血の気が多いねえ、いいねえー!そしたらね、君たち!君らも決めなさいよ。風紀委員の長と副。どうする?勝ったら副で行く?。」
「上等じゃないの。ビンちゃんたちと同じでいいわよ!。」
「いいですとも!受けましょう!。」
「よーしよしよし!なんだよーー!トモちゃんのクラスー!最高じゃないか!。」
シエンちゃんが露骨に喜んでいるよ。
「にしししし、そうでしょ?いいクラスでしょ?。」
「ちょっとあんた、スニーって言ったかしら?この先生、どんな人なの?ちょっと怖いんだけど。」
「私だって知らないわよ。でも、先生?風紀委員ってなに?」
「それは君、読んで字のごとし、クラスの風紀を守る委員。大事な役割だ。」
「あら、そうなんだ先生。それじゃあ、そちらの強欲猫さんにさせるのはまずいのじゃなくて?。」
「誰が強欲猫よ!胸なし女!。」
「なによっ!。」
「ちょっと待て待て。スニー、ネージュはそんな風だが中身は逆だと先生は思うなあ。まあ、戦ってわかることもあるさ、さあ、ついた校庭だ。」
「よし、我が結界を張ってやろう。せっかくの新校舎に傷をつけては大変だからな。」
「ありがとシエンちゃん。身を守る自信のない者は先生達の近くに来い。それから、この勝負、殺し合いじゃないからな、そこは注意してくれよ。じゃあ、始めるか。」
「ちょっと先生、私たちから先にやってもいいかしら。」
「別に構わないけど、ネージュはどうなの?。」
「望むところって感じ?やったろうじゃないのよ。」
「フライリフとエイヘッズはどうだ?。」
「別にいいけど、スニーはツエーぞ?いいのかよエイヘッズ?彼女が怪我しちまってもよ。」
「ひひひ、見たいねーあいつが痛い目見るところ。金払ってもみたいね。」
エイヘッズの言い分にフライリフは毒気を抜かれたように肩をすくめた。
「じゃあ、まずは副風紀委員長の座をかけた戦い!スニー対ネージュ!始め!。」
さあ、活きがいい新入生よ思う存分その力を発散しろ!




