第十七撃
「ハロー、マイ・フレンド!」
再びスージーがジムに遊びにやってきたものだから、友麻の胸は苛立ちに満ちた。
苛立ちの正体はわかっている。傷つけたはずなのにいまはくるしんだそぶりも見せないその姿にもやもやした感情を覚えているのである。たしかにこちらの言葉にその場では怒りを見せた。しかしながらすぐにこうしてなにごともなかったようにニコニコとしているのはこちらにとってはひたすらつらい。
そういう姿を見せないからといって傷ついていないという保証などない。だから友麻の葛藤をわかってやっている可能性があるのではないかとさえ疑った。
だがそこまでして友麻を慕ってくるその気持ちは理解できなかった。自分にそのような価値があるかと言われれば、自身の評価ではまったくありえなかった。
なんにせよ圧倒的に悪いのは、
(あたし、だよな)
それはわかっている。
さらにいえばサンドラからスージーに対してやさしくしてやるようにも言われているから、それなりに考えるところはあった。だから今日はプレゼントをしてみようかと思っていた。
「うらやましい?」
スージーが両手で自分の胸を持ち上げてみせてくる。
「うぇっ?」
考えごとをしていたところにわけのわからないことを言われたものだから妙な声を上げてしまった。
「ユーマ、わたしの胸じっと見てて、うらやましいのかなって」
舌打ちしてしまった。友麻の胸は小さいのである。
「ごめんねごめんねそんなつもりじゃないのおっ!」
失言を詫びつつスージーが抱きついてくる。
まあたしかに〈ZGA〉に最適な肉体づくりのために食事をコントロールしているこちらとは違って好きなように食事ができるといっているスージーとは育ちかたがかわってくるのも当然といえば当然だった。スージー自身は食事がそれほど好きではないと言っていたが、そうは言っても一般人が言う好きではないレベルとこちらの運動量と食事量の比較を言うなら差がついても当然だった。
「ユーマ黙ってるぅぅっ。
ごめんねごめんねっ」
「っせえな。
別にそんなに怒ってねえよ」
引きはがしつつ、
「まあいいや。
きょうはお前に渡したいものがあるんだ」
「何何何何?」
餌を目の前にした子犬のように目をキラキラと輝かせている。
「何をあげたら一番よろこぶのかいろいろ迷ったけど、結局これが最強だという結論に至ったんだけどよ」
「ユーマがくれるものなら何でも一番だよっ」
いちいちポジティブなことを言われるのにも邪魔くささを覚えないでもなかったが、今日はそれは我慢して、拳を振りつつ足をじたばたさせているスージーに笑顔を向けて、
「なんなの?
何くれるの?」
「お・か・ね!
いくら欲しい?」