魔法陣で空飛ぶエルフより「挫折」
本編の名前を作者が忘れるくらい雑に書いたことを今更思い知った
04 所詮、魔法陣は魔法だということ
魔法陣は優秀だ
全ての魔法が使えると言っても過言ではないからだ
その研究をしている僕はなんでも出来るという全能感を感じていた
全部が全部できる訳では無いがコレと決めたことを研究すればある程度の成果のある魔法陣を得ることが出来ていたからだ
そういうことでは未来は明るかった
つい数日前までは
◇
魔法使い特有の病気というものがある
ある程度なら治療の魔法、癒しの魔法で治せる
怪我ならもはや痕も残さず治せる
さすがに欠損は大変だが
空気中のウイルスや病原菌なども癒しの魔法に弱かったりと魔法使いは割と病気とは無縁なのだ
さて、特有の病気とは
魔法石の発生だ
発生場所が体内という病気
詳しい発生原因なども分かっておらず
共通の特徴は
魔法使いとして優秀なほど発生しやすい、ということだ
その病気は
いつの間にか体内に魔法石が発生して
少しづつ体調不良を起こし、魔法にも乱れが生じる
この段階で気がつけたならば
一度、魔力枯渇を起こせば治るという
魔法石は濃い魔力が原因で生み出され、枯渇すれば自然と溶けていくらしい
日に日に大きくなりコロコロと体内で違和感を感じるようになる
その段階でもう遅く、体内の魔力を枯渇させた所では、消滅まで行かずにむしろ魔力の回復に乗じて大きくなるため、魔力枯渇は悪化させるのだ
そして、最後は体の機能を物理的に塞き止め、死に至らせる
早くに体内の異常を感知できる魔法陣を作ればよかった
そうすれば、僕の力でマオを助けることが出来たのに
◇
コウ、です
魔法陣を研究していて、魔剣を作ることができるエルフです
まぁそんなの研究していても命の恩人一人救うことは出来ないのですけどね?
「…マオ」
マオの違和感、というのは今思えば随分と前から言っていた
しかし、大丈夫とあしらわれ、僕も特に気にしてなかった
異常が起きたのは数日前で、急な魔力の乱れでマオが倒れたのだ
その時に急いで透過や、感知、自分の魔力を反響させる魔法陣を組み合わせた
体内の異常を感知する魔法陣を作った
その結果から分かったのは随分と大きな魔法石がマオの体内にある事だった
僕は直ぐに対策を行った
マオを寝かせ、魔力を使わないように言った
魔素と魔力が急に変動しないようにする魔法陣を作り、組み込んだ装置を置いた
対策と言ってもその程度しか出来なかったのだが
支援者、僕を住まわせてくれた人、いわゆるパトロンに報告した
見舞いにも来てくれたが、やはり手遅れとのこと
安静にしているのにマオの魔力は乱れが生じるらしく、以前と比べて体は細く、弱々しくなっていった
その間、マオの側にいながらも魔法陣の研究をした
様々な魔法陣を作り上げたが
マオが良くなる魔法陣は生み出されなかった
…あと考えうるは時間や空間、運命などの理に触れる魔法しかやりどころがない
そのヒントすら掴めてないが
◇
「コウ、私は大丈夫だから、コウと話がしたいな…」
弱々しい声を出すマオ
その声は今にも消えてなくなってしまうのでは、と思わせる声だ
少し前は今は絶対に完成させるから、と魔法陣を研究していたが
それも理の前では諦めすらついた
「マオ…」
細くなってしまった手を握る
どうせ治す魔法陣を完成させることが無理ならもっと話せばよかったと今は後悔が大きい
所詮、魔法陣は魔法陣だ
万能でも完全でもない
「コウと初めて会ったのは、ううん、あの時はコウは気を失ってたね、川で衰弱してたのを私が助けた、えへ、助けれて良かったなぁ」
「…うん、マオありがとう」
そのあとは記憶喪失の発覚や
ドワーフの師匠に剣作りを教えてもらったりしたのだ
「楽しかったなぁ…」
…マオ
「なんでも、なんでもするからさ…死なないでくれよ」
長く、いや、それこそ記憶喪失が発覚した時からずっとマオとは一緒だった
僕の人生でマオが欠けた時は一度もない
いつかは離れてしまうにせよ、こんな別れ方なんて嫌だ
「あやー、なんでもなんて言うもんじゃないよ?」
「マオが死なないなら、なんでもやるさ」
命を賭してでも
「そう…じゃあコウの好きな人を教えてよ」
「好きな人…?」
そもそも自分は人との関わりが多くない
「マオも、オッサンもパトロンも少し性格はキツイけどその娘も…」
「ううん、そうじゃなくて」
…?
「そっかー、コウは人との関わりが少なすぎたかな…あはは…お客さんも、私たちもみんな大事なんだね」
…?当たり前だ、しかし、マオが何かを伝えたいということは分かったのだが…
「コウは子どもを作りたくない?」
「…はえ?」
「そういう意味での好きな人、教えてよ」
「あっ…ばっ……うぇ?え?」
こっ、こ、こども!?
な、なな、何をおっしゃっておりますのですか!?
「コウ、私の秘密を教えてあげる」
「うぇ…?」
「私は未来が見えてたの、特異魔法で」
未来が…はぁ…
あれ?それって理の魔法のこと?
「もぅ…もうすぐお迎えが来ちゃうから、ちゃんと聞いて?」
…はいっ…はい!
「私の未来は一度ここから見えなくなるの、けど、見えなくなったからと言って死ぬわけじゃない、いいえ、死んでたまるものですか」
その言葉には力強さがあった
「所詮は魔法よ、コウ、魔法陣の研究を止めないで、私がいなくなったぐらいで、落ちぶれたら許さないんだから」
「…あのぉ、ちゃんとノックしましたからね?お迎えに上がりましたよ、マオさん」
後ろから声が聞こえた
振り向くと見た目子どもにも間違えるくらいの背の高さの女性がいた
「イヴァン様から詳しくは聞いてると思いますが…」
いえ、全く聞いてないですよ…多分
「よろしくね、ティア」
マオがそう言う
…あれ?お迎えってそっちのお迎え?
マオの方を向くと唇を奪われた
…!?
「コウ、ありがとう、大好きだよ、じゃ、またね」
フラフラとティアの元へ行くマオ
大好きとは大好きなのだろう?
大好き?
完全に意識を刈り取られ、呆然としていた
「では、これで失礼します」
ティアはそう言って転移の光に包まれた
苦しそうにこちらに笑顔を向けていたマオと共に
◇
魔法陣は所詮は魔法を形にしたものだ
魔法で出来ないなら魔法陣ではどうしようもない
しかし、得意魔法という、特殊な魔法の記録には
過去にとんだもの、時空を超えた者
空間を割いた者、運命を変えた者
の記録、伝承がある
この世の理に魔法は触れることが出来るのだ
いつか自分の好きな人は言っていた
魔法で出来ないことなんてないと
魔法は魔法ゆえに魔法なのだ
所詮は魔法、されど魔法だ
打ちひしがれてる暇はない
足踏みする余裕はない
歩みを止めることは自分が許さない
魔法があるのだから、あるからこそ
魔法を形にした魔法陣の研究を辞めるわけにはいかない
魔法を組み合わせることが出来て、それを積み重ねることが出来る魔法陣に不可能はない
さて、それを証明しようか
ここから続く話を書いたら時系列ごっちゃになって爆発したので落とした
普通に本編ネタバレあったりするけどどうせこの続きないから仕方ないね