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マタイ降伏 そして 消失


「!!」


その時、マタイの船に異変が起きた。

船の一角から煙が上がったのだ。 かすかに爆発音のようなものも聞こえてきた。

「どうしたんだ?」

センが戸惑う。

「まさか…」

キホクは強い不安に襲われた。

船の中でアリシアが暴れているのでは…? しかしそんな事をしたら彼女までもが…

そんな事を考えている間にも、マタイの船からは次々と黒煙と炎が上がっていた。


アリシアならやりかねない。


そのうちマタイの船が大きく傾いた。

軌道修正などという生易しいものではなく、明らかにバランスを失った傾き方だった。

「落ちるぞ!」

センが声を上げた。

「アリシア!!」

「キホク! 近づいちゃダメだ! 巻き込まれるぞ!!」

ただ見ていることしか出来ない。

2人を乗せた2羽は崩れ行くマタイの船の周りを何度も旋回していた。

『アリシア、頼む! 無事で居てくれ!!』

キホクは心の中で必死に祈った。

そんな祈りを切り裂くように、マタイの船は怒号を上げてマタイの城へと墜落して行った。 まるでスローモーションのように崩れ落ちていく城と船。

爆音と黒煙が広がり、マタイ国は闇と火に包まれた。

『助からない…』

思いたくない事が次々と頭をよぎっていた。

唇を噛みしめ、キホクはツシロにしがみ付くように崩れた。

「アリシアーーーーー!!」

それを悲痛に見つめるセン。

マタイを包む黒煙は、スナの国からも見ることが出来た。

「姉さ…ん……」

フリージアとラビリスは愕然としていた。

ジアスもまた、眉をしかめてジッと黒煙を見つめていた。



★★★


スナの国が負った被害も決して小さくはなかった。 犠牲者も何十人と出ていた。

その復興作業が続く中、マタイ国から一通の封書が届いた。


≪ 貴国の持つ力、マタイの持つそれより考えにも及ばぬほど強大と示された。 認めざるを得ないほどの損害を負った今、貴国へは奇襲も武力による侵略行使も無意味となり。

貴国の姫君を失った今、貴国にとっても大いなる痛手を負っている事と思われ。

自国の愚かさを詫び、数日のうちに使いを向かわせる。

話し合いにて、両国の繁栄に向けての協力を致したいと考える。

なお、貴国の致し申す事に何の異論も唱えぬ事を誓うこととする。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マタイ国王ースザクー≫


すなわちマタイ国の、スナ国に対する降伏の書面であった。


後にマタイ国は、スナ国の姫フリージアが実は健在であることを知り、再びスナ国の力の奥深さを思い知るのであった。


そして、極秘で行われた捜索の結果、フリージアの身代わりとなったアリシアの遺体や遺留品は、なにひとつ残っていなかった事も、ここで述べておこう…。




★ 第一章終了 ★



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