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五作目「生存力」


俺が目が覚めた空間は都会のような場所だった。


何十階建てだかわからないような高層ビルが立ち並び、地上ではネオンの明かりが煌めいてる。


空中には線路もないのに、電車が走り回っている。


そして、動物がまるで人間のように二足歩行をしながら店へ呼び込みをしたり、笑いながら話したりしている。


おしゃれな服をきたり、サングラスをつけたり、つけまつげや化粧をしている奴もいる。


「人間のように」と言ったが人間なんて一人もいやしない。


かく言う俺も、白色の毛並みが自慢唯の猫だ。


ん…人間…「人間」??「人間」ってなんだ?


どこからそんな言葉が思いついたんだろう。


聞いたことがあるような、よく知っているような、気がする。


俺が肉球のついた手で頭を抱えていると、ガールフレンドのナメクジが拗ねたように近づいてきた。


そうだ、今日はガールフレンドとデートの約束をしていた。


俺は愛しのナメクジに「ごめんよハニー」とキスをして、二人でこの平和な夜の街で美味しいディナーを食べて乾杯をした。


俺の彼女は塩が苦手だから食事が大変だが、ここのシェフのゴキブリは育ちが良い博識な紳士だから、塩を使わない美味しい料理を作ってくれる。


ガールフレンドのナメクジは俺の目の前で美味しそうにイノシシサラダとキャットミートパスタを食べている。


俺は好物のクジラの姿焼きを食べながら、ナメクジに「人間」について話した。


ナメクジは俺のわけのわからない話も、うんうんと聞いてくれた。


ゴキブリシェフも、それは面白そうな生き物ですね、と人間の話を笑いながら聴いてくれた。


俺は人間は、この都会のすみっこの壁にある洞窟の中にいる気がしてきた。


放置されてる無法地帯。


未確認生物がいるにはもってこいのシチュエーションだ。


酒の酔いもあって、そのまま3人で都会のすみっこに向かう。


手入れされていない荒れ果てた草を歩き進めると、古びた洞窟があった。


洞窟のなかにはいり、進んでいく。


洞窟はまるで山のように登っていく感覚だ。


ゴキブリシェフは「なにもないですね」と呟いたが俺は違和感でいっぱいだった。


手入れされていないはずの洞窟の内部は一面が鉄で覆われていて、赤色の光がうっすら光っている。


明らかに人為的だ。


ナメクジのマイハニーは足が疲れたのか俺の方でぐったらしている。


洞窟に入ってから、マイハニーに2本の足が生えてきたのだ。


ゴキブリシェフも、黒光りしていた身体が肌色になってきた。


俺も、歩き進めるたびに毛が抜け落ちてきている。


俺たちは何か大事なことを忘れてる。


それが洞窟を抜ければわかるような気がした。


5日目になって、もうだいぶ洞窟を進んだような気がした。


俺たちが休んでいると、近くから物音が聞こえた。


誰かがいる。


動物の国から抜け出さないための見張りか。


誰かは機械音を出しながら俺たちへ近づいてきた。


ハクセンノウチガワニオサガリ。


ハクセンノウチガワニオサガリ。


俺たちは機械に見つからないように、隠れながらさらに洞窟を進む。


やがて光が見えた。


俺たちは人間だったのだ!


何故こんな大事なことを忘れていたのだろう。


俺たちは光に向かって足を踏み出した。





目を開けるとそこは都会のような空間だった。


たくさんの高層ビルが立ち並んでいる。


そして動物がまるで人間のように…。


「人間」?「人間」ってなんだ??


聞いたことがあるのに分からない言葉が気になり、俺が肉球のついた手で頭を抱えていると、俺の肩に乗ったナメクジのガールフレンドが、なにをしてるのよ大事なデート中よ、と拗ねたように言った。


行きつけの店のゴキブリシェフが、ディナーにはぜひうちをごひいきに、と挨拶をしてきた。




「生存力」おわり

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