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三作目「星」


レリアは京都を歩いていました。

京都では道の周りにたくさんの店が立ち並び、いろんな商品が売られています。


レリアはそこで、白髪の老人に話しかけられました。老人は、出店の店主のようです。

真っ赤な布を被せた机の上に、色とりどりのおふだが置かれています。


「お嬢さん、おふだはいらないか?星の神様が宿っているんだよ」


レリアは、返事をしたらつけ込まれると思い、目を合わせないようにして、老人を無視して先を進みました。


おふだを買ったら、お金が減ってしまいます。レリアはお金が大事だから、おふだを買いたくありませんでした。


歩いて、歩いて、階段を降りて。

ふと、パンの甘い香りに気がつきました。

階段を降りたすぐ側に、パン屋さんがあったからです。レリアはお腹が空いたので、パン屋さんに入りました。

パン屋さんは人気の店らしく、お客さんがレリアの他にも多くいます。

パン屋の店長がパンの解説をしている最中で、そこにお客さんたちが集っていました。

レリアも近づいて、軽く爪先立ちをして、店長の解説を見ようとします。


店長は蝶の幼虫や蛾の幼虫や蝉の幼虫や甲虫の幼虫や、とにかくたくさんの幼虫の形のパンを作ってそれを並べてました。

レリアはパンは好きだけど、虫は好きじゃないから、食べたくないなと思いました。


そんなレリアの、右横のお兄さんが突然挙手をしました。

店長は「はい、では佐藤くんどうぞ」と、虫パンを作る手を止めて言いました。

お兄さんは佐藤になりました。


「店長!!ヒトデの立髪が違います!!」


佐藤は虫パンの群れの隣に置かれているヒトデのパンを指差して言いました。


「「「「指を刺すな!!佐藤!!」」」」


周りの客からは大ブーイングです。


「すみません!!店長、あちらのヒトデの立髪が違います!!」


佐藤はヒトデのパンの方向に丁寧に手を開いて、言い直しました。

それを聞いたお客さんも「たしかに」「そうだったかな…?」「言われてみれば」とざわざわし始めました。


レリアもヒトデのパンを見ましたが、そもそもレリアは立髪の生えたヒトデを見たことがないから、違いがわかりません。


「ヒトデの立髪は桃色です!!店長のヒトデは水色です!!これは違法ではないのですか!?」


佐藤はまくしたてます。

店長も、違法と聞いて、焦ったようです。


「違うんだ…わ、私は桃色の立髪をつくったんだ。なぜだ?これは事件だ!佐藤!レリア!調べるんだ!」


どうやら事件のようです。

店長は佐藤とレリアを指名して、お兄さんには山を、レリアには海を調べるようにと言いました。

店長は、近くの学校の虫拾いクラブの名誉会長なので、この後はクラブの子供たちの虫拾いをサポートするため、この難解な事件を調べれないのです。


レリアは、店長からもらった船の二時間乗り放題チケットを持って、海へ向かいました。


海につくと、大きな大きな船がありました。

レリアはチケットを見せ、船に乗りました。

船乗りさんに地図を渡され「二時間乗り放題チケットを使いますと、今後は乗れませんがよろしいですか?今ならプラス2円で永住チケットにできますが?」と確認され、「二時間で充分です」と答えました。

船乗りさんは笑って「まあ永住チケットだと今後生涯船から離れたら死にますからね、あっはっは!!」と言いました。

制限時間は二時間です、無駄にはできません。

船に乗るのは初めてなのでレリアはどきどきしながら船の中をさっそく探検しました。

船乗りさんから貰った地図によると、裁判所や遊戯場など、いろんな施設があるようです。レリアは遊戯場を目指しました。


遊戯場は、まあるいドームのようで、大きな観覧車と、ガラス張りの四角い部屋があります。ガラスの部屋は中が丸見えで、おじさんたちが中で囲碁をしていたり、腹筋をしていたりと様々です。

一方、大きな観覧車は、人工観覧車で、みんなが人間の力で頑張って回しています。

あみあみの縄を使って登って、そこから、力を入れて少しづつ、少しづつ、たくさんの人が頑張ってぐるんぐるん回しています。


レリアは自分も人工観覧車を動かしたいと思いました。あみあみの縄をしっかりにぎりしめ、少しづつ登っていきます。

途中で疲れた時、後ろからレリアより年下の女の子が登っているのを目にして、休んでる場合じゃないし頑張ろうと思いました。


やっとのことで登り切ると、観覧車の一番上のエリアです。ここから、観覧車に飛び乗って、ぐるんぐるん回せば、人工観覧車を動かす一員になれるのです。


「どっちに乗るの?」


後ろからきた年下の女の子にレリアは声をかけられました。


「…?」


「観覧車と滑り台、どっちに乗るの?」


左の観覧車と右の滑り台、レリアがどっちにするのか女の子は聞きました。

レリアは質問されて初めて滑り台の存在に気がつきました。

滑り台はこの高い場所から海へ繋がっていて、滑り切ると海にダイブできます。


レリアは今まで観覧車のために登ったけれど、滑り台も楽しそうで、迷いました。


「あなたはどっちにのるの?」


レリアは女の子に聞きました。


「滑り台。観覧車は死体のためだから、あんまり好きじゃないから」


女の子は答えました。観覧車を動かしてるのは死んでしまった星を蘇らせる儀式で、女の子はそれを非現実的だと言います。

昔、観覧車は星の力で動いていいました。

でもある日、星が死んで、観覧車は動かなくなりました。それを受け入れられない船の永住チケットを持つ住人たちが、自分たちの力で無理矢理観覧車を回してるのです。

星が生きていれば、永住チケットを持つ人たちも船から降りれることができたから。


「一度死んでしまったのに、いくら私たちが観覧車を回したからといって星が蘇るわけないのにね」


女の子はその年齢にそぐわない表情をして吐き捨てるように言ってから、レリアの手を引いて、一緒に落ちようと滑り台に引っ張りました。


レリアはされるがままに女の子と滑り台を落ちていきます。やがて、ざぶーん、と海面に落ち、梯子を使って船に戻りました。


時計を見ると、一時間50分経っています。

女の子はレリアに「滑り台楽しかったね!また遊んでね!」と手を振って部屋に戻りました。レリアはあと10分したら二度とこの船に乗れないと分かっていたので、女の子になんて返事をしたらいいのかわかりませんでした。


船乗りさんがやってきて、レリアに「残り時間10分です」と告げます。

レリアはわかりましたと言って入口から出ました。船乗りさんは笑いながら「船が出発する前でよかったですね!出発していたら海の中で降りなきゃですよ!あっはっは!」と言いました。


「この船はいつ出発するんですか?」


「星が生き返ってからですね!星が死んだので、観覧車も船も動かないんですよ!まあ止まってから150年経つので、自分が生まれる前の話ですがね!!あっはっは!」



レリアは船から降りて京都の街を歩きます。


京都では道の周りにたくさんの店が立ち並び、いろんな商品が売られています。


レリアはそこで、白髪の老人に話しかけられました。老人は、出店の店主のようです。

真っ赤な布を被せた机の上に、色とりどりのおふだが置かれています。


「お嬢さん、おふだはいらないか?星の神様が宿っているんだよ」



レリアは、返事をしたらつけ込まれると思い、目を合わせないようにして、老人を無視して先を進みました。



「ほし」おわり


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