二作目「褪」
目が覚める。今日がはじまる。
今日も学校に行かなきゃ。行かなきゃ。
私は制服に着替えてスクールバスに乗った。
なのにスクールバスはいつまでたっても学校につかない。学校に行くためのバスなのに学校につかない。嫌な夢。
私は運転手の頭を掴んで2つに割いた。運転手の泣き声がうるさくて。うるさくて。
目が覚める。嫌な夢を見た。
今日も学校に行かなきゃ。行かなきゃ。
私は制服に着替えていたら、部屋の扉を叩く音が聞こえ、ママが部屋に来た。
ママは私に「今日は雨が降るから学校は休みよ、花ちゃん」と言った。
私は嬉しくてママに抱きついた。
おはよう、ママ。だいすきよ、私のママ。
私はママと二人で朝ごはんを食べて、たくさんたくさんお話をした。
優しく微笑んで私の話を聴いてくれたママ。
ああ、なんて幸せなんだろう。
ママがいる。私のママ。
昨日、死んでしまった私のママ。
幸せすぎて、「まるで夢みたい」
私がそれを認識した途端、ママの目はゆっくり、じわじわと、どんどん大きくなって顔からはみ出していく。ママの口角が異常なほどに大きく上がる。ママじゃない。ママじゃなくなった。夢になってしまった。
私は泣き叫んだ。ママは笑っていた。
ケタケタ、ケタケタ。うるさくて。
目が覚める。嫌な夢を見た。
今日も学校に行かなきゃ。行かなきゃ。
私は制服に着替えて一階に降りる。
「おはよう、花ちゃん」
だいすきなママが優しく微笑んでくれた。
今日も私の幸せな1日がはじまる。
「さめ」おわり