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銀ノ閃光  作者: 若葉 美咲
2.ファミリー
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2-3 自分の部屋

「ここが家だよ」

 アドルフォの言葉に顔を上げれば、清潔感溢れる家があった。

「わあ、キレイ! それに新しそう!」

 ミリィが目を輝かせた。その通りで、案内された家は、周りの住宅街と比べれば新しいだろう。壁も窓も綺麗だ。庭の芝生だって、まだブロックだったころの名残が見える。

「この都市じゃ、銀遊士が中心だからね。見習いである僕らにも期待がかかってることさ」

 アドルフォが苦笑しながら言った。

「ま、国としては銀遊士を増やしたいからね。多少は特別扱いをするんでしょう。せいぜい頑張りなさい」

 グレイシャが短くため息を吐き出す。銀遊士になることは誇りのはずなのに。選ばれた人しかできない職業だというのに。ファミリーの仲間である彼らにとっても銀遊士になることが重圧でしかないようにエリックの目には映った。

 銀遊士になることに対し、ワクワクしているのが自分だけのようで、ほんの少しだけ寂しくもある。だけど、それは気のせいであれ、と言い聞かせる。

「まあ、普通の生活をするってことに対しては何の心配もいらないってこと。だから、うん。気楽にね」

 アドルフォがエリックに気を使ってか、そう付け足してくれた。

 家の中は玄関があって、土間があった。廊下には扉が三つ。真ん中が共同スペースの扉、右側が女性たちの部屋。左側の扉が男性たちの部屋になっているとアドルフォが教えてくれた。

 共同スペースには台所、大きな絵画の付いたリビング、食堂がある。料理は当番制らしいので、だれがどんな料理を作ってくれるのか、楽しみが広がる。

 構造としては左右対称になっているらしく、女性用スペースも男性用スペースも向きが逆なだけで、部屋の数も構造もそう変わらないことを説明された。もちろん、異性のスペースに立ち入ることは禁止だという。当たり前だけど一応ね、とアドルフォは笑っていた。

 それから、ミリィと別れ、エリックはアドルフォとカルロスの後に続いて、男性用スペースを案内してもらった。男だけのスペースだと言うのに、意外にもきちんと掃除がいきわたっているように見える。

「こっちが洗面所。そっちの木の扉がトイレで、こっちの曇りガラスのドアがお風呂ね。洗濯機はここにあるから」

 アドルフォが指をさしながらエリックに丁寧に教えてくれる。

 そして、引き戸を閉め、二階へと行く。

「手前から、僕、カルロス、そして、君の部屋になるよ。荷物をおいて、整理してからリビングへおいで」

 そう言われて、エリックは自分の部屋に一人になった。自分だけの部屋、というものを持ったことが無かったので、少しだけ持て余す。どんなふうにしても、誰にも口を出されない。そう思うと、少しだけ楽しみになる。

 リュックをおろし、中から色々取り出した。とは言っても、持ってきたものはそんなには多くない。使い込んだ剣と服。それから手持ちのお金と、思い出の品。必要なものは後で必要になったら買えばいいかと、ほとんど手荷物を持ってこなかった。

 正直、そこまで片付けは得意じゃない。なので、適当に場所を決めておく。多分、忙しくなったら散らかりそうではあるが、最初が肝心だ。

 部屋はエリックからしてみれば広いものだった。机といすがある。そして、ベッドとクローゼット。そして、一人用のソファと黄色の月精石がはまったラジオまであった。

 赤い月精石の着いた湯沸かし器と青い鉱石で出来た冷蔵庫もあるので、軽い炊事ならできるかもしれない。

「すっげー」

 自分が田舎育ちだというのは自覚していたが、こうも部屋が広いと持て余しそうである。エリックは瞬きを繰り返す。

 それから、気分を変えようと部屋についているベランダに出てみる。右のベランダは近い。おそらく、カルロスの部屋だろう。

「お隣さんはエリックだったんだね」

 少しずつ聞きなれてきたミリィの声がした。

 びっくりして、左側を見ればミリィが笑っていた。

 左のベランダとはそこそこ距離がある。手を伸ばしても、届かないだろう。

「ミリィの部屋はそこなんだね。ちょっと安心するかも」

 まだ話すのにはぎこちないが、ちょっとずつ慣れてくるのだろう。エリックはミリィに笑いかけた。

 春の夕暮れは霞がかっていてとても綺麗だった。


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