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銀ノ閃光  作者: 若葉 美咲
7.《ディスター・クイーン》との決戦
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7-5 戦うものの覚悟

 全ての動きがゆっくりに見えた。

 アークがエリックを引っ張った。エリックの体は後ろへと。そして、変わりにアークが反動で前へと出た。

 次の瞬間には、真っ赤な血の粒が宙に舞う。美しくも禍々しい赤。飛び散ったそれらは地面へ、柱へ、そして、エリックの頬へと付着した。

 エリックは目を見開いた。

「――アーク!」

 引きつった声でエリックはアークの名前を呼んだ。

 《ディスター・クイーン》の鋭い爪が、アークの体を貫通している。エリックの腕よりも太さがある鍵爪が、アークの背中から飛び出している。

 ぞっとする光景で、でも、エリックは見ていることしかできない。

 ゆっくりと、爪が引き抜かれていく。

 アークが血反吐を地面にぶちまけた。

 赤、赤、赤、あか、あか、あか、あ、か……。

 したたり落ちる、赤色。広がっていく、死の色。エリックは放心してしまった。目の前の現実が、受け入れられない。

 傷は大きく、流れ出ている血も尋常ではない。人間の致死量を超えている。

 それでも、アークは《ディスター・クイーン》を睨んで立っていた。


「形状は槍であり、鎌。

    その本質は吸血。役割は死。

       主の血と命役に従い、その真価を発揮しろ、

                  ――――ブラッドファウシル!」


 アークの低い言葉に、彼の持つ槍がまるで蜃気楼のように揺らめいた。やがて意志を持つ生き物ように歪み始める。

 黒い穂先は徐々に細くなり、それはやがて禍々しい弧を描いた。柄にはまっている真っ赤な月精石が妖しげに輝きながら、辺りに飛び散ったアークの血を吸い込んでいく。

「これが、貴宝……」

 国の宝である武器の一つ。そして、その適合者で使い手であるアーク。

 それに選ばれたから、アークは銀遊士になったのだ、とカルロスが言っていたことをエリックははっきりと思いだした。

 黒いロングコートが揺れる。血を吸い上げて、さらに赤黒い光を纏う鎌。

 

 ――死神。


 自然とこの二文字が、エリックの頭に浮かんだ。

「ここで、葬る!」

 アークが静かに宣言して、走り出した。

 おびただしい血を流しながら、《ディスター・クイーン》に挑んでいく。

 《ディスター・クイーン》の角が一刀両断された。初めて与えられた大きなダメージ。《ディスター・クイーン》がさらに怒ったのが分かった。

 空気が痺れそうなほどに鋭い。

 それでも、アークは目にも止まらない速さで、攻撃を繰り返す。大きな黒い鎌。翻る黒いコート。

 ――魂を刈り取る死神。

 コードネームの意味がエリックにもはっきり分かった。

 《ディスター・クイーン》から血が噴き出した。

 あと一息。

 エリックが祈るような心地で見守る中、アークは片膝を付いた。息が上がり、鎌に縋っていないと立てない様子だ。

 すでにダメージを受けすぎていた。血は流れ出す端から槍にはめ込まれた月精石に吸い込まれていくから、正しい量は分からないが、相当な血液を持っていかれているはずだ。手は震え、もう力が入らないようだ。

 それでも、アークは立ち上がろうとした。

「無茶だ!」

 エリックは叫んだ。

 アークの怪我の状態は酷い。それ以上、無理矢理進んだら、死んでしまう。

「い、いったん、引きましょう! 体制を立て直すんです!」

 必死になって訴える。

「ここで、倒さなくても……!」

 アークが《ディスター・クイーン》の咆哮でバランスを崩した。

 危ない、と思うものの、エリックの体はやっぱり動いてはくれない。

 アークは吹き飛ばされないように踏ん張っていた。地面に二本の線がくっきりと描かれていた。

「それじゃ、駄目なんだ」

 アークが口を開く。その口端から、血が零れていく。

「ここで、俺が……銀遊士が逃げたら、誰が世界を護るんだよっ!?」

 普段静かな口調のアークが声を上げて叫んだ。


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