4-11 ダンジョンへ乗り込んで
ダンジョンの中は学習用のダンジョンとは違い、乾燥していた。
土壁に触れてみる。やはり乾いている。少々固く、簡単には崩れないようだった。力を込めて押しても、少しも削れない。
「こちらエリック。ダンジョンの入口に潜入。……モンスターの影は今のところ、そんなにない感じです」
腕輪の通信機能で報告する。今のところ周りにモンスターはいないようだ。気配を感じられない。全部、地上に出ているのだろうか。
ミリィと背中合わせになりながら、周囲の警戒は怠らないように視線を走らせる。
「さらに、ダンジョン深くに潜入して。《クイーン》を狙えば嫌でもモンスターたちはダンジョン内へ戻らなきゃいけないはずだから」
アドルフォの指示が聞こえた。
通信機の向こう側でグレイシャが再び反対の意見を唱えていたが、通信はそこで一方的に切れてしまう。アドルフォは、エリックとミリィに託しているらしい。
エリックはミリィと顔を見合せた。
「どうする?」
ミリィが聞いてくる。綺麗な黄緑色の瞳には迷いがなかった。おそらく、エリックの答えなどとっくに理解しているに違いない。だって、エリックも同じような目をしているに違いないのだから。
「どうするも、こうするも……、ダンジョンの地下に向かう。もう、あの《クイーン》には負けない!」
改めて言葉にすれば何をしたらいいのか、具体的になった気がした。それと同時に胸の奥で炎が燃える。
今度こそ、絶対に負けられない。
エリックは地下へ続く通路を進む。
地下道は複雑怪奇に曲がりながらも、一本道だった。緩やかに下に向かっている。
エリックとミリィは同じ距離を保ちながら走り続ける。
周りへの警戒も怠らない。
「ここじゃ、射線が通らない!」
ミリィが悔しそうに言葉を漏らした。しかし、こっちの事情など関係ない。バラバラとモンスターたちが姿を現す。
このサソリ型のモンスターが作ったダンジョンの道は折れ曲がっており、狙撃には向かないらしい。
また、いたるところに乾いた土の柱が、いくつもそびえ立っている。
ここではエリックの剣しか役に立たない。
ミリィの銃剣では自分の身を護るので手一杯のようだ。
「大丈夫、ミリィは自分の身を最優先して!」
影から現れたサソリの鋏を受け止め、エリックはミリィに向かって叫んだ。
「分かった。エリック、君も気を付けて!」
ミリィの返事を聞いて安心した。
そして、改めて前のサソリ型に視線を向けた。
「このっ……! これくらいでへばってられないんだよ!」
歯を食いしばり、剣を振り下ろす。毒の尻尾を体を捻って交わし、甲羅の隙間に剣を差し込み刀身を捻る。
サソリ型は血の泡ぶくを吐いて動かなくなった。
倒したサソリ型を飛び越える。
そこには開けた場所があった。
今までの細い通路とは違う。
あちらこちら細い柱や土のつららのようなものが上からも下からも突き出している。
そして、足元にはエリックの体半分ぐらいの卵が踏み場もないぐらいに敷き詰められていた。




