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銀ノ閃光  作者: 若葉 美咲
1.始まり
1/63

プロローグ

 鋭い切っ先。怒りで真っ赤に染まった瞳。

 肉を絶つ強靭な顎。高速で動く昆虫の羽。

 巨大な蜂のモンスターが目の前にいる。

 エリックは静かに目を閉じた。

 ここで死ぬのだ、と思ったのだ。

 二の腕には深い切り傷があり、足も捻ったらしい。赤く腫れあがっていて、走れそうにない。

 もう、動けない。もう、戦えない。

「情けない、な……」

 涙が零れそうだ。キュッと唇を結ぶ。

 しかし、待てども体を貫く痛みは襲ってこなかった。

 空を裂くような音。

 続いて地面が揺れる。

 エリックは恐る恐る目を開けた。

 そして息を飲んだ。


 真っ黒な背中が見えた。大きな、頼もしい背中。


 靡く黒髪。金色の瞳。

 青年はエリックに視線を投げた。

 その人は倒れたエリックとモンスターの間に立ちふさがっていた。

 槍を一線させる。黒い刃がきらり、と煌めいた。

 溢れかえった蜂のモンスターを次々、切り捨てていった。

 エリックはその人を呆然と見上げた。何もできないままで。

 黒いコートの隙間に銀色の呼子笛。


銀遊士アルジェンター!?」


       ~  *  ~


 この世界は月精石フィンリーマリンという鉱石で回っている。

 月精石は色によって働きを変える。

 赤い月精石は部屋を暖め、寒さから人を護り、車輪を回し荷物を運ぶ。身に付ければ、人の筋力を上げ、力仕事を助けてくれる。

 青は、あらゆるものを冷やし、暑さから人や食料を守った。また、水を浄化する作用もあり、渇きに苦しむ村々を救った。

 黄色は光。暗い夜を照らし、活動時間を増やした。また、遠くへと音を運び、人々の絆を強めてくれた。

 そして、稀少な透明。全ての記録や事象を記憶することが可能になった。これにより、人類の文化は一躍した。


 月精石はそれだけ人間史に深くかかわってきた。

 生活の中心とも言える月精石は、モンスターの体内で生成される。人々の文明が反映するとともに需要は増えた。

 しかし、モンスターは凶暴で、人を喰らう。簡単には狩ることはできない。数が増えれば、人々の安寧を脅かすことも多々ある。

 だから、生活と土地を守り、モンスターから月精石を採取することを生業にしている存在を、人々は尊敬と畏怖の念を込めて、――――銀遊士アルジェンターと呼んだ。



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