神様!お慈悲を!!(下)
僕は弟の行く末を案じた。
逃げるように登校した、あの日。
学校でも考えてしまう弟の処遇。
進級に関わる宿題を出せない弟。
出さなかったら、どうなるか?
よくて、留年。悪けりゃ退学。どっちに転んでも最悪な状況の弟。
今、僕は地理の授業だが頭の中で父が怒鳴っている。
「誰が授業料払ってると思ってるんだ。」
怖い。帰って来ないで、父さん。
時間も容赦なく過ぎ。とうとう私は家に帰った。家の玄関が目の前にある。開けたくねえなあ。だが、しかし自分には、ここしか帰る場所がない。意を決して重たい扉を開けた。
…ただいま。あら、母さん意外と穏やかな顔して家計簿つけているね。
「お帰り。」
弟は、いるよね。もしかして、さあ、……。
素っ気ない母の様子を見て、最悪の事態を想定してしまう。
「結局学校に行かなかったの。」
ああ、やっぱり。そうなってしまったか……。
「……。」
弟の宿題どうなったん?
この先は考えたくないなあ。
「出せなかったみたいよ。」
うわ!それじゃあ、………。
留年かな?終わった。弟、元気でな。
「それで今、宿題やってるの。」
????????ちょっと待って、母さん。今なんて言った?
「今、宿題を片付けているの。」
なんで、今さら?提出日は今日でしょ?
「今日学校が休みになったの!」
!!!!!!!なんで!だって今日は、平日ですよ!どうして!?
満面の笑みを浮かべた母に、私は急いで質問をした。
「今日たまたま学校の暖房が壊れたの。」
…………。神様は弟を学校に行かせたかったんだな。
「あ、父さんと同じこと言ってる。」
マジ?で父さんは?どうせ、また電話したんでしょ?
「笑ってた。」
そう言う母も笑っていた。
詳しく話を聞いてみると、弟の学校では朝から学校のボイラーが故障し暖房がつかない。とかいう前代未聞な状況になったので、急きょ学校が休みになったとか。弟は運のいい人だ。神様がいるとしたら感謝。
まあ、これで少しは懲りて勉強を……しなかった。また遊んでるし。おい、ニコニコで吹き替え版バイオばかり見てないで何かしろよ。
なに、大学行って英語の先生になりたい!
……………神様、弟に何させたいんだか?
もう、強く生きて下さい、迷惑掛けずに。
余談
後日、弟の担任と弟の会話(弟談)
担「君、宿題はやってきたかい。」
弟「はい。」
担「昨日のうちにやってきたかい。」
弟「想像にお任せします。」
担「やってなかったね。」
弟「……。」
担「運のいい奴め。」
弟の進級は後日、無事に認可された。
弟が、大学受験をします。兄としては何も起こらないことを祈るのみです。