神様!お慈悲を!!(上)
弟は昔は勉強も出来ていた。しかし当時の弟には、その影はあまり残っていない。
そんな弟がやってくれました。
十二月の寒い冬のときだ。僕は大学受験が迫っていた。だから、弟には問題を起こして欲しくなかった。
その朝、布団の中で目が覚めると静かな緊張が扉の外から伝わってくる。何だ。寝ぼけた頭を覚醒させようと大きく息を吸い、吐き出す。息が部屋の寒さで白いモヤになる。
「あんた、あんなに遊んでいて今頃なの。」
「いやだから、……」
「あたし知らないから、自分で学校に連絡してよ。自分の責任でしょ。」
朝からどうしたんだ。まあ、いいや。何か学校行くとか行かないとか話してるし。声からして母と弟だろう。静かになったころを見計らって居間に行くかな。
よし静かになった。
おはよう。
「おはよう。」
母がやや憮然としながら返事をしてくれた。腕組をし、椅子に腰かけている。その様子から、何かヤバいと感じるものがあった。
今朝の言い争いは、一体どうしたの?
「ああ、それ。あの子ったら宿題が終わってないから学校休みたい、て言うの。」
へ?宿題ごときで?なんだそりゃ。
「ただの宿題じゃないの、進級に関わる宿題なの。」
……………!!!!!!!!ちょっと待って!
あの馬鹿、留年するなよとか思っていたけどついにやりやがった。やめてくれよ。あんな毎日遊び呆けていて大丈夫かなとは思ったけど、駄目だったか。
やばいじゃん!
「うん。」
母は大きく首を縦に振った。母の顔は渋い。
弟もさすがに年貢の納め時かな?しかし、まいったなあ。
そしたら、さすがの弟も観念して学校に行ったかな。
「いま自分の部屋で寝てるの。」
んだそりゃ?確実に留年の道をたどっているぞ。
弟よ、どうしてそうなった。父の金で進学させてもらったのに何考えているんだ。留年するなよ。ストレートに卒業しようよ。
とか僕が考えている間に母は、出張でいない父の携帯に電話する。
何か空気が重たい。母の顔が曇っている。受話器から漏れ聞こえる低い声が怖い。父の声が地獄からの使者の声に聞こえる。
父は弟を電話越しに呼び出した。一通り父と話した弟は、電話を切った。
弟は顔を白くしながら、つぶやいた。
「殺される。」
僕は逃げるように登校した。
父が帰ってくるのはこの時点で二日後だった。
ちなみに、私は留年はしませんが不真面目な学生です。