十五の夜(3)
家に帰ると、騒ぎの張本人が飯を食っている。
しかも、普通に「お帰り。」と返してくる。弟の髪が脂っぽくなってなければ家出をしていたようには見えない。
ちょっと待て!何でいるの……。
弟がすました顔を僕に向けている。
「帰ってきたから。」
至極当然と言わんばかりに弟が返してきた。
学生服も脱がずに僕は、弟から家出中の話を聞いた。
二日間、弟は支笏湖を目指して自転車をこいでいたそうだ。
しかし、千五百円の所持金は食費としてすぐに消えてしまい。一日目の夕飯からは野生のフキや土筆をコンビニ弁当と合わせて食べていたそうだ。
ちょっと待て、フキには少量だが毒があったはずだ。弟よ、体は大丈夫か?
「毒があったんだ。苦かったけど大丈夫だったよ。」
…………まあ、それならいい。それと、夜は冷え込んで眠れなかったとか。
そんなこんなで朝を迎えて、また自転車に乗った。
しかし空腹と睡眠不足で路肩に座り込んだきり動けなくなってしまった。
人影もまばらな山の中の道路。車しか通らない。
そしたら彼の前に車が止まり、「家出かい?」と運転手が声をかけてくれたそうだ。
そして運転手さん、いや若いお兄さんは弟を保護し、家まで送り届けてくれたのだ。
お兄さん、ありがとう!
そして、両親はお兄さんと警察署にお礼を言いに行ってるとのことだった。
………………まあ、……まあ、生きて帰ってきたからいいか。
父さんも母さんも心配してたぞ、手紙くらい残しといてくれよ。
まったく犯罪に巻き込まれたかと思ったよ。
「え、二人とも心配してたの?」
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おにいちゃん、かなしいよ。
「本当に、心配してたの?」
はい、そりゃもう前後不覚になるほど。
「ウソでしょ。」
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親の心も、兄弟の心も、よくわからないもんだと私は思いました。
このまま、終わると弟が親不孝者で終わってしまう。
なので少しだけ、先生に説教されている弟を書いて、この話を終わりにします。
職員室。弟の担任の先生は放課後に、弟を呼びつけた。
先生「急にいなくなるから驚いたよ。」
弟 「すいません。」
先生「何があったかは、話さなくてもいい。」
弟 「?!」
先生「だけど、たくさんの人に迷惑と心配をかけたのを分かっているのかい?」
弟 「わかっています。」
先生「本当に?あんまり、堂々としているから分かっていないように見えるけど。」
弟 「先生や警察の人には迷惑をかけた思っています。」
先生「やっぱり分かってない。」
弟 「そんなことありません。」
先生「お前の親御さんが抜けているだろうが!」
弟 「まさか、心配していたんですか。」
先生「子供のことを心配しない親がいるか!!」
弟 「……。」
先生「お前の捜索届は誰が出した!学校に連絡してきたのは誰だ!頭を下げたのは誰だ!」
弟 「先生たちじゃないんですか?」
先生「違う!全部、お前の親御さんだ。」
弟 「……え。」
先生「帰ったら、謝るように。」
弟 「…はい。」
二日後、弟は両親に謝った。
次回は、弟にせまる留年の危機。追い込まれた弟に神様は微笑んでくれるか?!