十五の夜(2)
家出された当日。
午後十時になっても、弟は帰ってこなかった。僕を含めて帰ってこない弟に家族は怒っていた。
午後十二時。僕らは心配になりだした。不安を抱えたまま就寝した。
弟は帰ってこなかった。
翌日の朝のひとコマ。
寝付けないかと思っていたが、意外と寝つけた。しかし、気分はどんより重い。居間に通じる扉まで重く感じる。両親はすでに起きていた。父は背広、母はいつもの服装にエプロンだ。
おはよう。
「おはよう……。」
返してくれたのは母だけだった。わずかな期待をもって弟の部屋をのぞく。空っぽだった。
帰ってこなかったのか。
「帰ってこなかったの。」
母さんが言った。父さんは無言だった。
私はいつもより丁寧に顔を洗い朝食を食べる。トーストとジャムだけの朝食を。味気ないとは思えない。これだけでも今の胃には重い。
「お父さん、会社は。」
母が尋ねる。
「休む。このあと警察に届けるから。」
父が力なく返す。
二人のやり取りは見ていて余計に気持ちが沈んだ。弟は無事なのだろうか?
まあ、今は学校に行こう。僕にできることは無さそうだし、待つ以外。
そういえば。母さん弁当あるの?
「お父さんから、お金もらって(それで買って)ちょうだい。」
わかった。父さん、弁当代をください。
「ああ。」
父は財布から手元をろくすっぽも見ずに一枚の札を渡してきた。
一万円だった。
私は無言で受け取った。
いろいろとだめだと思った。
学校でのひとコマ。
いつも以上に私は変だったらしい。この日のことはあまり覚えていない。
たしか、友人からこんなことを言われた。
「オリ、なんか今日はいつも以上におかしいよ?」
ひどいなあ。確かに僕は変人だけどそんなこと言わなくたっていいじゃないか。と言いたいが、生返事だけ返しておく。
「やっぱり、変だよ。いつもはもっと面白く反論するのに。」
友人よ。僕の評価はどうなっているんだい?
学校から帰宅したときのひとコマ。
いつもより早く家に帰る。家の扉を開けるとドラマの光景が広がっていた。
「それで、息子さんの荷物がなくなっていたんですね。それじゃあ次に、所持金は(以下略)。」
居間で事情聴取よろしく屈強そうな私服の刑事さん達、それに一部だが制服警官が居間のちゃぶ台で父母と向き合っている。
これ何てドラマ?
まあ、いいや、取りあえず「ただいま」。
「お帰りなさい。」
「お帰り。」
両親は二人とも返事をしてくれた。警察の方々に腰を折って一礼した。
それが終わるやいなや、私は自室に引っ込んだ。
ついに警察まできたか。なんだか笑いたくなった。
夜になり、私は早々と布団に潜り込んだ。この日も意外と寝れた。
次の日。
そして気持が地面にめり込むような朝をもう一回迎えて学校に行った。
そして、学校から帰ってきたら弟が帰宅していた。
いつも通りに帰宅の挨拶をしようとした。結局出来なかったが。
ただい、あ!……。
「もぐもぐ(食事中)。」
弟はいつも通りに居間で飯を食っていた。私は一瞬ではあったが、口をあんぐり開けているしかなかった。
弟は僕のことを不思議そうに見つめていた。
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