中学生の頃好きだった女の子を文章に起こす黒歴史
一人でいるのが辛かった。
久しぶりの学校だった。
一人、相談室で前日にあったテストを受けてるだけだったけどさ、そこにはしばらくぶりに感じる人の気配があったんだ。
壁越しに久しぶりに感じるたくさんの足音、姿、声。
その全てが、みんな画面の向こう側にいるような存在で現実感がなかった。
自分は何か歪んでいるというのが感じられてしまって、僕はほとんどの人に恐怖を感じてしまっていた。
そこにあったのは廊下と相談室を隔てるだけの一枚の壁だけだったけど、僕がそこに混ざるにはあまりにも自分が異質で難しいことなんだって思ってしまった。
大声や笑い声、ひそひそと静かな声で話す声、いろんな音がそこから聴こえてきたんだけど、それが全部怖かった。
怖くて人の声を聞くたびに心臓がどきりと跳ねたんだ。
そんな時に君は唐突に現れた。
カーテンで区切られてたから気付いてなかったけど、君もで同じ部屋でテストを受けてたんだよね
テスト当日に風邪ひいてたんだっけ?
まあそれはどうでもいいんだけどね。
とにかく君は、何かのきまぐれで僕に話しかけてくれたんだ。
その時は君も自分とは別物だと感じたのを覚えている。
君は他の人に比べても君は攻撃的で無遠慮な言葉を使ってきた。
だけどそのくせ妙なところで優しいんだ。
君は他の人よりも特に正直だった。
正直すぎるくらいだったけどさ。
でも、僕はそっちの方が安心できた。
僕が登校するようになって話すようになってもさ、いつも僕にむき出しの感情をぶつけてきたっけ。
嫌だ、やめて、キモい。
この3つは何度も聞いた覚えがあるね。
嫌われるのは嫌だったな。
でも君は僕を突き放したりしなかったね。
違う言葉もよく聞いたよ。
すごい、やるじゃん、ありがとう。
君の言葉はいつも正直だった。
僕は無性にそれが嬉しくて、心のなかで君を女神なんておもってたっけ。
僕は君のそんな真っ直ぐさに向き合えなくてさ、不登校って事を隠して、保健室登校はしてるなんて嘘をついたんだ。
だから、嘘を隠すためにテストが終わってから保健室登校をするようになった。
君にもう一度会いたかったんだ
保健室登校するようになってから君はほとんど毎日昼休みに来てくれたよね。
僕は、君が僕を無視しないならずっと君に話しかけてた。
その度にけっこう罵られたけどさ。
無視はあんまりされなかったっけ。
無性にそれが嬉しかったのを覚えてる。
君は正直だったけどそのことを曲げて妥協することもあったね。
勉強とか作業を手伝おうとすると、やめろとかキモいとか言って突き放そうとしたよね。
だけど僕が盲目的にやりたいって言うとさ。
君は諦めたように仕方ないって言って一緒にやらせてくれた。
終わってみればいつも笑ってありがとうって言ってくれてたね。
今思えば結構僕は迷惑な奴だったと思う。
無理やりと言っていいくらいには強引に手伝ってたからね。
なんのためにって、そりゃ助けるために……うん、嘘だ。
今思えばこれが下心ってやつなんだと思う。
僕は君の感謝を求めてたんだ。
僕が君を信じているように。
君が僕を信じられるようになってほしかったんだ。
でもそれっておかしいのかなって思うようになったんだ。
だって僕はさ。
君が僕に正直な部分が好きなんだ。
だけど、僕が無理やり手伝って作った感謝の言葉なんて正直なものじゃないと思うから。
僕は君の本音は分からない。
だから自分がやりたいことを君にしただけだ。
そのことに感謝を求めてたらさ。
それは僕の嫌いな作り物なんじゃないかって、そう思ったら自分が嫌いになって。
懺悔ってわけじゃないけどさ?
君に僕のこの言葉を聞いてほしくなっちゃった。
……キモい?あ、やっぱり。
だよね、こんな風に変なこと聞かされたらそう思う、よ……ね。
わあ!?
どうしたのさ!?急に抱きついてきちゃって。
……え?
私は正直なんかじゃないって?
いやそんなことないよ?
少なくとも僕は君が正直じゃなかったら君の優しさを信じられなかったよ?
……そういうとこが本当にキモい?
いや事実じゃん、君が優しいのって
……うるさい、バカ?
だよね!僕もこんなのキモいと思う!
だって自分がなんでこんなことしてるか信じられないもん。
自分の胸の内で解決すべき事だと思ったよ。
だけど、僕は気付いた、気付いちゃったんだ。
僕は……さ、君のことを誇張抜きで女神だって思ってた。
あのどん底から君の気まぐれ一つで僕は希望を持てたんだ。
あの時はそれこそ女神への崇拝だったと思う。
君の存在を信じて学校を目指してた。
だけど今は違う。
君と一緒に過ごしたいと思って生きてる。
有り体に言ってしまえば。
好きってことに気付いてしまったんだ。
えっと、何がっていうと君のことがね?
……ウソ?いやいや、本人の言葉だって!
……私、結構酷いこと言ってるって?
なんだかんだ言って自覚はあるんだね。
……そうだね、酷いことは沢山言われたよ。
だけど、君が僕にくれたものはそれ以上だから
……えっ、やっぱりキモい?
まあまあ、我慢して聞いてくださいよ。
僕は、別に君が照れ隠しでそういう言葉を言ってるって誤解してるとかじゃないんだ。
君が自然体で僕に接してくれることが好きなんだ。
君が、僕を嫌いで、そういう態度を取ってたっていいんだ。
……いや、やっぱりちょっと辛いけど。
でも、たとえそうだとしても、君がくれた優しさは本物だって僕は信じてる。
僕はどんな形であっても君のそのちょっと歪んだ優しさが好きだ。
僕のことが嫌いだとしても、なんとも思ってなかったとしても。
君が優しいのだけは絶対に事実で。
君が僕を救ってくれた女の子っていうことに変わりはないんだ。
……だから、僕は、気持ち悪いと言われたって伝えるさ。
「いつも、正直でいてくれて、そして、優しくしてくれてありがとう」
え?告白じゃないのかって?
だってさっきもう好きだって告白したじゃん?
うわぁ!なんで蹴るのさ!
いてて、地味に響く感じの痛みだ。
でも、君の蹴りならいいかな。
え?キモい?
いやいやちょっと痛いくらいならむしろ生きてる実感が感じられて気持ちいいんだって。
変態?うーん、そうなのかな?普通だと思うんだけど……。
あれ、溜息ついてどうしたの?
やっぱり私がついてないとダメだって?
そうだよね、君にはいつも世話されっぱなしだもんね。
図書委員の仕事とか家庭科の課題とか……。
いつもありがとう。助かってます。
……あんたは凄いって?
またまた、そんな見え透いたお世辞を。もしくは皮肉かな?
私はそんな褒められる性格してない?
いやいや、そういう意地っ張りなところも好きなんだって。
……私は自分の主張を通してるだけ?
そうだよね。だから意地っ張りだし、意見を曲げないもんね。
だけど、僕は君がまっすぐじゃなかったら、君のことを好きになれなかったと思う。
きっとどこかで君のことを信じる根拠が足りなくて、またふさぎ込むことになったんだと思う
だから、さ、これからも……。
……いいわよ!ってまだ最後までいってないんだけどなあ。
まあ、続けるよ。
「だから、これからも、意地っ張りで正直なあなたの側にいさせて下さい」
ああ、言えたよ、やっと
回りくどい話になっちゃったね。
君は、中学生のとき、僕の、女神だった人で、生き方の手本で。
……そして高校生の今、大好きな人だ。
喧嘩することもあるけど、でも……いや、むしろだからこそ君が信じられる。
だから、これからも君を信じさせて下さい。
……そして、僕を信頼してくれたら嬉しいです。
言いたいことはちゃんと、言おう!