M-089 ボルトネス
ボルトネス
天井ががら空きだぜ!
「こんにちは、グラスアローの魔法使いさん。僕はあなたに会えるのを楽しみにしてきました」
「どうして?」
「あなたの魔法は、公開されているものはすべて閲覧しました。素晴らしい発想力だと思います」
「えへへー」
「ですから、未公開のものも見せていただけませんか。この場で!」
トリッキーな魔法ばかり開発してきた魔法使いに興味を隠さない対戦相手。
しかし、残念ながら魔法使いは脳筋だ。
発想は少しばかりズレているが、戦闘に関しては「難しいこと分かんなーい」のゴリ押し系女子である。
この時も、対戦相手の欲していることがいまいち分かっていなかった。
「ツリーシード! モースプライ!」
対戦相手がツリーシードを展開する。
ブルーファイアで一撃かなあと考えていた魔法使いは、彼の魔法に目を見張った。
ツリーシードの木がどんどん横に縦に、増えていくのだ。
呆然と見守る魔法使いの前で、ツリーシードは壁になった。
奥行7メートル、広さ10メートル程度の木の壁。
魔法使いと対戦相手はツリーシードによって完全に分割された。
「この壁をどう乗り越えるのか……楽しみです!」
「えっ、えーと。どうしよう……?」
魔法使いは無い頭をひねって考える。
彼女が考えられる、とびきりトリッキーなアイデアを。
フレイムズで壁ごと焼き払う? ――だめだ、時間がかかり過ぎる。
エレキテルボールで奇襲する? ――だめだ、障害物が多すぎる。
こうなったら使えるのは天か地か。
ヒューマンクエイクで転倒を狙う? ――木の壁が邪魔で相手が見えない!
「そうだ。ツリーシードは決して背丈が高くない樹木。よし、行ける!」
魔法使いはその場で紙に魔法陣をかきつけると、すぐにスペルを唱えた。
「天からの裁きを受けよ! ボルトネス!!」
魔「勝ったよ」
斧「おめでとー」
魔「彼が負けて闘技場を後にしたあと、大量のツリーシードを片付けたのはわたしです」
斧「おつかれー」
舟「そしてその素材はスカイアドベンチャーの懐に入りましたとさ」




