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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
88/527

M-086 パワーアップ


パワーアップ

短剣が抜けなくなる話




「舟長、ちょっと魔法使いさんを助けてくれないか?」


 斧戦士の声で目覚めた舟長。


「魔法の実験台じゃないよな?」

「魔法使いさんならまだ部屋でワタワタしてるよ。だから、これはおれからのお願い」

「斧戦士の? 珍しいな。よし、行こう」

「助かる」


 斧戦士の案内に従って、舟長は魔法使いの部屋に入った。

 するとそこには、パジャマ姿のままナイフと格闘する魔法使いがいた。

 壁に刺さったナイフとだ。


「なにがどうしてこんな状況になった訳?」

「昨日読んだ小説にあったらしい。女の子が壁にナイフを投げる描写が」

「ああ、あれ自分で刺したのか。よく刺さったな?」

「それはもう、奇跡的な確率で」


 魔法使いというジョブは非力である。

 名前からして魔法使いである彼女も例に漏れず、非力だ。

 非力すぎて、投げたナイフが壁に弾かれるという悲劇が起こったのも納得できる。

 しかし、さらなる悲劇が彼女を襲う。

 奇跡に刺さったナイフに満足した魔法使いは、今度はナイフを抜いて片づけをしようとする。

できなかった。

 やがて抜けないナイフに疲れた魔法使いはそのまま寝てしまい、今朝、爽やかな目覚めとともに頭をぶつけて、その存在を思い出す。

 そして今に至るという訳だ。


「ふおお、抜けん、抜けんぞぉー!」

「お前からのお願いの内容は概ね把握した。けど、自分でやってもよかったろ?」

「おれが? ……力づくでやったらこの家壊れちゃうかもよ?」

「そのくらいの力加減なんて余裕でできるくせに、よく言うぜ」


 そういうと舟長は、自分が来たことも気付いてないだろう魔法使いに声をかける。


「おい、魔法使い。ちょっとどいてろ」

「ふがっ! 舟長、いつからそこに!?」

「大分前からいた」


 軽口をたたきながら、舟長はナイフを抜く。

 あまりにもあっさり抜けたナイフに、魔法使いはあっけにとられるしかない。

 舟長はナイフを手のひらで回すと、柄の方を魔法使いに向けて言った。


「ほらよ。取れたぜ」

「ど、どうやって……。そっか、舟長ナイフ使いだもんね」

「システム上はダガーを装備してるけどな」


 目を輝かせてすがってくる魔法使いに困惑する舟長。

 照れくさくて、突き放したような発言をしてしまう。


「てか、これおまえが装備してるダガーじゃないか。抜けなかったらどうするつもりだったんだ?」

「うーんと、エナフォで壁ごと壊す?」

「おまえに聞いたオレがバカだった」

「魔法使いさん、そのやり方は隣の部屋の人に迷惑だよ」

「確かに。じゃあ腕力を強化する魔法でも使うかな」

「ゼロになにかけてもゼロだろ」

「エナフォすっぞテメエ」






魔「パワーアップ。筋力強化の魔法だよ」

舟「おまえにしちゃえらくひねってない名前だな。どっかのゲームにありそうだ」

魔「ギクッ」

舟「……おいおい」

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