M-074 デコイ
デコイ
おとり魔法
「突然だけど、デコイって言うのを作ってみようと思う」
マジ唐突なことを言い出した彼女は、魔法使い。ジョブも名前も魔法使いな21歳である。
「えっ、オレ一人じゃ不満なのか?」
少しすねている彼は剣士。ジョブは騎士で、名前が剣士の23歳だ。
まあ、年はどうでもよくて、いつもパーティーメンバーを敵の攻撃から庇う役目を果たしている剣士にとって、魔法使いの提案は不可思議というか、解せぬものであったのだ。
「いや、そうじゃなくて。もしわたしが一人旅をすることになったら、とか昨日考えてて不安になっちゃって」
「まず間違いなく生き残れないぞ、おまえ」
「そのためにデコイをつくるんじゃない」
「おまえなあ……」
たぶん、かなりの確率でそんなことは起きないぞ、と言うべきか言わぬべきか、舟長は相当に思案した。
答えは、しないだった。
こういう時の魔法使いは、妙に決心が固くて話を聞いてくれないのだ。
余計な労力になるぞ、本当にいいのか。舟長は響く内心の言葉に首を振った。
「いつか役に立つかもしれないし。とりあえず作ってみよまい!」
「魔法使いの気の済むまでやらせるか」
「なんだよう、その言い方。失敗するって思ってるの?」
「いや、今後絶対に使わないだろう魔法を作ってどうすんだ?」
「そんなの今までもあったじゃない。今更気にするのおかしいよ。それに、使うのは何もわたしだけとは限らないんだよ?」
「うん?」
「わたしが舟長をボコボコにするときとか、舟長がデコイの魔法を使っていいんだよ」
慈愛にあふれた魔法使いの笑みを、どう解釈していいのか舟長は分からなかった。
魔「デコイ、と唱えると丸い球体が現れるから、それをどこかに置いてね」
斧「そのデコイに攻撃が集中するわけか」
魔「デコイからホログラムが投影されるから、そこ目掛けて飛んでくって感じかな」
舟「効果時間はどれぐらいなんだ?」
魔「デコイが壊れなければ一戦闘中は持つよ。本体はもろいから当たったら一発で壊れちゃうけどね」




