M-070 マニュピレート
マニュピレート
のっとり魔法
朝起きると、魔法使いさんがリビングで紙片手に格闘していた。
それ自体はなんら珍しくないことなのだが、あまりにもその様子が鬼気迫っていたので、思わず舟長は声をかけていた。
「よう、魔法使い。今日は何の魔法を作ってるんだ?」
「人の身体を操る魔法だよ」
「なに明るく黒魔術っぽいことしてんだ」
「いや、黒魔術というよりどこかの幻術士みたいなんだけど」
アサシンも口をはさむ。
「そんな野菜だかフルーツだか分からない人は知りません」
「思いっきし意識してんじゃねーか」
剣士にも突っ込まれる魔法使い。
「うるさいなあ、こないだのカースリバイブで失敗したから、なんとかしようとしてるだけなの!」
カースリバイブとは、はぐれ僧侶の道をマスターした者だけが扱える邪法である。
魂を呼び戻し肉体を回復させるリバイブと違って、カースリバイブは肉体しか回復しない。
すなわち、リバイブの劣化版。未完成の魔法だ。
意思が宿っていないため、勝手に動き出すことも、命令を聞くこともないのだ。
「動かすのに他の魔法が必要だなんて難儀だな」
「斧戦士さん!」
「おれだったら、適当にハエの魂でも入れて無理やり動かしちゃうけどなー」
「外道担当は言うことが違うね」
斧「ちょっと待て。これは割と日常的な発想だろう」
魔「ハエカワイソス」
ア「無理やりはよくないよ、ね?」
舟「別の人の魂を入れるとかだったらマジ外道だわ」
斧「それは普通過ぎるからなあ」
剣「やっぱ外道だぜ」
魔「ちなみにマニュピレートはわたしが半死体の身体を乗っ取って動かす魔法なんだ」
舟「その間、おまえの身体はどうなるんだ?」
魔「倒れます」
剣「ゾンビの方は痛覚切ったりすれば戦えそう」
舟「いや、倒れてる本体を突かれたらどうするんだよ……」




