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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
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M-069 ヘアーグロウス


ヘアーグロウス

育毛魔法




「こんにちは、グラスアローの魔法使いさん。あなたはいくつも魔法を発明しているそうですね。どうかわたしの悩み事を一つ解決してくれないでしょうか」


 急に現れた男は芝居がかったしくざで魔法使いに跪いた。


「…………」

「おい、固まってないでなんか言え」

「あっ、はい、あの、お受けします」


 緊張と困惑でカチコチになった魔法使いの返答がこちらです。

 男はそんな魔法使いを微笑ましく見て、被っていたシルクハットを右手に持ち替えて一礼する。

 男の頭はつるつるだった。


「!」


 ピコーンと飛び出した豆電球を魔法使いは拾う。

 ポケットに入れて大事にしまっておく。

 さあ、悩み事の正体は分かった。あとは魔法を作るだけ。


「舟長、ちょっとわたし紙と鉛筆取り行ってくる!」

「おう、行ってら。あー、なんだ、お茶でもお出ししましょうか」

「そんなに早く済むんですか?」

「あの感じ、結構早いと思いますよ。夕方には帰れるんじゃないかな、あんた」


 敬語なのかそうでないのか、判別つかない口調で舟長が言った。

 紳士は、それはありがたいと呟くと、アサシンの持ってきた茶を受け取って笑った。


「彼女はいつもこう、慌ただしい感じなのですか?」

「割と。でも、魔法の出来は期待してていいですよ。あの子はウチで一番強い魔法使いですから」


 ふんす、と鼻を鳴らせてアサシンは自慢した。

 それから踵を返す。しばらくして、アサシンが洗い物を始めた音がした。


「今のは……」

「家のパーティーメンバーですよ、れっきとした。メイドでも女中でもないです」

「そうでしたか。これは大変な早合点をしてしまうところでした」

「渡しませんよ、アサシンもウチの大事なダメージディーラーなんで」


 舟長が挑発するように、紳士をにらみつけた。

 そのときだ。

 階段の辺りからどたばたとした音が鳴り響いてきたのは。

 その音の主こそ、舟長と紳士が待ち望んでいたひと。魔法使いだった。


「できたよー!」

「お客さん来てるんだから、もっと静かに行こうね」


 斧戦士の制止も意味を為さず、最後まで足音をダイナミックに響かせた魔法使いは、説明も何もなしに魔法を唱えた。


「ヘアーグロウス!」


 つるつる頭の紳士が、ごましお頭の紳士に変化した。






魔「ライフエクステンションとレインボーリーフから一部引用して魔法を作ったよ」

舟「見知らぬ人にいきなり魔法かけるのやめろって言ってるだろ!」

魔「説明するより見た方が早いと思った」

斧「魔法使いさんは説明下手だし」

魔「かつての情景を引き出し、現在の頭髪に反映する。これがこの魔法の真髄だよ」

ア「じゃあ、あのごましおは一種の幻覚なの?」

魔「現実とは違うものを見せているという点については幻覚とも言えなくもないね。でも触ったり燃えたりするよ」

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