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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
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M-005 ライトフラッシュ


ライトフラッシュ

隠されたものを見つける




 とある日、スカイアドベンチャーの面々はダンジョンの中にいた。彼らがダンジョンの中にいるのはそう珍しいことではないのだが、とにかくとある目的のためにいた。

 それは、透明人間を見つけ出す依頼である。

 はなから透明な人間をどうやって見つけたのかは知らないが、なんでもここの洞窟ならいる可能性が高いんだそう。


「同じ性質のものは集まりやすいとは言うが」

「類は友を呼ぶとも言うね」

「いや、それにしたって透明人間に失礼じゃね?」


 そう、この洞窟は、覗き見が止まらない、捕まらないで有名な温泉地帯なのだ。


「覗き犯などわたしの魔法で焼き尽くしてやる」

「焼き尽くすと捕まえた証拠が残らねーから、焦げ付かせる程度で頼むわ」

「温泉地帯だから氷の魔法とかを使えば涼しいかもよ?」

「ガチガチに凍っちゃったら、源泉で溶かせばいいもんな」

「源泉でやるな源泉で」


 魔法使い、舟長、アサシン、斧戦士、剣士が順に発言する。

 最悪、透明人間が見付からなくても、痴漢犯が捕まればいいという覚悟を決めているようだ。

 まあ、待っていても仕方がないので、早速現場の温泉につかることにしたのだが。


「オレどうしよう」

「ん、こっちでもボクたちは構わないよ」

「ちょっと暑いけど、服来たまま足湯でもしたら?」

「こっちも構わねーが、まあそっちの方が無難か……?」

「どっちでもいいよ」


 剣士が、女湯、男湯、どちらに行くべきか迷っていたのである。

 とある異世界では、ロン毛が女性にしか存在しないという誤った情報により、女性として戦ったという歴史がある。ここではどっちとして行くべきか困っているようだ。

 仲間たちはそんな事情を察しているので、温かく色々な提案をした。


「じゃあ、オレは……女湯に行くぜ。そっちの方が犯人もいそうだしな」

「いいね! わたしとしても戦闘に剣士がいるのは心強いね!」

「これで全力を出して戦えるよ!」

「あの二人とも……もっとお手柔らかに接することも大事だと思いますよ」


 敬語で剣士が魔法使いとアサシンを諫める。効果のほどは分からないが。とにかく二人とも落ち着いた。落ち着いたことにしよう。

 そうして、女湯にたどり着いた三人。早速魔法使いが呪文を唱え始める。


「ライトフラッシュ!」


 唱え終わると、魔法使いの手のひらの上にランタンが乗っていた。少し大きめの四角いランタン。

 それを天井に浮かべると、準備は完了。ライトの光が不思議な軌道を描いて漂う。ライトフラッシュの効果がある証だ。


「雰囲気いいね」

「ランタンのおかげだぜ」

「そうかな、わたしはちょっと怖い」


 暗いとこは苦手な魔法使いだった。

 変化が現れたのは、かなり経ってからである。いい加減、ゆでダコのようになりそうだった魔法使いが、湯から上がった時人影のようなものを見たような気がする、と言ったのだ。

 事態は急変した。お湯の効果でリラックスしていたアサシンの目が鋭くなる。剣士も既に靴を履いて臨戦対戦だ。


「あっちに行ったのかな」

「たぶん、そう」

「無茶すんな。少し休んでいけって」

「ううん、行けるよ大丈夫」

「そう? なら行こうか」


 どうやって、と思うかもしれないが、実は魔法使いが見た方向は温泉に入る前の通路だったのだ。通路には右に行く道と左に行く道とがあり、右に行く道の方は不自然な行き止まりになっていた。左はダンジョンの外に向かう道だ。

 アサシンが言う。


「ボクはここで待ち伏せしておくよ。二人で先を確かめてきてくれる?」

「分かった。なにか見つけたらすぐ呼ぶね」


 二人が去って、アサシンがふと思う。

 もし逃げてきたのが透明人間でもボクは立ち塞がれるだろうか。

 考えても仕方のないことだった。実際に、ほどしないうちにアサシンは呼び戻された。割りと緊迫した、しかし興奮した魔法使いの声によって。


 一方、男湯の方では覗き犯が捕まっていた。見付けたのは舟長で、なんとかしたのは斧戦士である。

 斧戦士は、エロ同人がどうのと暴れる彼女に言葉をかけていた。


「お嬢さんはリョナゲーお好きかな。お望みであれば、Gの付いたエロ同人の表紙モデルにもしてあげよう。どうかな、白状する気はないかな」

「こいつガチの狂人じゃない、あんたよくこんなヤツとパーティー組んでられるね!」

「そんなことより、早く白状しないと、アイツ本気でやりかねんぞ」

「言うわよ! 言います! 確かに覗いてたわ! でも、女が男を覗くんならなんの罪でもないでしょ!」

「いいえ、セクハラです」


 こんなやりとりがあったとかなかったとか。


 再び舞い戻って女湯組。彼らは、念願の透明人間を見つけていた。透明なのに見つけられた訳は、実体があったからだ。

 ライトフラッシュで擬似的に可視化すると、メタリックなスノーマンが現れる。透明なスライム娘のほうが分かりやすいかもしれない。

 とにかく、透明人間はいたのだ! 三人は手を叩きあって喜んだ。

 しかし、何故こんな誤解を招きそうなところを通っていたのだろうか。それを聞くと、透明人間は小さな声で答えた。


(向こうにお家があるの)

「向こう? でも行き止まりだよ、ここ」

「何か仕掛けでもあるのかも。いま見ると、すごく不自然に見えるんだよね」

「オレにはわかんねーわ」

(着いてきて)

「えっ、消えた!?」

「違う、これは幻覚……魔法使いちゃん、そのまま突き進んで大丈夫だから」

「マジ? ライトフラッシュの効果か、オレにも入り口が見えるぜ」

(どうしたの?)

「あ、今行くんで大丈夫です」

「唐突な敬語……だね」

「斧戦士居ねーし、オレたちで突っ込んどくか」


 幻の壁を超え、その通路を抜けると!

 そこには可愛らしい雑貨やピンク色のベッド。こじんまりとした机、椅子。

 ここは、透明人間さんのお部屋だった。


「すごい可愛い!」

(そうかな……嬉しい)

「そうだよ、すっごくいいね! いつもここで暮らしてるの?」

(そうだよ。だってそれがお家でしょ? お風呂だけはないけど……。それでよくあそこから見て憧れてたんだ。ごめんなさい、覗いたりして)

「構わねーよそれぐらい」

「一緒に入ればいいのに」

(変、じゃないかな)

「人がいない時間帯に利用すればいいよ。どうせいつも沸いてるんだし」

(そっか……ありがとう)


 透明人間さんはそう言って、頬を染めるような仕草をした。

 こうして、友好関係を深めたスカイアドベンチャー五分の三は、気分よく温泉ダンジョンを出ていった。

 途中で合流した舟長はすこし顔色が悪く、斧戦士はいつも通りだった。何かあったのかな。

 違いと言えば、斧戦士が行きにはなかった大きな袋を担いでいたぐらい。

 その袋、たまに動くものだから気持ち悪かったです。






魔「袋のなかの人は五体満足ですよ?」

斧「そうだな、帰りも元気に暴れてたし、交番の方でも元気に叫んでたし、大丈夫だろ、あのタイプの人間は」

舟「いやそういう問題じゃなくて……」

斧「それよりおれのキャラ付け酷くないか?」

ア「えっ。似合ってたよ」

剣「普通だったと思うけどな」

斧「暴れてやる!」

魔「マッハで危ないからやめて」

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