M-063 プロフェッサーガウン
プロフェッサーガウン
ただのコート
「学者っていうと偉ぶってる人ってイメージだけど、学ぶ者って書くんだからもっと敬虔な態度でもいいと思うの」
「おう、そうか」
魔法使いが長ったらしい台詞を吐き始めたときは、華麗にスルーするのがよい。
何故ならば……。
「えっうん……そうなの」
「今から素材集めしにいくけど、着いてくるか?」
「なに採るの?」
「糸とか樹木系素材」
「一人で行けるよね?わたしの火力必要ないよね?」
「おまえ、ここんとこ運動してないだろ。太るぞ」
「エナフォ。じゃあ行くかぁ……」
食い付きもしなかったことに驚いて、次の話題に流されるからだ。
因みに魔法使いがエナフォと唱えたとき、意味合いは死ねと同義である。舟長はもう少し婉曲な表現を使うべきでしたね。
「うわ、外寒い」
「魔法使いって割りと重装備な印象だけど。ローブとか着込んでるし」
「ローブの下に普通に服来てるけど、ローブ風通し良すぎて寒いで」
「そうか。オレも寒いからなんか着よう」
コートや上着を着込む二人。
暖かい格好になった魔法使いを見て、舟長は突っ込まざるを得ない状況に追い込まれた。
すなわち、大爆笑である。
「な、なんだよ、それ!」
「なにが? 暖かいよ」
「いや、暖かいだろーけどよ、なんでそんなゴッツイの着てんだよ!」
「わたしのプロフェッサーガウンを馬鹿にしたね?」
「プロフェッサーガウンは服装備だろ、ややこしい名前付けんな」
魔法使いが着ていたのは重厚なコート。
ハードボイルドか、探偵なら着ていても違和感がなかったかもしれないが、着ているのはヒョロヒョロの魔法使いである。
どう頑張っても似合っているとは言えなかった。
「ややこしくない! わたしのプロフェッサーガウンだもの」
「ずってるから。今からなら間に合う。別のを着てこい」
「むー。格好いいからいいじゃん」
「身体のサイズにあってないのは格好よくないぞ」
魔法使いはとうとう諦めた様子で、家に入っていく。
次、出てきたときには、旅人のマントのようなものを纏っていた。
「お、似合ってんじゃん」
「プロフェッサーガウン!」
「は?」
「よし、おーけー」
「ちょい待て、なんだこれ」
「プロジェクションマッピングだ!」
魔「旅人のマント、パッと見涼しそうだけど、内側にふかふかの布地をつけてあるから暖かいの」
舟「なにそれハイテクだな」
魔「旅人のマントだから、一応舟長も着れるよ。貸さないけど」
舟「てめえ」
魔「旅人のマントに流れるようなプロフェッサー模様。素敵じゃろ?」




