M-054 ライフエクステンション
ライフエクステンション
寿命をのばす
「ライフエクステンション!」
「おはよ、今日は何の魔法だ?」
舟長が朝から見たのは、野菜に向かって魔法を放つ魔法使いの姿だった。
いつも奇怪な行動で周囲を惑わせる彼女であったが、今日は特別不可思議な動きを見せていた。
「これ? 寿命をのばす魔法なんだよ」
「珍しいな。普通に役立ちそうな魔法じゃねーか」
人に向かって魔法を放たないのだ。
会えば生け贄になることも多い舟長が目の前にいても、魔法使いの視線は青菜に向いたままだ。
これは明らかな異常事態だった。
「無機物にしか効かないけどね」
「人間はだめなのか」
単に範囲対象外なだけだった。
「人間は死んでもリバイブがあるからいいけど、ほかはそうじゃないから」
「つっても、本人の意思や時間の経過でダメなパターンもあるだろ?」
人間が生き返るのに必要な要素は二つある。
本人が死んだと自覚していないこと。もしくは生きたいと思っていること。
魂の器である肉体が残っていること。本来の体でなくても可。
「そうだね。そういうのはわたしの力を以てしても救えない。だから、延命魔法を思い付いたんだ。本来の寿命をのばすことで、時間の経過をある程度無視することができるから」
「例えば、どうやって使うんだ?」
「ここにある萎びた青菜をシャキシャキにできるよ」
魔「舟長に小突かれたよ〜」
舟「おまえがふざけた回答を寄越すからだろ」
魔「ふざけただぁ? 本気だっつーの!」
舟「構想は無駄に壮大なのに、どうして実践に及ぶとなるとしょっぱい内容になるんだよ! 誰が得するんだよ!」
魔「全国の主婦だ!」




