M-052 ムームー
ムームー
ささやき魔法
「ホントにここなのか?」
「指定どおりの場所に来たつもりだけど……誰もいないね」
舟長とアサシンが不思議そうに言う。
今、SKはクエストを受注し、詳しい事情を聞くためにとある場所に来ていた。それは暑い火山の麓。人ひとりっこ居なさそうな、平地である。
「もしかして隠れてるのかな」
「よそ者だから警戒されてるのかもな。依頼者が来るまで待つか?」
「いつ来るのか分からないものを待つのはねぇ」
アサシンは渋い顔をした。
「見て、舟長」
「どうした?」
「ここ、穴が開いてるの。なにか見えない?」
「……! まさかあれが依頼者なのか……?」
「何か見えた?」
「四つ足の生き物が見える。ポケットのないカンガルー、ってところか」
「何か話してるみたいだね」
「ああ。もう少し声が大きければ内容も分かりそうだ」
舟長の言葉に、魔法使いはピンと来たらしい。
杖を出してなにか唱えた。
「なんだ?」
「囁きをもっと聞こえやすくする魔法を使ったの」
「なるほど……任せる」
「…………」
「どうだ?なにか分かったか?」
「どうしよう、聞いたこともない言語みたいなんだけど」
斧「今日の晩御飯なににしようかしら、だって」
ア「意外と庶民的な囁きだったね」
舟「いや待て、なんで分かったんだよ? どこの国の言葉とも違うって結論が出たはずだろ?」
斧「深層心理に手を突っ込んで、記憶ごと引き剥がすようなイメージでやれば、舟長たちも心読めると思うんだ」
舟「読めねーよ! つかなんだそのエグい手法は! やられた人はただじゃすまないんだろどうせ!」
斧「ちょっと昏倒するけど副作用はありませんよ」




