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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
日記編(Dシリーズ)
526/527

D-73 イフストーリー


イフストーリー

もしも舟長に恋人がいなかったら




「おっ、どうした? 今日はそっちのネタか?」

「いや、その……」

「なんだよ。もったいぶらなくていいぞ」

「実際そんなに変わらないんじゃないかって思って」

「急に失礼だなテメー」


 やわらかな光がリビングに差し込む、昼には早く、朝には遅い時間。

 長机を挟んで会話する舟長と魔法使いの間に険悪な雰囲気はない。

 言葉だけがけんかのようにやり取りされる中で、魔法使いは寝起きの顔をニヒルに歪めた。


「だからね、検証しようと思ってさ、平行世界の舟長を連れてきてみたんだ」

「なんてことを……どうやって連れてきたんだよ」

「斧戦士さんに軽い気持ちで頼んでみたらやってくれた」

「あいつホント何でもできるな。どこにいるんだ?」

「鍛錬室に待っててもらってる」

「意外と近いとこにいらっしゃる! 会ったら対消滅とかしない? 大丈夫?」

「やったことないから分かんないけど、たぶん大丈夫でしょ!」

「なにも安心できないことが分かった」


 しかし、喋りながら鍛錬室に向かってしまった二人は扉を開けなくてはならなかった。

 するとそこにいたのは、舟長に瓜二つの舟長だった!

 同一人物だから当たり前と侮ることなかれ。

 パラレルワールドの人間は何か違うかもしれないのだ!


「説明ふわっふわだな」

「奇遇だな。まったく同じことを思っていた」

「とりあえず消えないし、大丈夫じゃん!」

「この能天気さは何とかならんのか?」

「オレのところの魔法使いよりはましじゃないか」

「何が起きてるんだよそっちで」


 仲良く話しているようで、魔法使いは満足である。

 なんか向こうの舟長に酷評されてるって?

 それは私本人じゃないんで……。


「そこの魔法使いから、こちらのオレは恋人がいると聞いたぞ。相手はやっぱりアサシンか?」

「ああ、うん。そうだけど。そっちのアサシンはどんなんなんだ?」

「そっちとか言われてもなあ。こっちのアサシンを知らないから」

「ああ、そうか。えーと、これ自分で言うのはずいな。なんだかんだ年齢相応だ」

「麻婆は相変わらず食べられないのか?」

「年相応に食べられるが、食べ過ぎて辛い辛いって言ってる」

「はは、なるほどな。そういうことか。甘えているというか信用しているというか」

「なんとも甘いことだ、とでも言うか? うちはそういう雰囲気だろう」

「おまえらがアットホームなのはよく分かった。アサシンとはどうなんだ。甘い一時を過ごしているのか?」


 その言葉に、舟長はしばし黙り込んだ。

 自分とアサシンが一般的な恋人とは到底違うと知っていたし、甘やかな雰囲気などかけらもないことが多かったからだ。

 必死に思い出を探す舟長に代わって、暇そうにあやとりしていた魔法使いが口を開く。


「舟長はアサシンちゃんによく刺されてるよ」

「刺されてる? そりゃまたなんで。浮気でもしたか?」

「口を滑らしては要らんことばっかり言うから。浮気はしてないらしい」

「……冗談で言ったんだが。その、デートとかしてねーの?」

「たまに一緒に買い物に行ってるよ! でも、男女の友情って言った方が近いと思う!」

「元気に言うな、元気に。けど、買い物か……どんなもの買ってるんだ? アクセとか?」

「野菜とかお肉」

「夕食の買い出しじゃねーか! それはこっちでもアサシンと行くわ!」

「そういえばこの間斧戦士さんとアサシンちゃんで潜入調査行ってた」

「それ寝取られてる! そっちの方がよっぽどそれっぽいな!」

「どこの舟長もうるさいな。斧戦士さんとわたしはラブラブだぞ」

「それはよく存じ上げてる。向こうのおまえがマウントしてくるからな」

「ああ、恋人いない勢だから?」

「くそ、こいつも根っこは一緒か!」


 頭を振り乱して叫ぶもう一人の舟長を見ながら、舟長はため息を吐いた。

 なんだかんだ、魔法使いの言う通りかもしれない。

 潜入調査の件は全然知らなかったし、とりあえず浮気はしていないがそれだけである。

 幼馴染の恋人がいたっていなくったって、舟長が魔法使いにいいようにされる現実は変わらないのだ。






魔「ちなみにあっちのアサシンちゃんも舟長のこと刺すらしいよ」

舟「恋人でもそうでなくても刺されるとか、もう逃げ場なくない?」

斧「ちなみに潜入調査の件だが、貴族のパーティー的なアレだったので魔法使いさんを連れていけなかったんだ。モンスターのパーティーなら連れていけたのに」

剣「一網打尽にする気か。できるだろうけど」

モ「あたしを連れて行ってもいいのよ?」

ア「うーん。モンクには魔法使いちゃんの側にいて欲しいなあ」

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