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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
日記編(Dシリーズ)
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D-43 ノートビンタ


ノートビンタ

むしろハエたたきはハンデ




「そういえば虫も殺せない顔で思い出したけど、わたしハエ殺せるよ!」

「ハエ? ハエぐらい誰でも殺せるだろ」

「チッチッ。彼女はハエ殺しの魔法使いと呼ばれているんだ」

「そうだぞ、舟長。そんじょそこらのハエハンターと一緒にされちゃ、困るぜ」

「なんだおまえら……」


 戦闘中の連携はお世辞にもいいとは言えないのに、この有り様。

 急に魔法使いは強くなった気がした。

 壁さえあれば、魔法使いは実際強い。

 援護射撃に舟長はたじたじだ!


「じゃあ、試しにハエを召喚して確かめてみよう」

「ハエを召喚するとは」

「でてこい! ハエ☆召喚! ってやる」

「雑だなあ」

「ハエモチーフのやたら強いモンスターとか出さないでよね」

「そのときは舟長が倒してくれると信じて丸投げします」

「おい!」


 舟長は後片付けが得意な子だから、多少はね。

 あ、後片付けって言ってもごく一般的な部屋の片づけとか皿の片付けとかそういうのだからね!

 死体とか殺人現場の片付けじゃないからね。

 いかに舟長がシーフだからって変な噂が立つといけないからここでフォロー。


「いや、普通にそっちもできるんじゃないかな」

「マジ!? って、アサシンさん、地の文を読まないでください」

「まあまあ。ほら、ボクらの来歴があれでしょ? 剣士もモンクも得意だと思うよ」

「表立っては言えねーけどな。騎士が暗殺に長けててどうするよ」

「暗殺阻止のために勉強したんじゃないかしら? それで辻褄あうでしょ」


 ちなみに一切会話に参加して来ない斧戦士は、ハエを召喚中。

 一生懸命、ハエを召喚してるよ!!


「ハエ☆召喚!!」


 慣れないサモン行為に斧戦士が汗を拭く。

 召喚陣より現れた一匹のごく普通のハエはぶーんと飛び立った。


「あ、天井に止まった」

「さすがに届かないなあ。わたしの腕があと3mぐらい長ければ分かんないけど」

「クリーチャーかな?」


 スカイアドベンチャーのおうちは二階建て。

 リビングは吹き抜けになっているので、とても天井までが遠い。

 スカイアドベンチャーの中で身長は低い方の魔法使いは、どう頑張っても届かない。

 斧戦士のように垂直飛びが可能ならあるいは。

 しかし、魔法使いは魔術師にはよくあることながら運動が苦手だった。

 走り幅跳びは30cm以下。はい、E判定おいしいです!


「仕方ないなあ。黒トキワを投げつけてハエを移動させよう」

「天井にオーバーキルやめろ」

「ま、そのうち下りてくるだろ」

「おやつでもしてよう」

「美味しいココア入れるー」


 始まったおやつタイムは平穏なままでは終わらなかった。

 天井に止まり疲れたハエがぶーんと下界にやってきたからだ。

 ハエは特に悪さはしないが、周囲で音を立てて移動されるだけでも腹が立つ。

 魔法使いはすちゃらかと廊下へ逃げ出した。


「おい、ハエハンター! どこにいくんだよ!」

「ハエ殺しの魔法使いだ。二度と間違えるな」

「どっちでもよくないか!?」

「ふっ、甘いな舟長。魔法使いさんのそれは逃走ではない。道具を取りに行ったのさ」

「ハエたたきか? だけど、洗面所はあっちじゃないぞ」


 スカイアドベンチャーのハエたたきは洗面所にある。

 洗面所は玄関の近くにあるから、魔法使いの逃走経路とは反対側だ。

 とりあえず舟長は手でハエを追い払う。

 ハエは元気に飛んでいる。


「待たせたな!」

「その武器は、まさか……!?」

「え? それ取りに行ってたのか」

「ある程度厚みのある面状の物ならなんでもいいのかな」

「リーチが短いわね」

「ハエたたきでよくねーか?」


 リアクションが薄いぞ、君たち!

 魔法使いに合わせてテンション高めにした斧戦士が可哀想だろ。

 それはともかく、魔法使いが持っていたものは一冊のノート!

 B5サイズのリングノートだ!

 しかもリング部分が痛くないように柔らかくなっているタイプだった!

 つまるところそれは魔法使い愛用の創作用兼メモノートに他ならない。

 何故彼女はそれを持ちだしてきたのか。

 空中を駆けずり回ったハエが一休みしようと壁に止まる。


「ここが貴様の死に目だ!」


 と小声で言いながら、魔法使いは堅実にハエへ近づいていく。

 既にノートを装備し、縦に構えながら、足音を殺して。

 ノートとハエの距離が20cm程度になった。

 壁に向かって水平にしたノート。

 ノートと壁の間で何も知らず休むハエ。

 ノートが一閃する。

 普段の魔法使いからは考えられないほど素早い動きでノートがスイングした。

 滅殺されたハエがぽとりと床に落ちた。

 魔法使いの勝ちだ。


「ドヤァ」

「口で言うな」






魔「なお、落ちたハエを拾うのはハエたたき内蔵のピンセットを使います」

斧「さすがにカメムシは殺せないが、ラケットとノートを持った魔法使いさんは無敵だぜ」

剣「アサシンは即死魔法を展開して虫殺しそう」

モ「アサシンなら、幻覚で熱源反応を見えなくするとかじゃない?」

舟「能力を有効活用し過ぎじゃないか?」

ア「三人とも。そんなこと言ってていいのかな? 片付けしちゃうよ?」

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