D-35 ボイスチェンジャー(邪)
ボイスチェンジャー(邪)
説明に1話使うのはどうなんだ
「ふ、ふははは! 稀代の聖女もこんなものか!」
「くっ、この身体さえ動けば……」
「すべての準備は整った。贄もいる。最高だ!」
「王はあなたのことを一番信頼していた! なのに、どうして!」
廃墟のようになった宮殿の最上階で、女と男が言い争っている。
こうやって書くと、男女関係で揉めてるみたいに聞こえるけど、もちろん違うよ。
「そうだ。王は私をなによりも信頼していた」
「分かっていて何故……?」
「愚かなことよ。権力を持てど扱えぬ者は利用されるのみ」
「なんてことを! 王は素晴らしい人格者だった! おまえのような者とは違う!」
「裏切られるとも知らず……ふはは、その点においてはおまえたちは正しい。愚王は私にとって素晴らしき駒だった! 王よ、最後の宣告を私に」
聖女と呼ばれた女性が悔しそうに床を叩く。
彼女の足はがれきに埋もれ、上半身しか動かすことができない。
それでも彼女が死なないのは、聖女が持つ多大なる再生力のおかげ。
しかし、それも今となっては忌まわしき枷のようなものだ。
周りの兵士のように死ぬこともできず、かといって王を助けることもできない。
王が元魔術研究局長に操られ、ふらりと立ち上がる。
「第36代目国王のバーナード・イデアルはここに告げる」
「王、おやめください! そやつは間違っているのです!」
「くくく。もはや聖女殿の声は王に届かぬ。そこで絶望するがいい!」
「ヘンリー。よくぞ私に尽くしてくれた。この命尽きる前に褒美をやろう」
「ありがたき幸せ」
元局長は歪んだ鉄の槍を持ちながら、王の前に立つ。
「なにを……まさか! やめなさい! ヘンリー!」
「ふふ、聖女殿はまだすべてを理解しておらぬ様子。王、さあ。最期の言葉を」
「イデアル王国はそなたのものだ。ヘンリー・クラークを我が後継にする」
王は血しぶきの残る王冠を、元局長に授けた。
第37代目国王となったヘンリーは哄笑を上げ、王を手の槍で突きさした。
聖女と違い、王は護られる者。
護りをすべて失った先王は、力なく倒れるしかない。
「王! そんな……」
「先王には、私の治世の礎になっていただいた。聖女殿も後を追いたいでしょう?」
ヘンリーは先王を押しのけ、惨劇の残る王座に腰掛ける。
「分かりました。先王を騙し、殺害した聖女殿。処刑方法は火あぶりでよろしいか」
舟「なにこれ」
魔「陰謀がないとボイスチェンジャーを悪用できないので」
舟「三行で説明しろよ」
魔「魔術局長が王位を簒奪。聖女は陰謀で犯人にされた。……どうしよう、一行余った」
舟「ボイスチェンジャーはどこで出てくるんだよ?」
魔「あとで斧戦士さんが使う」
舟「ひどいネタバレを見た」




