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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
日記編(Dシリーズ)
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D-32 アイスサンダー


アイスサンダー

どいつもこいつも!




「どいつもこいつもゼクスって魔術師に氷魔法持たせて白髪にしやがって!」


 私が好みだってことを知っての狼藉か!?

 魔法使いはひとりでにキレていた。


「なあ! そう思うでしょ?」


 唐突にリアクションを求められた舟長は、やや挙動不審になりながらも、魔法使いを落ち着かせようと試みた。


「たった二例で何を言ってやがる」

「ファッキンガム候!」

「バッキンガム候に謝れ」


 説得は失敗に終わった。

 立ち去ろうとする舟長だが、魔法使いは許しはしない。

 服の袖を掴んで引っ張る。

 妨害にあった舟長は、恐る恐る振り向いた。


「なんだよ?」

「セイリオスって名前の氷の騎士もどうかと思う」

「あれ、騎士っていうか、敵側の人じゃなかったか? 宗教団体というか、暗殺組織というか……」

「兄貴が騎士っぽいから実質騎士」

「暴論だ!」


 だいたい、兄貴も騎士じゃねーよ!

 舟長は思ったが、言わなかった。

 激昂する魔法使いの前だ。

 懸命なことである。


「じゃあ、ロン毛剣士」

「うちの剣士とかぶるだろーが」

「船上からモンスターに斬りかかりそのまま落ちてった人」

「あれは――、あれは……事故だろ」

「無自覚トラブルメイカー前作主人公を親友に持つ」

「あっうん……まあ、その……」


 魔法使いがくわっと目を見開いた。


「貴様、ジーモーデの回し者か!!」

「それはおまえだろ!」


 叫びあった二人は、息荒く……ふと気がついた。

 なんでこんなことしてるんだっけ?


「ゲームタイトルもどことなく似てるし」

「前作にセイリオスはいないだろ」

「え? 弟? いたの? 全然話に出なくなかった? みたいな感じでしたね」

「まあ、子どもの頃に生き別れてるし、死んだと思ってたんだろ。生きてたけど」


 こんな誰にも分からんようなネタを話していても仕方がない。

 魔法使いはいそいそと出かける用意をし出した。

 冬用のローブまで着こんで、どこか遠くまで足を伸ばすつもりらしい。


「ちょっと出掛けてくる」

「おう。どこ行くんだ?」

「エースイデスに、ジーモーデ好きなんですかって聞いてくる」

「は!?」


 偶然の一致だよ!

 舟長が止める暇もなく、魔法使いは玄関に駆けていった。






魔「斧戦士さんが一緒に行ってくれるって!」

舟「心配過ぎる!」

斧「失敬な。ベルセルクアタックするぞ」

ア「このベルセルクアタックって、他じゃあんまり見ないけど、特定とかされる?」

剣「安心しろよ。ヒットするとしてもwikiぐらいだから」

モ「よく考えたら、変な技名ね。英語ならバーサーカーよね?」

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