D-27 ニューメンバー
ニューメンバー
新キャラ(半レギュラー)登場!
ある日、舟長が自宅に帰ってくると、家には一人の人間の気配がした。
はてな、と思う舟長。
一番帰りが早いから、と洗濯物を頼まれたのは朝の出来事。
しかし、ベランダにはもう洗濯物はない。
誰かが取りこんでくれた――その誰かはどうやらまだ家にいるらしい。
「斧戦士か?」
舟長は独りごちる。
人格を自分自身以外に三体持ち、それぞれワープ能力を持っているトキワブラザーズ。
確かに、彼らならそういうこともできるだろう。
しかし、彼らはだいたい魔法使いのためにしか動かない。
しかも原動力が魔法使いからの感謝の言葉だったりするから、分かりやすく成果を残すことはしない。
トキワブラザーズで戦果の取り合いをしているぐらいだし、舟長に気取られるような真似はしないだろう。
疑惑に頭を悩ませる舟長は、玄関をくぐり、リビングに座る人物を見た。
「おまえは!」
「あらーん。ようやく帰ってきたのね?」
ごつい身体をしたその男は言った。
「え、なんでいる……?」
「ひどいわねー、昔はあたしとも冒険したじゃない」
「うっ……そうだが」
彼は、スカイアドベンチャー所属、第六のメンバーだ。
まだ斧戦士と魔法使いが合流するよりも前、舟長たち三人とパーティーを組んでいた。
彼の役割は、モンク。
アタッカーとヒーラーを兼ね備えたそのジョブは、彼の性格にも合っていて。
さらなるアタッカーが必要となり、強力な爪武器が手に入るまで、彼は立派なパーティーメンバーの一人として活躍していたのだ。
「今日、ちょっと外に出たけど、随分有名になったみたいじゃない」
「ま、まあな。その、すまん」
「いいのよ。ずっとサブパーティーにいたんだから、あなたたちの実力は知ってるつもりよん」
今のあたしが、追いつけるような存在じゃないってこともね。
モンクはそう言い、少し寂しそうに俯いた。
そう言われるとフォローしたくなるのが人情である。
それに、モンクは舟長たち三人の幼馴染。
気安かった仲も手伝って、舟長はこう申し出ていた。
「おまえさえ良ければ、なんだが。おまえを今のパーティーに紹介したい」
「あらーん。あたしを紹介してくれるの? 嬉しいわ」
「冒険には連れて行けないかもしれないが、他に頼みたいこともあるし」
「あたしが必要なのかしら。いいわよ。あたしに任せてちょうだい!」
かくして、夕食の時間までモンクと舟長はあれやこれやと画策したのだった。
「ただいまー。あれ? もう夕食ができてる」
「んー、舟長が作ったんじゃねーの?」
「まさかあ。舟長だよ?」
「……ふむ?」
定刻通り帰ってきた四人を、幻のメンバーが迎える。
「おかえりなさい! ご飯にする? お風呂も沸いてるわよ、それともあたし?」
「えっ、その声、モンク!?」
「おいおい、生きてたのかよ」
「モンクだー!? すごい、本物だ!」
「なるほど、もう一人の気配と、夕食はこいつの仕業か」
「さすが斧戦士だな。気付かれてたか。まあ、積もる話はあとだ。飯にするぞ」
珍しく舟長が仕切ったが、誰も何も言わなかった。
すべては第六のメンバー、モンクとの再会のため。
久しぶりにリーダーシップを発揮して嬉しそうな舟長など、どうでもいいのだ。
「生きてたか、なんて酷い言われようね。サブパーティーにずっといたじゃない」
「ははは、ちょっとした冗談だ。すまんな」
「あなたが名うてのメイジ、魔法使いね? あたしはまごうことなき本物のモンクよ」
「これからよろしく頼むでござる」
「おもしろい子ね。こちらこそ、よろしくさせてもらうわ」
何をよろしくするのかよく分からないが、顔見せは終了した。
あとは楽しい夕食の時間だ。
「相変わらず女子力高いねえ。今日、こんな凝った料理食べられるなんて、思いもしなかったよ」
「美しくありたいから自分を磨くのよ? 料理の腕もその一環。メイジちゃん、美味しいかしら?」
「うまーい」
「ありがとう。ありあわせのものになっちゃったけど、喜んでもらえて幸いだわ」
「ありあわせとはいったい……うごご」
アサシンが唸る。
普段、スカイアドベンチャーのなかでは女子力のあるほうとしてふるまっていただけに、力の差を見せつけられてアサシンはへこんだ。
そりゃあそうだ、女子力のないほうこと、女子力皆無の魔法使いと比べていたのでは、女子力スキルのレベルアップもせまい。
男のくせに……、とアサシンはモンクを羨んだ。
しかし実際のところ、斧戦士や剣士も女子力というか家事能力が高い。
舟長だって、魔法使いよりは家事ができるし。だが、なんかそれは別に良いらしい。
思わぬところで対抗心を燃やされているなど、モンクは露知らずに、旧友と交流を温める。
「その気味の悪い見た目、なんとかならねーの?」
「ファッションと言ってほしいわ。可愛いでしょ?」
「筋肉だるまに言われてもな。なまじ声がいいからむかつくんだよ」
「あらーん。あたしに惚れてくれた?」
「寝言は寝て言え。なあ、斧戦士もそう思うだろ?」
「おれとしては、日ごろ穏やかな剣士の変貌具合に驚かざるを得ない」
質問には答えないスタイル。
聞いて驚け、これが斧戦士だ!
斧戦士の洗礼を食らったモンクが、目をしばたかせている。
「あー、なんかあれだよ。幼馴染特有の気安さってやつ?」
「幼馴染特有の雑さの間違いじゃないかしら」
モンクがボソッと言ったが、誰も気に留めなかったようだ。
一方で、ショックを受ける魔法使い。
剣士とは結構仲がいいと思っていたのに、まだ気安い関係じゃなかったことに驚いている。
ま、まーね! 仲がいいって言っても戦闘中の距離が近いだけだし!
内心で必死に言い訳を考える魔法使いに、斧戦士が気付かないはずもなく。
「そういう発言は魔法使いさんが傷付くのでやめてもらえます?」
「魔法使い相手に雑に対応できる訳ないだろ。それに、それで魔法使いが傷付くなら本末転倒じゃね」
「それもそうか。魔法使いさんはか弱い女性だものね」
「そうそう。そういうことだぜ」
魔「もも……」
モ「剣士はそういうつもりで言ったんじゃないのよ?」
舟「おまえは幼馴染にはなれんが、剣士の仲間だろ。それじゃ駄目なのか」
斧「剣士の仲間ってのもかなりレアな立ち位置だよね」
ア「確かに。いまんとこ、斧戦士と魔法使いちゃんの二人しかいないね」
剣「魔法使いのことは信頼してるぜ。そこらの適当な対応する幼馴染なんかよりな」




