D-22 サクセス!
登場人物が病んだ(notヤンデレ)発言をしています。
苦手意識のある方はブラウザバックを推奨します。
サクセス!
GLOW
「あー。わたしも成功者になりたい」
「のっけからどうしたの?」
不吉なセリフから開始したのは魔法使いその人だ。
何故か斧戦士が近くにいないので、アサシンが対応するがそれがまずかった。
魔法使いは急に鋭い目をして、アサシンを指さす。
その目には珍しく、敵視のような悪意が込められていた。
「アサシンちゃんはいいよね。誰とでも友だちになれて」
「え? そ、そんなことないよ。表面上の付き合いが多いし……魔法使いちゃんだって、」
「わたしが何? わたしね、ずっと羨ましかったの。初対面の人でも怖気ずに話しかけられるってこと」
「ど、どうしたんだよ、魔法使い! 正気に戻れ!」
舟長が割って入るが、魔法使いは止まらない。
その瞳は濁って昏い。
こんな状態は、あのときと一緒だった。
M-358 フェスティバル。
と言っても、あの場で魔法使いの目を見たのは、斧戦士だけなのだが。
魔法使いを含めた四人は発狂していて、他人や鏡を見ている余裕などなかった。
「舟長だって。周りにたくさんの人がいて。それを築けるのだって、才能の一つなのよ?」
「な……おまえ、いったい」
「それなのに、いつも能力がないってことネタにして。本当は苛ついて仕方がなかった」
「そ、そんなこと言われてもな……今度から気を付け」
「そういうところも嫌い。いつも最適解を出せるところが。曲がりなりにもリーダー務めるだけはあるってこと? パーティーに気を遣えるオレかっけー? 嫌味か何かですか?」
いつもは怒っても杖でポコポコ殴りつけるぐらいで済むのに。
今、舟長を襲うのは言葉の刃だ。
こうなったら最後、治せる可能性があるのは斧戦士ぐらいか。
表面上慌てながら、それでも冷静に舟長の脳が最適解を繰り出す。
ならば。
オレのできることは――。
「あのな、魔法使い。話だけ聞いてやる。それ以外は、専門家に任せるからな」
「ふーん。いいよ。好きにすればいいじゃん。他人なんか、興味もない」
「自分が傷付くようなことは言うなよ……ま、あとでいくらでも泣き言ぐらい聞いてやるよ!」
「ひゃ、なに!? 暴力!?」
「馬鹿言え! 防御力低い奴にそんなことする訳ないだろ!」
「やだ! 舟長嫌い! あっち行って!」
気の強そうな発言から一変、わあわあと泣き出す魔法使い。
いよいよもって打つ手がなくなった舟長が頭を抱えたとき。
玄関がにわかに騒がしくなった。
アサシンの驚愕の声が聞こえる。
ようやく、ようやく帰ってきたのか。あいつが。
「魔法使いさん、ただいま」
「嫌い! 嫌い! うわああん!」
「そんなに机をたたくと、手を痛めるよ」
「いいもん、別に! そんなこと、どうだって!」
「……おれが良くないのでダメです。さあ、寝ましょう」
斧戦士は魔法使いを担ぎ上げると、のしのしと階段を上っていく。
舟長とアサシンは恐る恐るその様子を窺った。
斧戦士と共に買い物に出かけていた剣士が玄関で、二人をきょとんと見ていた。
舟「まだそばにいなくていいのか?」
斧「いまのところは。ところでこの発言だけど。つ『防御力低い奴に~』」
舟「傷付いてる魔法使いを傷付ける訳にも行かないだろ」
斧「その気遣いはありがたいけど、防御力あれば殴ってたの?」
舟「そりゃ、おまえみたいな奴があんな挙動し始めたらぶん殴ってたわ」
斧「はっ、返り討ちにしてくれる」




