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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
日記編(Dシリーズ)
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D-15 フリーズ2 / M-006


フリーズ2

こんなときは




 冒険者ロットは、スライムが好きすぎるごく普通の冒険者だ。

 一方、サラはそれなりの役職に着いている魔術師兼、創術師スペルメイカー

 当然ながら、二人の食いつく先は同じではない。

 ロットは大地の杖を見てうなっているし、サラはカラージェムを前にうっとりとしている。

 まあ、結構異様な光景だった。


「これって、一人用……なのか」

「ロットさんってソロ冒険者だっけ?」

「いや、違う。今はソララというパーティーに属している」

「ふーん、じゃあ人数分買うか、こっちのヒールボトルなんかどう?」

「これは……」


 商売上手なアサシンが、ロットをうまく誘導している。

 視点を右に変えて、サラの相手をしているのは舟長と斧戦士だ。

 魔法使いと剣士は、新しいお客さんが来たときに備えて、カウンターに座っている。


「このカラージェムを三つ」

「お買い上げありがとうございます。勘定はこちらになります」

「三つでその値段か。ずいぶん安いな?」

「使い捨てだから。そうでもないと大量生産できないし」

「……ふむ、学園の教材にどうかと思ったが、うーん」

「そんなに在庫ないよ」


 開発者の斧戦士がうなる。

 学園全体で何人の生徒がいると思っているのだ。

 斧戦士とサンドバッグの生産だけでは、とても追いつかない。


「お買い物はこれぐらいでいいかな」

「買い物は、ってことは他に用件があるのか?」

「まあね。魔道具販売店の先輩として、いくつか進言をさせておくれ」

「……魔法使いにも聞かせたほうがいいな。おい、魔法使い。オレと交代だ」

「らじゃー」


 ところで、魔術師というジョブは決して運動が得意なジョブではない。

 特にこの魔法使いという女性は、生来の運動能力も相まって、すこぶるどんくさい。

 今日もそうだった。


 カウンター席を立ち、斧戦士のほうへ向かっていく魔法使い。

 その途中でテーブルに足を引っかける。

 カウンター席は昨日取り付けた、特設のものだ。

 あまり強くは固定していない。

 長机は大きく揺れ、上に乗っていた商品が床に落ちていく。


「フリーズ!」


 斧戦士が、時止めロマン魔法を放つ。

 空中に飛び出した魔法具を拾って、水平に戻した机の上に並べる。

 それから焦った顔をしたまま停止している魔法使いをひっつかみ。

 サラのテーブル近くまで移動させた。


「あぶなかったね」

「斧戦士さんが助けてくれたの? ありがと」


 原理の分からないサラだけが、目を白黒させていた。


「あ、あれ? いつの間にチェリルさんはここに???」






魔「いやー焦った、焦った」

舟「次から商品はかごに入れるか」

剣「滑り止めも付けなきゃな」

ア「いっそ増築したら? 魔導研究所用に」

斧「ナイスアイディア! さっそく取り掛かろう」

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