D-13 スペルメイカー3
スペルメイカー3
創術師
「なるほど、チェリルさんの作る魔法具は、冒険者よりと」
「自分たちが冒険者だからな。足りないものから作ってるからそうなるんじゃね?」
「身近な不足を解決する……ふむ、本質だね」
魔法使いは、ちびちびオレンジジュースを飲んでいる。
「では、そろそろ本題に移ろうか」
「魔法使い、出番だぞ」
「も」
「それで返事するな」
協議会幹部ナオミが、水晶玉を取り出した。
何らかの魔法が注入された魔法具だろう。
ナオミが水晶玉に向かって手をかざすと、ディスプレイが浮かび上がった。
「これからこの水晶玉に、チェリルさんの情報を書き込んでいく。無事終了すれば、チェリルさんは晴れて魔法具を売ることができるようになる」
「あの、わたしは何をすれば?」
「こちらの質問に答えてくれればいい。できるだけ素直に」
「分かりました」
素直に頷く魔法使い。
ナオミの質問タイムが始まった。
「あなたの名前は?」
「チェリル・グラスアロー」
「性別は?」
「女性」
「出身は?」
「フロカの村」
フロカの村は、舟長たち三人の出身地ブツニの村の近くにある。
斧戦士も、フロカの村出身だ。
「仕事は?」
「冒険者」
「現在の所属は?」
「スカイアドベンチャー」
「現在のジョブは?」
「魔術師」
普通の冒険者は、ほぼフリーで活動している。
そのため、今組んでいるパーティーとの関係が永続的に続くわけではない。
事情によって、いろいろなパーティーに所属するのが、冒険者らしい姿だ。
スカイアドベンチャーのように、仲間うちだけで組まれたパーティーは珍しい。
「魔道具販売拠点の名前は?」
「魔導研究所」
「では、魔導研究所の構成員は?」
「わたしを含めて五人」
「最後の質問だ。君がスペルメイカーになった理由は?」
「……なんだっけ?」
魔法使いが振り返って、四人を見るが誰も答えられない。
当然だ、本人が話していないようなことを答えられる人間がいるだろうか?
いや、いた。斧戦士だ。
斧戦士が、日記を取り出した。
365日書き続けた日記帳の名前は、『魔導研究所』。
これが生まれた理由は、至極単純なものだった。
「わたしの大好きなゲームの魔法を作りたかったの」
魔法のネタにしてまで、そのゲームを知って欲しかった。
娯楽的な理由に、ナオミは驚いている。
「再現度には期待するなよ」
「舟長、うるさい」
「事実じゃねーか」
だんだんいつもの調子を取り戻してきた魔法使い。
杖でぽかぽかと舟長をたたく。
腕力が低すぎて、ダメージが入らない。
それでもぽかぽか殴る。
「ふふ。あなたはおもしろい人だ」
「え?」
「チェリルさん、これが許可証だ。これで名実ともに、我々の仲間だな」
これからもよろしく頼むよ。
ナオミと魔法使いは握手を交わす。
魔法使いはこの日、自称スペルメイカーから、公式創術師になった。
魔法使いの功績が、スペルメイカー協議会に認められたのだ。
魔「創術師だって。カッコいい!」
舟「時々思うが、おまえのセンスって変だよな」
ア「自分もそんなセンス良くないのに、よく言うね」
剣「容赦ねーな」
斧「さて、何を売りたい? 魔法使いさん」




