D-12 スペルメイカー2
スペルメイカー2
お偉いさん、来る!
「うーん、緊張するよう」
頭を抱え、うんうんと唸る魔法使い。
今日は、スペルメイカー協議会から人がやってくる日。
人見知りの魔法使いは、知らない人が怖い。
刻一刻と、その時間が近づくにつれ、魔法使いの震えは大きくなる。
緊張しているのだ。
「まだ、あと1時間もあるじゃない。ゆっくりしてていいんだよ」
「いやだー! もうやだ、寝る!」
「寝るな! まったく、おまえというやつは……」
机に突っ伏して動かなくなった魔法使い。
舟長とアサシンは互いに顔を見合わせて、ため息を吐く。
本当に寝てしまった訳ではないようだが。
せっかくセットした長い髪が、机上に漂っている。
「ん? 誰か来たぞ」
「確かに、外に複数の気配を感じる。はて、約束の時間よりずいぶん早いな?」
「せっかちなやつらだな」
剣士がそう言って、魔法使いのほうにやってきた。
机に張りつこうとする魔法使いを引き剥がして、髪を整える。
アサシンが三角帽子をかぶせてやれば、そこにいるのは努力系魔術師。
グラスアローの魔法使いだ。
……ちょっと不安そうな顔をしているが。
「すまない。魔導研究所のリーダーは誰かな」
「そちらの名前と、用件を先に話してくれ」
「失礼した。スペルメイカー協議会幹部、ナオミ・リュガーだ」
「すると、魔法具の販売に関する視察の方か」
「その通り。あなたは?」
「魔導研究所一構成員、トキワ・リックだ。どうぞ、お入りください」
玄関での話し合いが終わり、斧戦士が女性を連れてくる。
協議会の幹部だと名乗ったその人は、女性にしては背が高かった。
高位を示す、紫色のローブが美しい。
「魔導研究所リーダー、チェリル・グラスアロー氏はどなたかな」
「……わたしが、チェリル・グラスアローです」
「私はナオミ・リュガー。今日はあなたとお話に来たのだ」
「ど、どうぞよろしくお願いします」
「ナオミさん、立ち話も何ですからこちらの席へ……」
剣士がナオミを誘導し、リビングの適当な席に座らせる。
緊張でかちんこちんな魔法使いも、アサシンの指示に従って反対側の椅子に座る。
そんな魔法使いを囲むように、四人は左右に分かれた。
1対5の即席面接会場だ。
「さて、何から話そうかな」
ア「とりあえず、悪そうな人じゃなくて良かったね」
剣「幹部が悪人とか、組織として終わってるぞ」
斧「そうか? 上の奴ほど性根は腐ってる気がするが」
魔「ももも」
舟「魔法使いが緊張のあまりおかしくなってる!」




